牡丹の花が咲いた

父の葬式後、父が野菜作りをしていた畑を何となくのぞきに行った。
壊れかけたじょうろ二つ、父が地面に打ち込んだと思われるさびたパイプ
それらを見たとたん何かが私の中にこみ上げてきた。
そしてもっと私の目をくぎ付けにしたものがあった。
ピンクと白の牡丹の花が殺風景な畑の中でひときわ鮮やかに咲いていた。
その美しさに思わず目を見張った。
確かに父が植えたのだ。
大嫌いな父が死後、こんなにきれいな牡丹の花を私に見せたのだ。
何とも言えない気持ちになった。
母に怒り続け、最後の最後まで自分のことしか考えなかった。
また私のことなど思いやることもなく自分に向かい合う事もなく逃げ続けた父だった。
それがあんなにきれいな花を私に見せたのだ。
当分私は気持ちの整理がつきそうにない。