UN大浦のブログ

徒然なるままの手記。
大半が、山と猫様、そして妄想の徒然草。

愚かな敵意

2018-09-30 18:43:58 | 日記
先日の、取立山の山行途中、
ふと、進行前方に、黒い”影”が見えます。

人にしてはデカイ。少なくとも人ではない。
当山では、子熊に遭遇した経験もあるため、
護身用の火薬ピストルをポケットから取り出し、引き金に指をかけつつ、まずは対象が”何か”わかる距離まで近づきます。

気休めの音武器。
とはいえ、手にすると多少なりとも気分は紛れるものです。

対象との距離が近付くにつれ、影の正体が明らかに。

 

カモシカです。

白山ではよく彼らに遭遇しますが、取立山では初めて。
まずは、食べられる心配は無いと一安心。

しかし、もしカモシカが突進してきたら、ひとたまりもありません。

彼らの脚力の凄まじい事。
人の身では上がる(下る)ことが出来ない絶壁を難なく駆け上がる(下がる)様は、
人が持てる筋力との、確かな格差を感じます。
体当たりをされたら、肋骨は簡単に折れ、内臓破裂もありうるでしょう。

幸い、道幅は広く、隣を通る事は出来そうと判断。

不用意に音を立てて刺激させないよう、
草食動物特有の強い視線を浴びつつも、対動物モードの歩行姿勢を取り、距離を詰めます。

数メートル先まで来て、
お互いじっと見つめ合う時間があった後、カモシカは崖を降って行きました。

こちらは敵意を抑えきれず、いざとなったら戦う気満々でしたが、
彼(彼女?)にその気は全くなかった模様。

穏やかな動物の心のあり様に、
我が身が恥ずかしくなりました。

 人が他者を攻撃するのは、相手が何を考えているかわからないから。
 襲われる前に、その前に、自分からけしかけてしまう。
 そして、事が終わってから、気づく。相手には、そもそも敵意など何も無かったのだと。無知が他者を攻撃させる。

動物との出会いが、人の愚かな戦争の歴史を気づかせてくれました。