伝統的な茶屋街を保存整備している、ひがし茶屋街にも行ってきました。
ひがし茶屋街は江戸時代藩政期から栄えたお茶屋を集めて町割りした町並み。
木虫籠とよばれる木格子の意匠が特徴的です。
この格子のデザインは飛騨格子とは異なる意匠で、文化の違いを感じました。
京都とも印象が違いますね。
多くの建物は木の自然な色だったのですが、一番いい位置に建つ1つの建物だけは
全体がベンガラに塗られていました。なぜだろう?
妻壁の鎧張りの壁の押し縁間隔も飛騨とはちがう。
2階の縁側(回廊)のこのような造りは、
京都の東山界隈にもありますが、
雨戸兼用のようなガラス面の少ない意匠は、ここの特徴のようです。
しかも京都の場合は、後白河院のように庭園内に建つ楼閣ですが、
ここは、通りに面して同じ立面構成、同じスケールの建物が軒を連ねる。
通り全体として、優雅な感じがします。
1階は線、2階は面を基本とした対比のデザインがきれいです。
その間にある庇も、各建物で意匠を凝らしています。
また、基礎部分の意匠も細かい。
土台と柱の接合部の金物。
柱位置に目地を取った基礎の意匠。
格子間隔は飛騨格子より大きいが下から上まで同じ。
看板もおしゃれ。
これは、経年変化によって分かりやすくなってますが、
よーく見ると、横桟の中央部はわずかにR状に削られています。
竪格子と横桟の接合部に水が溜って腐らないように配慮してあるのかも。
すごい。。。
夜になると、1階の格子が不思議な半透明のような効果を生み出しています。
不思議。
2階の建具は、日中の垂直性に対して、窓明かりの水平性が強調される。
明かりによって、昼と夜とで異なる表情を生み出す。
ただただ秀逸―。
ひがし茶屋街は、国の重要伝統的建造物保存地区に選定されています。
4/27 金沢の兼六園近くのホテルで
フランソワーズ・モレシャンさんの講演会があり聴講してきました。
フランス人・女性
パリ・ソルボンヌ大学東洋美術系学科卒業後、
1958年来日
肩書きはファッションエッセイストですが、
ファッション、文化、インテリア全般におけるアドバイザーとしても活躍。
金沢21世紀美術館の立ち上げにも関わるなど活躍の場は公共、民間に限らず。
講演では、具体例の紹介もありましたが、
物事の捉え方、対し方の根本となる“姿勢”に関するものや
そこから派生するキーワードを上手に話されました。
聴講の方は、インテリアコーディネーターの方々ですが、
カーテンメーカー、クロスメーカーなどの“部分”を扱う方も多く、
そのような方には、講演全体の80%を占めた「文化比較論・精神論」のような内容は
現実の仕事や体験から距離があり難しかったかも。
でも、本当に金沢まで行ってよかった!と思える内容でした。
それは、
自分なりに言葉にし、形にしてきたコトを
異文化(フランス)の方の言葉に照らし、客観的に見る視座を得た。
また、今後、その視座からの客観的検証ができる。
から。
・・・書くと難しいですね。はい大体、端的に言うには難しくなります。
簡単、やさしいということは、
分かりやすくすると同時にそのためにエッセンスをそぎ落とすことですから。
例のごとく、キーワードの列記ー。
・“モノの置き方”が重要
・大陸(フランス)と島(日本)の違いはDNAレベルで歴然としている
・360°の状態を知る
・プロフェッショナルな背骨
・日常のグレード(小さいときからどのような環境で育ち、接してきたか)
・Family
・美しさ、バランス=最上の先生は自然
・オーガニック(自然素材)
・日本文化の中心の美意識
・嵐のとき(最もシビアな時)に自分の根っこ(DNA)が物をいう
・人間は、フランス人であろうと日本人であろうと、
どこかで共通するものがあると思っていた。が!今は違う。
根本(DNA)で違うのです。
・フランス人 クリスチャン、プロテスタント、カトリック →キリスト→平等、ヨコ社会
・日本人 東洋、中国→儒教→孔子→タテ社会
・プロポーションとバランス
・(着物の)帯のサイズには意味がある。それをデザインと称してカットしては無意味。
本物ではなくなる。
・空間とモノのスケールバランス
・深み、プロポーション、色の組み合わせ...そして ストーリー!
・美と便利は相反することが多い
・いい意味での“普段”であること
・ブーツ、椅子、しぐさ→ストーリー→ 美 (便利だけど美しい)
・椅子+ランプ →存在のイメージ
・“間”の重要性 (絵もファッションもインテリアも人間も呼吸も...)
・壁と家具の間に空間をつくる
・家具~間(呼吸)~家具~間(呼吸)...
・呼吸!
・Stance of mind ~魂(心)の置き方~
・自分の文化を生かす(Stance of mind)ことは義務
・文化的な右翼はいい
・人間ぽさ
・和家具とメキシコの民芸 ~~ “民芸”という共通点、統一感
・昔のものと今のものの共通点、統一感
・基本を押さえた上で、くずす
・色を(抑える方へ)制御する。2色
・オフホワイト(空間、カーテン)とダークカラー(家具)
・モネ・・・ブルー、ホワイト、イエロー
・素材の統一感、色の統一感
・白木にくるみのからのしぼり汁を塗る。それは言わないと分からない隠し味―。
・コンセンサス
http://www3.ocn.ne.jp/~ydo/CCP004.html
霞のようなもの
以前も記事にしましたが、
古い町並みの表情を作る見せ棚(ショーウィンドウ)について。その2
狭い通りに面した、狭い間口の建物が軒を連ねる上三之町。
なかなかショーウィンドウを設ける場所の確保も難しい。
そんな中で・・・
伝統的な出格子の前に、吊り式で設けてあります。
古い箪笥の一部のようなデザインもなかなか街並みに合っているような気がします。
狭い通り沿いに面することをよく考えた形だと思います。
横長の形とし、それが目線の位置にあることで
展示ケースから離れたり、目線を上下させなくても全体が見える。
歩きながら、横に移動しながら見ることができる。
それを狙ったのではなく、重量的な理由からかもしれないけど、
結果的には町並みにマッチしていると思います。
飛騨高山の古い町並みに近い場所にある、蔵の雨樋。
かなりのこだわりです。
軒樋自体はごく普通の半丸樋。
しかし...樋受け金物がすごい。。。
樋受け金物は、一般的には軒樋の直近で垂木や鼻隠し板に固定し、
ちょこっと持ち出すのがふつう。
どちらかというと、意匠上は邪魔者扱いで、
そのために、樋を内側から受けるような製品を、コストが許せば使っています。
ところがこれは、
その樋受けをデザインしている!
壁への固定位置の絶妙な丸みのある架台。
その丸架台の位置は、なにもこんなに低い位置である必然性はなく、
持ち出しの鉄を意匠的に扱うことに神経を注いでいる。
そして、その持ち出しの鉄部も、鍛冶屋さんに特注したものでしょう。
そして、落とし口部 (軒樋と竪樋の接合部) 。
よく、神社では見かけますが、蔵ではなかなかないと思います。
並々ならぬこだわりですね。
勉強になります。