ブログ小説 過去の鳥

淡々と進む時間は、真っ青な心を飲み込む

アスパラガスは直立不動

2008-06-29 21:28:56 | 食物の咆哮 野菜編
 まっすぐに立つアスパラガス
 風に揺らぐことを拒否し
 毅然と天空に突き進もうとする強い意志

 それがアスパラガス
 明日の腹の瓦斯

 明日腹瓦斯

 さっと茹で
 マヨネーズをつけて食す
 あるいは軽く食塩をふりかけ
 食す

 根元から食べるか
 頭から食べるか
 意見の分かれるところ

 私は頭から
 必ず頭から
 ツクシにも似た頭
 なんという美味
 取れたてのアスパラ

 しかしスーパーの店頭には
 干からびたアスパラが
 悲しげな目で私を見る
 買って欲しいと懇願しながらも
 すねたように横たわり
 数本の仲間とゴム輪に縛られ囚われの身

 ああ
 アスパラは
 悲しげな目で客をまつ

 

後藤を待ちながら6  ホームレス襲撃事件

2008-06-29 09:18:49 | 戯曲
東京・府中のホームレス襲撃 20日未明にも別の被害者(朝日新聞) - goo ニュース

 尊敬し神と崇めるノーベル文学賞劇作家サミュエル・ベケット大先生の名作「ゴドーを待ちながら」を下敷きとした第5弾。
 「ホームレス襲撃事件」編。

 長いベンチがあり、その背後に4個の風船が浮かんでいる。
 赤、青、黄、白色の風船。
 それに枯れ木が1本。
 
 ホームレスの浦路と絵栖の二人は、ベンチの両端に腰を下ろしている。
 浦路は先日同様に新聞を読んでいる。

絵栖「今日の新聞には、よい話は載っているのか?」
浦路「載ってない。悪い話ばかりだ」
「ならいい」
「何がいいのだ?」
「聞きたくないってことだ」
「しかし、こんな話もあるぜ」
「そんな話、聞きたくもない」
「まだ言ってないぜ」
「聞かなくともわかるさ。悪い話だろう」
「ああ、悪い話さ」
「だったらいい」
「でも、俺たちの命に関わるんだぜ」
「それがどうしたってんだ。年金問題だって、物価の上昇だって、俺たちの暮らしにはピクリとも響かない。そういうつまらない問題は、関係ないさ」
「そうじゃない、ホームレス襲撃事件が続いていて、殺された男もいるってニュースが載っているんだ」
「ホームレスが襲われた? おれたち、金も何も持ってないぜ」
「ああ、でも命を持っている」
「命? それが目的なのか」
「きっとそうだ。俺たちの命がほしいのだ」
「犯人は、命がほしいのか。じゃあ、その犯人、自分の命は持っていないのか?」
「いや、命がなきゃ、命を奪えない」
「自分の命の上に、他人の命まで奪ってどうするんだ。欲張りなやつだ」
「そんなやつがいるから、気をつけなきゃいけない」
「気をつけるって?」
「俺たちも襲われないようにするってこと」
「はっはっ、なんだお前、命を奪われたくないのか?」
「嫌だよ。お前は平気なのか?」
「俺たちの命なんて、二束三文だぜ。虫けらのようなものさ。ほしいといってくれるやつがいれば、分けてやってもいいさ」
「死んでもいいのか?」
「じゃあ、お前は生きていたいのか?」
「まあ、生きていたい」
「まあ、ていどだろう。どうしても生きていたい、なんて思わないだろう」
「まあ、そうだ」
「そうさ。生きていてもろくなことがない。家もないし、金もない。社会は俺の存在すら忘れている。生きている意味なんてないだろう」
「そう言われると」
「ひとおもいに殺されたいくらいだ」
「しかし、生きていてもいいことはあるぜ」
「どんなこと」
「どんなことといわれても」
「すぐに思いつかないだろう」
「そりゃ、すぐには。でも、きっとあるんだ。だから生きている」
「でも、みんな死ぬさ。死ぬまで生きているにすぎない」
「死なないから生きているのか?」
「ああ、多分そうだ。生きている限りはね」

