【U-17日本代表】快進撃を見せる吉武ジャパン。大型DF岩波と植田の可能性
93年日本、95年エクアドル、2001年トリニダード・トバゴ、2007年韓国、2009年ナイジェリアと過去5回のU-17ワールドカップ出場経験がある日本。しかし自国開催だった93年に決勝トーナメント進出しているだけで、他の4回はいずれも1次リーグで敗退している。95年大会には小野伸二、高原直泰(ともに清水)ら黄金世代、2001年大会には矢野貴章(フライブルク)や藤本淳吾(名古屋)らA代表経験者、2007年大会には鈴木大輔(新潟)や山田直輝(浦和)ら現U-22代表世代の選手たち、そして2009年大会には宇佐美貴史(G大阪)、宮市亮(フェイエノールト)ら10代で欧州に羽ばたいた面々がいた。が、それでも世界の壁は高かった。
それだけに今回、2011年メキシコ大会に挑んでいるU-17日本代表も苦戦が予想された。1次リーグでジャマイカ、フランス、アルゼンチンという強豪揃いのグループに入ったうえ、このチームには看板になるような頭抜けたタレントがいない。そういう意味でも期待はさほど大きくなかった。しかし初戦でジャマイカにまず幸先のいい勝利を挙げ、第2戦でフランスに引き分けたところで、選手たちは大きな自信をつけたようだ。勢いに乗った彼らはグループ最終戦・アルゼンチン戦を3-1でモノにし、1位でグループを通過した。
この3試合を通して吉武博文監督が大胆だったのは、メンバーをつねに入れ替えながら戦ったこと。特に3戦目は勝負が懸かっているのに、正守護神・中村航輔(柏U-18)をサブに回して牲川歩見(磐田ユース)を先発起用。大黒柱であるセンターバックの1人である植田直通(熊本大津)もベンチスタートにした。攻撃陣の入れ替えならまだしも、GKと最終ラインの真ん中を変えるというのは大きなリスクを伴う。吉武監督は「頭抜けた選手がいない分、全員で戦って勝ち上がる」という考えが強いのだろう。このアルゼンチン戦で控えの高木大輔(東京Vユース)が先制点を挙げたのも、こうした「チーム全体で一致団結して戦う」という意識が前面に出たからではないか。
日本時間30日朝に行われたラウンド16・ニュージーランド戦も素晴らしい内容の勝利だった。立ち上がりから日本は人とボールの動くサッカーを面白いようにピッチ上で表現し、相手を寄せつけない。前線の石毛秀樹(清水ユース)、松本昌也(JFAアカデミー)、早川史哉(新潟ユース)が巧みなポジションチェンジと連動性は見事で、次々と相手守備陣を攻略。ゴールを重ねる。前半だけで石毛が2点、早川が1点、オウンゴールで1点とこれだけ面白いように点が入る。後半も途中出場の南野拓実(C大阪U-18)、早川が追加点を奪い、終わってみれば6-0の圧勝。日本時間4日朝に行われる次の準々決勝・ブラジル戦で勝てば、いよいよメダルも見えてくる。99年に黄金世代がナイジェリアで達成した快挙に迫る迫力が今の吉武ジャパンには感じられる。
石毛、早川、松本の決定力や攻撃の連動性に目が行きがちなこのチームだが、やはり全体を支えているのは植田と岩波拓也(神戸ユース)の長身センターバックだろう。昨夏の豊田国際ユースで当時のU-16代表を取材した際、吉武監督はこんな話をしていた。
「今の日本サッカー界には長身のセンターバックが少ない。指導者はどうしても状況判断がよくて足元のうまい選手を選びがちだが、サイズがないと上の年代に行った時に世界では通用しない。そういう問題を実感したので、私はあえて高さのある選手を我慢して育てて行こうと思っています」と。
