パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

07一般教書演説(の環境ネタ)

2007-01-23 23:58:41 | 環境ネタ
 今日の9:00PMから毎年恒例の大統領一般教書演説でした(ホワイトハウスHP President Bush Delivers State of the Union Address)。事前にいろんな観測が飛び交う(含む観測気球)ものですが、今回は温暖化政策で新政策を打ち出すとの見方が専らで、「政策転換」という期待も飛び出したぐらいでした。例えば~ロイター16日「米大統領、一般教書演説で新たな温暖化政策発表へ」、New York Times 18日 「Bills on Climate Move to Spotlight in New Congress 」、読売20日「温暖化対策強化へ、米政権が方針転換」。むしろ何が出てくるか話題だったのですが、焦点は議会でいくつかの法案が提出されて専ら議論になってる義務的キャップ&トレード型排出量取引(Mandatory Cap & Trade Program)を提案するかどうかってとこで、まぁその可能性は薄そう、むしろバイオ燃料や燃費基準じゃないか?みたいな雰囲気でした。

 んで蓋を開けたらまさしく予想通りでした ただ真剣に検討したのは間違いないだろうという政策提案で、Twenty in Ten Goalー今後10年間でガソリン使用を(注:対策のない状態(BAU)よりも)20%削減する目標を設定しています(Twenty In Ten: Strengthening America's Energy Security)。んで何をするかというと、

①再生可能燃料基準の拡大強化
 エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)でRenewable Fuel Standard(RFS,再生可能燃料基準)が設定されることになりました(PL 109-58 §1501(a), codified as 42 USC §7545(o) (Clean Air Act §211(o)))。2012年に再生可能燃料の使用量が75億ガロンにする目標が法定されていて、具体の規制対象・強度はEPAに委任されています。今見たらrulemaking processの途中のようで、精製者、輸入者、混合者に対して一定の再生可能燃料の使用を義務付け、かつ使用実績を取引可能(Credits and Trade)にするみたいです(EPA Proposes Regulations for a Renewable Fuel Standard (RFS) Program for 2007 and Beyond)。
 んで2013年以降の目標もEPAに委任されているのですが、この目標値を2017年で350億ガロン(ガソリン使用量の15%に相当)にしよう、ってことみたい。ちょうど今日バイオ燃料利用へ新法検討(日経)という報道がありましたが、この部分は実は日本が周回遅れになってますね。

②燃費基準の強化
 エネルギー政策法(EPCA)上の燃費基準(CAFE)の強化です。乗用車部分は数字まで法律に書き込んじゃってるので法改正が必要みたい。デトロイトを抱えるミシガン州のディンゲル議員(民)が下院エネルギー委員会の委員長で、CAFEをいじることに消極的でしたがどうなることやら。これで残りの5%らしいです。「An Inconvinient Truth(不都合な真実)」で各国比較されたり、裁判で最高裁が審理(Mass. v. EPA)したりでプレッシャーが高まってた分野ですね。

 もし目算どおりにいけばガソリン消費量は現状よりも幾許か減る計算になるそうで、他の排出ソースへの言及がない点はさておき、まぁコレはコレで悪くはないというところでしょうかねぇ。CNNが早速行った世論調査だと、エネルギー政策部分は24%が非常に効果的、50%がある程度効果的、と肯定的に評価しているよう。もっとも環境NGOは、Cap&Tradeのような包括的かつ具体的な行動を求めていたんだと早速舌鋒鋭く批判しています(シエラクラブWWF)。

 ただ、一つ確かなのはジワジワ(or加速度的に)変わりつつあるってこと。今日の演説で"(Technologies) will help us to confront the serious challenge of global climate change"と言及した時に"global climate change"の語に反応して民主党側も(民主党側から)立ち上がって拍手してましたが、もーーーゴア曰く"category 5 denial"の時代には戻らないんじゃないかなぁという気がしますね、期待交じりですが。環境に関心のある層や、(エネルギー)安全保障に関心のある層だけでなく、キリスト教右派の温暖化対策プッシュも激しくなってますし(Evangelists and Environmentalists Join Forces, NPR 21日)。ちょくちょく紹介してるミリバンド英環境大臣のブログのエントリ(New times in the USA、23日、一般教書演説前)の指摘に同感です。
 I don't know what is in the president's state of the union address, but I do believe it is a matter of when not if the us becomes part of a global carbon reductiond drive.
(大統領の一般教書演説の内容は知らないけど、米国が地球的な炭素排出削減の流れの一員になるのは、当否の問題ではなく、時間の問題だと強く信じるよ)


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2 コメント

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申し訳ありません (r_shi2006)
2007-01-25 01:38:24
トラックバックした後で記事の間違いに気づき、一旦削除してタイトルつけ直して再投稿したら、前の記事がそのまま残ってしまいました。

ちなみにCNN、イラク政策批評ばかり流してたような気がしたのですが、エネルギーの話題は何時ごろ出てきましたか?
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いえいえ (そらまめ)
2007-01-25 13:07:19
というわけで古いほうのTBは消しておきました。

CNNは、いや一時間後ぐらいにチャンネルを回したらちょうど「イラク政策部分の支持率がエネルギーなどよりも低い」と言っていたので、ネットで早速調査結果を拝見したという次第で。
ちなみにRFP→AFP(Alternative Fuel Program)に拡大すると言ってましたが、Clean Coalの勢いに任せて液化石炭になるどヤダみたいな反応が早速環境サイドから出てますね。
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