   間

「で、どうする?」
「何を?」
「襲われたら」
「そのときはそのときさ」
「そうだな。殺されたらしかたない」

   間

「アジサイの葉っぱを食べると、食中毒を起こすらしい」
「でも、死なないのだろう?」
「残念ながら死なない」
「雨は嫌だなあ」
「梅雨は雨がふるものさ」
「だから、梅雨はいやなのさ」

   暗転

立松和平の哀しみ

2008-06-28 14:06:37 | 似非エッセー
立松さんの小説「二荒」を絶版 新潮社、類似の指摘受け(共同通信) - goo ニュース

 小説を書く行為は、創造的なもの。
 小生のような似非作家でさえ、他人の文を写したりしない。
 フィクションの世界を構築して書く。
 仮にまねることがあっても、「後藤を待ちながら」のように、パロディーとして断わって書いている。

 で、立松和平氏。以前も連合赤軍の戦士の文を無断引用し、今回も地方の作家の文を書き写している。作家として、もっとも恥ずべき行為を二度まで犯してしまうとは。明らかに作家として資質に問題があると思う。
 私は、こういう作家は大嫌いだ。作家として最低である。

 立松氏の作品は、小生は多少は読んだが、はっきり言って面白くない。評価されている遠雷にしても、私にとっては、何かあざとさを感じる小説。本当に心からほとばしるものを感じられない。他の文学をまねた小説。そんな感じがしていたのだ。
 かといって、何を真似て書いたのかわからないが。おそらく心ある評論家や読者は、立松氏の文学の薄っぺらさを感じ取っていたのでは。
 で、やはり当たっていた。能力のない作家の哀しみ。
 立松氏は、もう筆を折ったほうがよいのではないか。せいぜい紀行文程度を書いておればよい作家である。旅番組のレポーターを、とつとつとした喋りでこなすのもよい。が、小説はやめるべき。
 
 それにしても、小説は、ビジネスとなったことで退廃していったのか。
 私も決して他人に誇れるような小説を書いているわけではないが、まあ、原稿料はいただいていないもので。

落書きも文化遺産

2008-06-25 07:00:42 | 似非エッセー
世界遺産聖堂の壁に落書き 岐阜短大生、学校名で発覚(共同通信) - goo ニュース

 この落書きに非難が集まっている。
 岐阜短大では大聖堂に謝罪し、修復費用ももつとのこと。
 が、大聖堂側では拒否、というより辞退したようだ。
 イタリア人にとって、たいしたことではないのでは。というより、落書きにある程度の文化的価値を感じているのではないか。

 ある意味、落書きは貴重な文化遺産である。
 東洋の島国から来た小娘が、日本の文字を書き記していく。その背景には旅の恥はかき捨ての東洋人の文化、というかサガのようなものがある。
 そうした精神風土を示す意味でも、貴重な資料である。

 で、ブログなどでは女子短大生に非難ごうごう。
 これも面白い現象。世界遺産は、世界遺産にならなければ変化して当然な存在。あるものは変化する。それが当然なこと。それに抗った世界遺産に対しての落書き。これは面白いのだが。

 油性ペイントがどこまで残るかわからないが、100年後に残っていれば、これは明らかに貴重な歴史資料になる。
 まあ、いずれにせよ、大聖堂では修復など姑息なことはせず、これからも落書きをさらし続けるであろう。それによって、日本のマスコミが詰め掛けて紹介し、日本人への宣伝を行い、観光収入もふえていく。
 落書きをしてくれた女子短大生への感謝の気持ちも、わいてくるのでは。

 なんてことはないか。

救急車狂の時代

2008-06-23 10:01:42 | 小説
足代わり119番、救急車「予約」…非常識な要請広がる(読売新聞) - goo ニュース

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?b=20080622-00000027-yom-soci