過去何世代かのユース代表のセンターバックを見ても、金井貢史(横浜)、内田達也(G大阪)、平出涼(富山)のように読みやフィード力には優れていても、高さの問題で上の年代代表に生き残れていない選手が非常に多い。今のザックジャパンでも、185cm以上あるDFは吉田麻也(VVVフェンロ)ただ1人。今野泰幸(FC東京)と伊野波雅彦(鹿島)は170cm台、栗原勇蔵(横浜)や槙野智章(ケルン)らも180cm台前半で、世界の凄まじい大型化の波を考えるとやや心もとない。185cm以上のDFを起用しながら育てるという吉武監督の試みは、今後の日本サッカー界にとって大きなプラスといえるだろう。
実際、植田と岩波はこの1年間で確かな成長を遂げているし、U-17W杯でも穴のない仕事をしている。植田を預かる熊本大津の平岡和徳監督も「まだ成長期が終わっていないのでもう少し背が伸びるかもしれない。人間的にも大人になってきたし、将来が楽しみ」と太鼓判を押していた。2014年ブラジルワールドカップが行われる3年後、彼らは19~20歳。A代表入りも十分考えられる年齢だ。その時に本当に期待通りの選手になっているのか。まずは今大会でできる限り、高いレベルまで勝ち上がり、国際経験と自信をつけてほしい。次のブラジルとの決戦が大きな正念場になりそうだ。
元川 悦子 06月30日16:46
悦っちゃんによるU-17日本代表の躍進のコラムである。
特に最後尾で控える大型CB二人にスポットを当てておる。
一時のフル代表が大型で専門職のCBを起用せず、足技に優れるMFをコンバートしておったあたりから、屈強なCBを軽視する傾向にあった。
しかしながら、最後尾からのビルアップに頼らずとも中盤が作れるのであれば、高く強いCBが有利であることは言うまでもなかろう。
餅は餅屋である。
今回のU-17でそれを担うひとりの植田くんには鹿島が興味を持っておる。
まだまだ、身長が伸びるであろう植田くんは、身体だけでなく人間的にも成長著しい。
鹿島のDFを任せるため、更なるスケールアップを期待したい。
楽しみに逸材である。
93年日本、95年エクアドル、2001年トリニダード・トバゴ、2007年韓国、2009年ナイジェリアと過去5回のU-17ワールドカップ出場経験がある日本。しかし自国開催だった93年に決勝トーナメント進出しているだけで、他の4回はいずれも1次リーグで敗退している。95年大会には小野伸二、高原直泰(ともに清水)ら黄金世代、2001年大会には矢野貴章(フライブルク)や藤本淳吾(名古屋)らA代表経験者、2007年大会には鈴木大輔(新潟)や山田直輝(浦和)ら現U-22代表世代の選手たち、そして2009年大会には宇佐美貴史(G大阪)、宮市亮(フェイエノールト)ら10代で欧州に羽ばたいた面々がいた。が、それでも世界の壁は高かった。
それだけに今回、2011年メキシコ大会に挑んでいるU-17日本代表も苦戦が予想された。1次リーグでジャマイカ、フランス、アルゼンチンという強豪揃いのグループに入ったうえ、このチームには看板になるような頭抜けたタレントがいない。そういう意味でも期待はさほど大きくなかった。しかし初戦でジャマイカにまず幸先のいい勝利を挙げ、第2戦でフランスに引き分けたところで、選手たちは大きな自信をつけたようだ。勢いに乗った彼らはグループ最終戦・アルゼンチン戦を3-1でモノにし、1位でグループを通過した。
この3試合を通して吉武博文監督が大胆だったのは、メンバーをつねに入れ替えながら戦ったこと。特に3戦目は勝負が懸かっているのに、正守護神・中村航輔(柏U-18)をサブに回して牲川歩見(磐田ユース)を先発起用。大黒柱であるセンターバックの1人である植田直通(熊本大津)もベンチスタートにした。攻撃陣の入れ替えならまだしも、GKと最終ラインの真ん中を変えるというのは大きなリスクを伴う。吉武監督は「頭抜けた選手がいない分、全員で戦って勝ち上がる」という考えが強いのだろう。このアルゼンチン戦で控えの高木大輔(東京Vユース)が先制点を挙げたのも、こうした「チーム全体で一致団結して戦う」という意識が前面に出たからではないか。
