冬桃ブログ

夜明けの寂寞

 考えても仕方がないこと、考えるしかないことが
頭に渦巻き、ブランデーも睡眠薬も効果のない夜がある。
 なんとか寝なければと必死になるのだが、ただの悪あがき。
 仕方がないので未明にベッドを出た。4時半をまわった頃。
 外は白いもやがかかっている。
 暖かいものを着て外に出た。田んぼや畑が連なる農道を
独りで歩く。もちろん誰の姿もない。
 靄の中から、少しかすんだ太陽が昇っていく。


 田んぼに水が入り始めた。
 もうすぐここに、オタマジャクシが湧く。
 あたりが明るくなるにつれ、畔に咲く花の
色が濃くなっていくような……。


 透き通った蜘蛛の巣が、翼を広げた妖精のよう。


 こんな風景を毎日見られるのは、私に与えられた最後の幸せ。
 でもそれを維持する力が、日々、衰えていくのを
意識しないわけにはいかない。
 人生の終盤だというのに、踏み迷ってばかり。
 
 こんなにも美しい自然の中で。

 S村の神秘な山中にある滝。

 
 
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