 以前このブログでごらんいただいた短編を、このニュースを機に再アップ。
 まあ、暇な方はお読み下さい。


  救急車狂

 二十一時十四分。
二階の休憩室のテレビで巨人対阪神戦を見ていたときだった。九回裏、二対二の同点、一死満塁でバッター高橋。まさに打席に入ろうとしたとき、救急指令のチャイムが鳴った。
「なんや、なんや」
「またかいな。ええとこやのに」
 俺たち三人の隊員は腰を上げた。
 通信指令室担当官の声が、スピーカーから流れる。
「救急指令、救急指令、横田町三丁目、怪我人発生。右手指切断とのこと。北町救急隊は、ただちに現場へ急行せよ」
「行きまんがな、行ったらええんやろ。ほんま、しょうがないなあ」
 隊長は、大きな声で愚痴を漏らす。
「ついてないですね。この分やと、巨人は負けますね」
 大阪人のくせに熱狂的な巨人ファンの隊長の横で、阪神ファンの俺は駆けながら、皮肉っぽく言ってやった。
「いや、ヨシノブは打つ。目えが、光っとった。サヨナラホームランとはいかへんでも、センター前の痛烈なヒットぐらい打ちよる」
 螺旋階段を一気に駆け降り、救急車に乗り込む。出動指令では手指切断の重傷とのことだ。たとえ完全に切断していても、病院へ大至急に搬送して縫合手術を行えば、元通りに癒着することもありうる。隊員の意気がもっとも高揚する局面だ。
 運転担当の俺は、エンジンを始動し、サイレンのスイッチをオンにした。
「右よし、左よし、後ろよし、発進」
 サイドブレーキを外し、アクセルを踏み込んだ。
 助手席の隊長は、無線マイクを手にした。
「こちら北町消防署救急隊。ただいま横田町三丁目に向けて発進しました。司令室、どうぞ」
「発進、了解しました。で、ですね、出動要請の通報者は、たいへん言いにくいんやけど、横田団地六号棟の秋野春子です。まあ、トラブル起こさんように、よろしくお願いします」
「えーっ、なんやねん、またですか。子供が指を切断したなんて、シャレにもならんこと言うてんのでしょう」
「まあ、そんなとこや。すっぱり切れて血が止まらへん、と、半狂乱なんやけど……」
 「了解しましたよ。いちおう行って見ますけど、どうせ、引っかき傷程度とちゃいまっか?」

 俺は、秋野春子と聞いただけで、ハンドルを握る腕の力が抜けていた。
 彼女は、消防本部のブラックリストのトップにランクされている最悪の常習者だ。子供が生まれた二年前からの出動要請は、すでに五十回に及ぶ。俺が消防から救急に転属したのは三か月前だが、彼女への出動はもう五回目だ。
 通報するのは、たいがい夫が不在のとき。子供が夜泣きや微熱などで様子が少しでもおかしいとパニックに陥って、一一九番に電話をしてしまうのだ。
 近頃は、秋野春子のように、ろくに子育てのできない親が増えている。その典型は、子供への虐待だ。ひと月ほど前には、父親から殴る蹴るの虐待を受け、チアノーゼになった全身痣だらけの幼児を搬送したことがあった。あと三十分搬送が遅れていれば、確実に命を落としていたところだったと、医師は言っていた。それに比べればまだましではあるが、親としての資質の欠如は明らかだ。
 もちろん、消防本部としても常習者対策を大きな問題と捉えていた。係官を秋野春子の自宅に派遣して、無駄な出動要請をしないように何度も指導を繰り返していた。しかし、結果は推して知るべしだ。
 そもそも、救急制度にも問題があった。たとえ常習者からの要請であっても、イソップの『嘘つき羊飼い』の寓話のように、本当に狼が現れる事態は十分起こり得る、という問題だ。その万一のケースを見逃すことを、消防署としては恐れていた。恐れるあまり、常習者からの通報であっても無視することができなかったのだ。
 現場に出動して軽傷と分かっても、相手が搬送を要求している限り、我々は拒否できなかった。傷病の軽重の診断は、医師以外に下せないからだ。消防法などでは、虚偽の通報防止のために罰則をもうけている。しかし、傷病の場合、診察では軽くみえても、心因性や原因不明の痛みなどが現実にある限り虚偽と断言できない。したがって、処罰の対象となりにくかった。
 俺たちが無駄足を踏んだというだけなら諦めもつく。問題は、常習者への出動の際に急患が発生し、他の消防署から応援を頼まざるを得ない時だ。距離の離れているぶん搬送が遅れ、それが文字通り命取りになる、という事態も、表沙汰にはなっていないが現実に起きていた。