日本時間30日朝に行われたラウンド16・ニュージーランド戦も素晴らしい内容の勝利だった。立ち上がりから日本は人とボールの動くサッカーを面白いようにピッチ上で表現し、相手を寄せつけない。前線の石毛秀樹(清水ユース)、松本昌也(JFAアカデミー)、早川史哉(新潟ユース)が巧みなポジションチェンジと連動性は見事で、次々と相手守備陣を攻略。ゴールを重ねる。前半だけで石毛が2点、早川が1点、オウンゴールで1点とこれだけ面白いように点が入る。後半も途中出場の南野拓実(C大阪U-18)、早川が追加点を奪い、終わってみれば6-0の圧勝。日本時間4日朝に行われる次の準々決勝・ブラジル戦で勝てば、いよいよメダルも見えてくる。99年に黄金世代がナイジェリアで達成した快挙に迫る迫力が今の吉武ジャパンには感じられる。
石毛、早川、松本の決定力や攻撃の連動性に目が行きがちなこのチームだが、やはり全体を支えているのは植田と岩波拓也(神戸ユース)の長身センターバックだろう。昨夏の豊田国際ユースで当時のU-16代表を取材した際、吉武監督はこんな話をしていた。
「今の日本サッカー界には長身のセンターバックが少ない。指導者はどうしても状況判断がよくて足元のうまい選手を選びがちだが、サイズがないと上の年代に行った時に世界では通用しない。そういう問題を実感したので、私はあえて高さのある選手を我慢して育てて行こうと思っています」と。
過去何世代かのユース代表のセンターバックを見ても、金井貢史(横浜)、内田達也(G大阪)、平出涼(富山)のように読みやフィード力には優れていても、高さの問題で上の年代代表に生き残れていない選手が非常に多い。今のザックジャパンでも、185cm以上あるDFは吉田麻也(VVVフェンロ)ただ1人。今野泰幸(FC東京)と伊野波雅彦(鹿島)は170cm台、栗原勇蔵(横浜)や槙野智章(ケルン)らも180cm台前半で、世界の凄まじい大型化の波を考えるとやや心もとない。185cm以上のDFを起用しながら育てるという吉武監督の試みは、今後の日本サッカー界にとって大きなプラスといえるだろう。
実際、植田と岩波はこの1年間で確かな成長を遂げているし、U-17W杯でも穴のない仕事をしている。植田を預かる熊本大津の平岡和徳監督も「まだ成長期が終わっていないのでもう少し背が伸びるかもしれない。人間的にも大人になってきたし、将来が楽しみ」と太鼓判を押していた。2014年ブラジルワールドカップが行われる3年後、彼らは19~20歳。A代表入りも十分考えられる年齢だ。その時に本当に期待通りの選手になっているのか。まずは今大会でできる限り、高いレベルまで勝ち上がり、国際経験と自信をつけてほしい。次のブラジルとの決戦が大きな正念場になりそうだ。
元川 悦子 06月30日16:46
悦っちゃんによるU-17日本代表の躍進のコラムである。
特に最後尾で控える大型CB二人にスポットを当てておる。
一時のフル代表が大型で専門職のCBを起用せず、足技に優れるMFをコンバートしておったあたりから、屈強なCBを軽視する傾向にあった。
しかしながら、最後尾からのビルアップに頼らずとも中盤が作れるのであれば、高く強いCBが有利であることは言うまでもなかろう。
餅は餅屋である。
今回のU-17でそれを担うひとりの植田くんには鹿島が興味を持っておる。
まだまだ、身長が伸びるであろう植田くんは、身体だけでなく人間的にも成長著しい。
鹿島のDFを任せるため、更なるスケールアップを期待したい。
楽しみに逸材である。