ゆいもあ亭【非】日常

映画や小説などのフィクション(非・日常)に関するブログ

美術的(アーティスティック)諧謔(SM)趣味的(マニアック)恐怖映画(ホラー)

2007-04-14 | 映画
インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~


岩井志麻子原作の「ぼっけえ、きょうてえ」。それが、間違いなく日本の遊郭を舞台にしながらも、全編が英語セリフの映画として出来あがっている。それなのに、見始めてすぐに違和感を感じなくなったから凄いと思う。

赤を基調に、日本趣味・東洋趣味を剥き出しにしながらも不思議な色合いを描き出すことに成功している。美術の美しさはマスターズ・オブ・ホラーの中でも出色の出来ではないか。

ストーリーは原作短編集から表題作「ぼっけえ、きょうてえ」を中心にしつつ、舞台背景を共通に持つ「依って件の如し」をなんとなくブレンドして、更には「あまぞわい」の不気味さ、「密告函」の、なんというか、不潔さをも盛り込んでいると、そんな風に感じた。

これは、うっかりするとネタバレになるだろうが、ラスト・シーンは印象深い。オリジナル・キャラクターである放浪のアメリカ人記者クリストファー(ビリー・ドラゴ)の、遊女小桃(美知枝)に執着するその理由については、「妹に似ている」というセリフによって途中で確かに示していたのだが、映画の進行に従って顔の歪んだ女郎(工藤夕貴)の告白が進み、遂にその出自と罪が明らかになって、クリストファーによる夢現(ゆめうつつ)の女郎殺しか小桃殺し描かれて、彼の、妹への懸想が尋常な域になかったのだろうということが想像されるにまでなったところで、示されたあの結末に至って、なるほどと了解したのだが……この見方は穿ちすぎだろうか? すなわちクリストファーは妹と近親相姦のうえ、妹は妊娠して死に到った、その思いを消せないまま、妹の面影を遊女小桃に見出し懸想した。その彼は「ぼっけえ(プリティ)、きょうてえ(スケアーリー)」な因果の地獄へ堕ちるよりないのである。

無垢なるものは女郎の言うとおり、非業の死を以って極楽往生するかも知れない。罪深い者の手を以っては、呪われた存在は解放されないのかも知れない。

だから、女郎は、彼には殺されない……ということなのかもしれない。

三池崇史監督。この「恐怖演出の巨匠(マスターズ・オブ・ホラー)」の競争(コンペティション)に選出されたのは「オーディション」という作品が海外でつとに評判がいいためであるからのようだが、うん、女どもが布団部屋で小桃を苛むシーンは、それはそれは痛そうだった。誰も信じてくれそうにないが、痛そうなのやグロテスクなのは、わたし、実は見ていて気分悪いと感じる方なんだ。でも、この作品ではSM調の絵画みたいで怪しい美しさだと感じたんだから、そこはさすがなんだろうな。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは! (猫姫少佐現品限り)
2007-04-15 00:40:34
TB&コメ、ありがとうございました!
ですよね、きれいでした。
きれいさにかけては、「さくらん」を凌ぐかも??
う~ん、、、深読みしないといけない作品ですね。
猫姫さま (yuimor)
2007-04-15 12:42:01
そうか。遊郭絢爛映画には、近作「さくらん」なんていうのがありますよね。

うん。バジェットは比べ物にならないだろうに、比肩する美しさかもしれませんね。

コメントを投稿