「あんなやつ、絶対に断るべきですよ」
 俺は、強く隊長に言った。
「そうしたいとこやけど、わしらは医者やないさかいなあ」
「救急隊員は、消防とちごておとなしすぎるさかい、やつらはつけあがるんですよ。どうせ大した知恵のある連中やない。ガツンと一発かましてやったらええんや、ガツンと」
「まあ、そうは言うても……」
「本人が、要請を取り下げざるを得んように持って行ったらええんです。ぼくがやってみます。隊長より、口は達者でっさかい」
「そやなあ、いつかは断ち切ろなあかん問題やし、ダメモトでいっちょうやってみるか」
 隊長は、あまり気乗りはしないようだが、俺の激しい口調に押されて頷いた。

 何度も足を運び、勝手を知った団地だ。大通りから左折して、六号棟の方向へ車を進めた。いつものように、駐車場脇の街灯の下に、子供を抱きかかえた秋野春子の姿があった。
「遅かったやないか。はよ病院で手当てせんと、この子死んでしまうやないか」
 救急車を近づけると、秋野春子は金切り声をあげて駆け寄り、俺たちにいいつのる。
「子供が、指切ったなんて、ほんまかいな」
 俺は、わざと相手をじらすようなのんびりした口調で言った。
 秋野春子は、泣きじゃくる子供を胸に抱きしめたまま、その手を掴んで俺たちに示した。指には大げさなガーゼが巻かれていた。
「ほれ、ここや、ここ、血イ出たんや、いっぱい」
 隊長はガーゼを取って、マグライトでその指を照らした。傷らしいものは見当たらない。
「怪我なんかしてへんやないか」
 俺は、厳しく決めつけて言った。
「何ゆうてんの、ここや、ここ、ぐっさり切断しとるやろ」
 目を皿のようにして見ると、たしかに長さ一センチほどの引っ掻き傷がある。おもちゃの端で引っかくかどうかしたのだろう。むろん、とっくに血は止まっていた。
「なんや、こんなもん、バンドエイドもいらんぐらいや」
「嘘や、これ、よう見てえな、血イついとるやろ。だらだら出たんやでえ」
 目を皿のようにして見ると、確かにガーゼに二、三滴の小さな赤い斑点があった。
「アホ臭いこと言わんとき。こんなんで病院へ行ったら、医者に笑われるでえ」
「バイ菌が入って、破傷風になるかもしれへんやないか」
「ならへん、ならへん」
「なんで、あんたらに分かるんや。医者やないくせに……」
「医者とちごてもよう分かる。こんなしょうもない怪我で、よう救急車を呼ぶなあ」
「しょうもないとはなんや、しょうもないとは。うちの子の命がかかっとるんやで。もし死んだら、どないしてくれるんや」
「絶対に死なへん」
「あんたの保証なんかいらん。医者に診て欲しいんや」
「それやったら、救急車なんか呼ばんと、歩いて行ったらええやろ。救急車は、一刻を争う病人やら怪我人のためのもんや」
「こんな夜中に、どこの医者が診てくれるゆうねん。救急車が頼りなんや。救急車で行くさかい、診てくれるんやないか」
「あかんちゅうもんは、あかん。それになあ、こんなことで救急車を何度も呼んどったら、そのうち処罰されるで。嘘の通報をしたもんは、逮捕されるんや。留置所に入れられたら困るやろ。もう諦めて、家に帰っとき。どうしても心配やったら、明日の朝になって医者へ行って十分やさかい」
「ああ、そうでっか。あんたら、市民の命がどうなってもええんやな。市長に言いつけたる。情けもなんもない、殺人鬼のような救急隊員やゆうて……」
 秋野春子は、急に開き直った。


