顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

1枚の写真

2018年01月22日 | 日記
1枚の写真があります。先日、各新聞誌上にローマ法王フランシスコがこの写真を印刷したカードを教会関係者に配布するように指示したニュースが載りました。カードの裏面に「これが戦争の結果だ」という言葉を沿えて。

この写真「焼き場で順番を待つ少年」は、長崎の原爆資料館に展示されたこともある知る人ぞ知る写真のようです。1845年に原爆投下後の長崎で、米海兵隊の従軍カメラマン、ジョー・オダネルさんにより撮影され、死亡した弟を背負いながら火葬場で順番を待つ1人の少年の姿が写っています。



少年は何の感情も見せず立ち尽くしており、火葬場にいた2人の男が弟を背中から外し、掘られた穴の火の中に置いても、彼は泣かずに立ち続け、噛み締めたその唇には血が滲んでいたとオダネル氏は回想しています。そして炎がおさまると何もいわず立ち去っていったと…。

直立不動の姿勢に感じる当時の軍国主義の教育、裸足に今の生活状態がうかがえ、多分両親もなくなって、近所の人がおんぶ紐で弟を背負わせたのでしょうか。
老躯の干乾びた涙腺を刺激した一枚の写真は、平和なくらしを甘受してそのありがたさを忘れかけている身には、改めて大きな衝撃を与えてくれました。挑発を繰り返し合う国や不戦憲法を弄ぶ国が、もし一歩踏み出した結末も、この写真であると言えるかもしれません。