後藤昭ほか編『実務体系 現代の刑事弁護2 刑事弁護の現代的課題』購入。とある個人的事情で刑弁関係の本ばかり買っているが・・・。
同所収の青木和子「被告人の着席位置、服装」について。このテーマで1章割くことはさすが同書。
同論文が指摘するとおり、裁判員裁判では、被告人を弁護人席に座らせる運用は一般化している。しかし、これも同論文指摘のとおりだが、非裁判員裁判ではそうなっていない。率直に言えば、弁護人サイドから「被告人を横に座らせたい」との要望が出されなかったのであろう。
先日、裁判所に「被告人を弁護人の横に座らせたい」と申し入れた。筆者の不勉強ゆえ、裁判員裁判のノリで当然に認められると思った。一応、事前に書記官に伝えておいたが、裁判長の答えは否(書記官を通じて事前の回答もあった)。
被告人を弁護人に座らせたい理由は2点。①裁判員から見て「お白州式」だと犯罪者扱いに感じるおそれ、②開廷中の弁護人との打ち合わせの必要。
他方、裁判所・拘置所サイドは、③戒護するのに適当な場所へ被告人を置きたい(逃亡のおそれ?)、と言うだろう。
結局、①②対③の衡量となろうが、少なくとも裁判員裁判では「①②が③を凌駕する」と考えられているようだ。
翻って通常裁判はどうか。当然、裁判員がいないのだから①は理由にならない。残った②対③となるが、この②こそ、「SitByMe」の核心である(①はオマケ。裁判員は弁護人が考える以上に賢明だと思う)。そうだとすると、通常裁判であっても、被告人を弁護人席に座らせるべきであるし、それができない理由は見当たらない(裁判員事件と比べて、逃亡のおそれが高まるとは思えない)。
筆者の事件に戻ると、裁判長が述べた理由は「書証の確認は公判前に済ませているべき」「もし打ち合わせが必要ならば手続を止めてくれればよい」だった。もちろん、書証の確認などとっくに済ませてあるし(そうじゃなかったら証拠意見が言えない)、敵性証人の反対尋問も打ち合わせてある。それでも、検察官の要旨の告知はいっしょに確認したいし、敵性証人の主尋問をいっしょに聞きたいことがある。裁判長は、このあたりの事情を無視している(あるいは、戒護の観点がこれを上回ると考えているのか)。
裁判長が述べるべくは、「被告人&弁護人間のコミュニケーションを害してもなお、被告人を弁護人の横に座らせられないことを正当化する理由の存在」だった。もちろん一番悪いのは、そこで日和った弁護人だけどね。
追記2014-10ー28;
東京高判平成19・5・21東京高裁判決時報刑事58-1~12-27は、次のように述べる。
・・・公判廷において被告人をどの位置に着席させるかは,裁判長(又は開廷した一人の裁判官)が,その訴訟指揮権(刑訴法294条)及び法廷警察権(288条2項)に基づき,公判手続を円滑に運営するとともに,訴訟関係人の安全確保,勾留中の被告人の逃走の防止等の法廷における秩序を維持するため,訴訟関係人に係る手続保障等の要請,法廷の構造,訴訟関係人の出廷・在席状況等の具体的状況をも考慮しつつ,その合理的裁量により決定する事項であると解される。一般的には,弁護人席の前に被告人を着席させているのが我が国の裁判所における長年の法廷慣行であるが,これは弁護人席と被告人席とが離れていたのでは相互の打合せに不便であるから,被告人席をなるべく弁護人席に接近させて設けるのが相当であるとの基本的な考え方に基づくものである・・・