 その目は完全に座っていた。危ない表情だ。だが、ここでひるんでは、彼女の思うつぼだ。俺たちはお灸をすえる意味でも拒否した。
「市長は相手にせえへん。それより、子供のためにも家に早よう帰りなさい」
「鬼……。あんたら鬼や。人殺しや。殺人鬼や。ああ、ええわ、もう頼まへん。なんやねん、偉そうに、うちらの税金で養のうてもろとるくせに……」
「鬼で結構や。署への報告は、たいした怪我やなかったから収容を中止したことにしといたげる。念押しとくけど、嘘の通報やったら、逮捕されることになるんやで。また一一九番に電話しても、もう来やへんさかいな」
 常習者は、一種の依存症である。アルコールやギャンブルの依存症と同じで、甘やかしてはいけない。荒療治が必要だ。いつかは断ち切る必要がある。
「もっと大きな怪我やないと、病院へ運ばへんゆうんやな」
「まあ、そう言うこっちゃ、救急車は」
「わかった、もうええ。目障りや、帰れ」
「ほんまに、わかったんやな」
「ああ、ええ、早よ行ってしまえ……」
 泣き叫んで懇願してくるかと思ったが、意外に簡単に引き下がった。
 もういいと言う相手のそばに、いつまでもいることはない。俺たちは引き返すことにした。
 憎しみに満ちた視線を背に受けて、救急車に乗り込んだ。なんとなく危険な予感めいたものがあったが、俺たちとしてもあとへ引けない。俺はサイドブレーキを外した。
「変なこと考えんときや。もう、行くでえ」
 発進の時、隊長も声をかけた。
 俺は、アクセルを軽く踏み、団地の出口までゆっくりと救急車を走らせた。
 秋野春子は、子供を抱きしめたまま、車を追うようにつけてきた。バックミラーには、街灯に照らされ、異様に思い詰めた表情が映る。ちょっとお灸がきつかったかなと思ったが、彼女のためでもある。ここは非情になるべきだ。
 団地の入り口から大通りへ出るため、一時停止して左右を確認した。
 右手から、猛スピードでタクシーが走ってきた。やり過ごしてから、救急車を通りに出そうと思った。
 その時だ。
 秋野春子が、信じられない行動に出た。歩道の端まで駆けて行き、子供を走ってくるタクシーに向かって放り投げたのだ。
 急ブレーキの音と鈍い衝突音が同時に暗闇を引き裂いた。
 人形のような小さな身体が、大きく宙を舞い、団地の植え込みに落下した。
 俺は全身が凍りついてしまった。
 歩道の端には、こちらを睨みつけて立ち尽くす秋野春子の姿があった。
 彼女は、俺と視線が会うと、般若のような目をじっと見開いたままひたひたと近づいてきた。そして、喉の奥から声を絞り出した。
「どうや、これやったら、うちの子、病院へ運ぶのに、文句ないやろ、文句ないやろ、文句ないやろ、はよ運んでええな……」

       おわりだ、この野郎め!
                                 


絶望犯の哀しみ

2008-06-19 15:54:00 | 爆裂詩
 秋葉原で7人の命を奪った殺人犯
 その壮絶な犯罪に
 共感の書き込みが見られるネット世界

 殺人という最も忌むべき行為に
 一縷の生きる証を見る絶望
 将来を奪われた人生

 むろん起死回生のチャンスは
 この若者にもあった
 が、ジョーカーは待つだけでは回ってこない
 勤勉で実直なだけの多くの人生は
 愚かしい負け組みとして
 ただ落ちていく現実

 生き馬の目を抜き取るしたたかさのないものは
 時の経過にいつか唖然とし
 何も残しえなかった足跡の虚しさに心をふさぐ

 毎年3万人を超える命が自ら絶たれ
 それが当たり前のこととしてまかりとおり
 絶望の若者は最後の殺人に
 アイデンティティを叫ぶ
 そして今
 犯人は人生を捨て去ったことに安堵の気持ちで
 とらわれの身をすごす

 殺人という行為の虚しさと哀しさ
 それを知りながらも
 死刑執行が粛々と行われ
 死を求めた期待にそう矛盾

 秋葉原に鎮魂の百合が匂う

 

民営化の進め

2008-06-09 06:56:20 | 似非エッセー
行革相、キッザニア東京視察=「しごと館」廃止をアピール(時事通信) - goo ニュース

 民営化はすばらしいことだ。こんなお荷物、役所が持っている必要はない。
 民営化すれば、バラ色の未来が見えてくる。
 郵政も民営化、次は、省庁の民営化も必要なのでは。
 財務省のタクシー接待だってなくなるだろうし、防衛省の汚職だって。
 さらに、国家も民営化すればどうだろう。
 トヨタ、ソニー、キャノンなど、世界的な企業がJVで国家を作り、
 もっと利潤を追求していく国家にしてしまうのだ。
 年寄りは不要であり、姥捨て山に廃棄。
 儲からないセクションはずたずたそぎ落とし、
 福祉などという儲からない部分は目もくれない。
 トヨタやキャノンが得意な期間労働者や派遣で人件費を圧縮し、
 奴隷である国民からは生き血を絞っていく。
 
 ああ、すばらしい社会が生まれるのでは。
 今も、似たようなものであるが。
 

夏なのにスズガモが見られる三番瀬

2008-06-08 06:07:31 | 野鳥評論
 昨日、千葉県の三番瀬に行く。
 で、スズガモを見てびっくり。
 スズガモは、無論冬鳥。北から渡ってきて、冬の間東京湾の海上で大きな群れで過ごす。
 それが、6月だのに、7羽もいて、餌アサリ。
 多分、アサリを漁っているのでは、なんて駄洒落。
 で、もっとも驚いたのは、人をおびえないこと。冬のスズガモは警戒心が強く、近距離で見ることはできない。ところが、昨日見たスズガモは、潮干狩りをしている人たちのすぐそばで、餌を漁り、まったく気にしていないのだ。
 これはいったいどうしたことか。
 これらの個体は、繁殖をしないのか。
 ウミネコなどは、若い時期は渡らず、この近海で過ごしたりするが、スズガモは理解に苦しむ。もしかしたら、進化のひとつなのか。ハクセキレイなんかが、分布を南に広げてきたように、もしスズガモの繁殖が東京湾近辺で見られたら、スズガモのカルガモ化が進んでいるのかも知れない、なんてことはないか。
 カルガモも変な野鳥だ。
 毎年、都心部でも繁殖し、丸の内のようなど真ん中でも。で、人の濃い場所で繁殖するメリットが、彼らにはあるのだろう。カラスなどの天敵からの身を守るすべ。
 スズガモはどうか。
 東京湾でも、ワシタカの仲間が時おり見かけられる。そんな連中から身を守るために、人の近くで餌を漁っているのか。それとも飛ぶのが面倒なためか。

 ともかく野鳥の気持ちはわからない。
 日本野鳥の会にでも、聞いてみよう。

タバコの価格に関して

2008-06-06 08:12:41 | 掌編
合言葉は「たばこ1箱1000円」…超党派で議連発足(読売新聞) - goo ニュース

 タバコの価格はいくらが適切か?
 タバコを吸わないぼくには関係ないが、愛煙家の川村さんには、値上げが堪えるようだ。
「たばこ1箱1000円? 冗談じゃないよ。貧乏人にクビを吊れっていうのか」
 そんなことをぼくに言われても困る。
「タバコをやめればいいじゃないですか?」
「タバコをやめる? 冗談じゃない。タバコをやめるってことは、俺にとって、首を吊るようなもんだぜ」
「首を吊るのが好きなんですか?」
「好きなもんか。どこの世界に、首吊りを好きなやつが」
「でも、自殺ははやっていますからね。年間3万人以上。世界でも有数の自殺大国ですからね」
「俺に自殺をさせたいのか?」
「いや、自殺はよろしくない、と思いますよ。でも、自分の命は自分で何とかするのは、まあ、権利のようなもので」
「タバコのことで自殺なんて」
「タバコ代の値上がりで、首を吊るというから」
「首なんて吊らん」
「じゃあ、なぜ首を吊るなんて」
「言葉のあやだよ」
「言葉のあや? あやで命をもてあそぶのですか」
「もてあそんでなんかいない」
「いや、もてあそんでいます。命というのは崇高というか荘厳というか、神聖なものなんですよ」
「シンセイなんてタバコは吸わない。マイルドセブンだよ。俺が吸うのは」
「マイルドセブンかウルトラセブンか知らないけど、タバコは近所迷惑です」
「うちの金魚は迷惑していない」
「金魚の話ではなく、近所の話」
「近所に金魚がいちゃまずいのか」
「金魚なんてまずいですよ」
「金魚なんか食わない。金魚をどうやって食うのだ。刺身か? 天麩羅か?」
「刺身で金魚なんか食いません。刺身はマグロとかハマチとか」
「マグロは値崩れしてるんだぜ。漁師はもう原油高で、音をあげている」
「値上げで音を上げるなんて」
「ともかく金魚はマグロではない」
「マグロも金魚ではない」
「金魚は金魚のアイデンティティがある」
「だから、ぼくはマグロの照り焼きで」
「照り焼きは、ブリだって言うの」
「ブリだなんて、このぶりっ子が」

 ぼくの脳みそは、また溶解しかかっている。

ワタミ社長がんばれ

2008-06-03 05:59:09 | 似非エッセー
内部告発した報復で解雇と提訴 居酒屋和民の元店員(共同通信) - goo ニュース

 ワタミ社長の渡辺君は、人格高潔、立派な人間であります。
 日本の教育を考え、教育再生会議の委員として、国のために働き、横浜市の教育委員としても立派に実績を残しているのであります。
 そのワタミが、今、マスコミの連中に叩かれております。
 労働基準監督署にタレこんだ、恩知らずのパート従業員がいたからであります。
 そう、恩知らずなのであります。
 仕事を与えてやって、給料を払ってやって、それで告発なんて、恩知らずの恥知らずであります。従業員は、経営者の言いなりになっておればよいのであります。逆らったり歯向かったりするのは、日本人の品格を貶める行為であります。
 船場吉兆を見なさい。内部告発をしたばかりに、会社は廃業。従業員は職を失い、路頭に迷うのであります。
 内部告発は悪であります。
 もし、さらにワタミの内部告発が続き、食べ残しの使い回しやナンヤカンヤが表に出る事があれば、それは絶対に、天地神明に誓って、多分、ないと思うけど、仮にあったとしても、内部告発すれば、あんたらが仕事がなくなるんだよと、脅迫ではなく言い聞かせ、戦々恐々なのであります。
 ワタミ社長は立派です。おっしゃることは立派です。口先も、著作も立派です。
 金儲けも上手です。
 その点、コムスン折口先生にも似ておるのであります。
 グッドウイル折口先生は、バッドウイル折口など陰口されていますが、ワタミ社長同様立派な野心に駆られたおかたなのであります。
 そうです。福祉産業で、従業員を徹底的に搾取して上前をはねるさまなど、そっくりであります。
 このような会社が、内部告発さえなければ生き残れるのです。
 残されたパセリは、つぎつぎと客の皿の上をさまようのであります。
 がんばれ、ワタミ社長。
 日本の飲食産業の希望の星、介護、教育産業の明るい未来を切り開くため、がんばれ。内部告発にも乗り越え、従業員の不平不満など蹴散らして、がんばれ。
 
 あああ、ため息が出てくるなあ。