鹿島アントラーズ原理主義

愛する鹿島アントラーズについて、屈折した意見を述べていく場です。

曽ケ端、チームと地元に対する愛が育む“継続するチカラ”

2013年03月03日 | Weblog
チームと地元に対する愛が育む“継続するチカラ”


プロフィール 1979年茨城県鹿嶋市生まれ。Jリーグ、鹿島アントラーズ在籍のプロサッカー選手。ポジションはゴールキーパー。小学校2年生の時に、地元の 「波野サッカー少年団」 でサッカーを始め、小学校3年生時からゴールキーパーとして活躍した。1995年に鹿島アントラーズユースに入団。1998年にトップチームに昇格を果たす。2001年、当時の正ゴールキーパーに替わりレギュラーに定着して以降、15年にわたりチームのゴールマウスを守り続けている。2012年にはクラブ公式戦通算最多出場、リーグ戦クラブ最多出場、クラブ公式戦通算500試合出場をそれぞれ達成。常勝軍団、鹿島アントラーズの “守護神” として多くのサポーターに愛されている。

ユースチームを経て鹿島アントラーズに入団して以来、15年間にわたってゴールを守り続けてきた “守護神” 曽ヶ端準選手。驚異的なのはレギュラーとして活躍を続けている年数だけではない。毎シーズン、ほぼフル出場を果たし、2012年度にはクラブ公式戦通算最多出場やリーグ戦クラブ最多出場などの記録を打ち立てていることだ。長きにわたりコンディションを維持し、ハイパフォーマンスな仕事を続けることは、肉体を酷使するスポーツ選手にとって並大抵のことではない。その “継続するチカラ” は一体どこから生まれてくるのか。鹿島アントラーズ一筋でキャリアを歩んできた曽ヶ端選手の、ゴールキーパーとしてのクロニクルを紐解きながら、その秘密に迫ってみたい。


キーパーを目指した理由



 小学校2年生の時に、地元のサッカー少年団に参加したのが私のサッカー人生の始まりでした。当時は明確なポジションがあったわけではなく、メンバー全員がピッチに立って、仲良くボールを追いかけている感じでしたね。その後3年生となり、しっかりとしたチーム編成をすることになった時に、ゴールキーパーのポジションが空いていたんです。すると、コーチから 「やってみないか」 と聞かれたので 「やりたいです」 と答えました。というのも、私には2歳上の兄がいて、一緒に練習する際は自然と私がボールを受ける役割になっていたので、ゴールキーパーというポジションに抵抗を感じなかったんですよ。当時から身長も高かったから、体格的に有利だと判断した部分もあります。
 それと、「ゴールキーパーなら数多くの試合に出場できるのでは」 という計算も幼心にあったと思います(笑)。その少年団は大変レベルが高く強いチームでしたし、有能な選手もたくさんいましたからね。サッカーの魅力の一つは得点が決まる瞬間ですから、子供であればなおさら、得点を狙えるポジションを務めたいと思うでしょう? だから、「ゴールキーパーになるぞ」 という子がチームにはいなかったわけです。もしあの時、ゴールキーパーではなく他のポジションを選択していたら、私のサッカー人生はどうなっていたかわかりません。ゴールキーパーだからこそ、こうしてプロ選手となる夢を果たせたのではないかと思うこともあるんです。
 実はこれだけの間、ゴールキーパーというポジションを続けてきた今でも、得点へのあこがれと意欲はあるんですよ。現役中になんとか1点取りたいと思っていますからね(笑)。チームが負けている時のロスタイムに味方がコーナーキックのチャンスを得たら、私も敵陣に上がっていくことがあります。そんなシチュエーションでゴールを決められたら最高でしょうね。とにかく、PKでもどんな形でもいいから、1点ぐらいは取りたいと思っているんですよ。

ゴールキーパーは、求められるスキルも練習メニューも、他のメンバーとは大きく異なるポジジョンだ。チームの失点は全ての選手に責任があるとはいえ、最後の砦を守る役割であるがゆえに、批判の矢面に立たされてしまうこともある。こうしたことに、歯がゆさを感じることもあるのではないだろうか。

キーパーとして大切なこと



 私自身、どちらかというと短気な性格なので、若い頃にはチームメイトが決定的なチャンスに得点できなかったり、味方のミスで失点してしまったりした時などは、イライラすることがありました。また、その気持ちを抑えることができずに、思い切り態度や表情に出したこともあります。時には地面を叩いて怒りを露わにすることもありました。
 しかし、感情的になって苛立ちをそのままにしていると、プレーに必要な冷静さをなくしてしまう。そんな時に相手から攻められたら、判断を誤って失点につながるプレーをしてしまうかもしれません。感情的になることは間違いなく、プレーに悪影響を及ぼすのです。だから、とにかく味方のミスを気にしないよう、自分がミスを犯してしまった時も冷静でいるように自分に言い聞かせていました。 
 そのように、試合経験を数多く積みながら、自分のメンタル的な弱点を克服しようと努めてきた結果、徐々に自分をコントロールできるようになったのです。自分が冷静でさえいれば、ゴール前から見渡す味方選手がそれぞれどのようなメンタルでプレーしているのか、一目でわかります。たとえば目の前の味方ディフェンダーがイライラして熱くなっている時には、「落ち着け!」 と声をかけたり、ミスをしてしまい堂々としたプレーができなくなっている若手選手がいたら 「俺が後ろでカバーするからミスを恐れず思い切って行け!」 と勇気付けたりできるようになりました。
 こうした一言はとても大事だと思います。選手が試合中のミスをずっと引きずっているのはチームにとってもマイナス。一声かけることで、試合中に気持ちを切り替えてもらえるのであれば、いくらだって励ましますよね。それがチームの勝利につながるんですから。
 ゴールキーパーは単にゴールを守るだけではなく、ピッチ全体を見渡して、後方からチームをコントロールすることも役割の一つなんです。もちろんチームには、小笠原満男選手というキャプテンがいます。でも、チームをまとめるのは彼だけの仕事ではありません。彼を中心に、私と同世代の経験豊富な選手たちがそれぞれの役割分担というか、キャラクターを生かしながら若手選手へ助言をしたり、チーム全体がうまくまとまっていくような意識付けをしたりしています。私は後輩に対しては厳しく指導をするタイプかもしれません。でも、私の他に優しく諭してくれる選手がいますから、バランスは良いと思います。誰がどんな役割を果たすかを話し合っていなくとも、それぞれが自分の立場とやるべきことを自覚しています。もちろん、私が言うことの全てが後輩のためになるとは限りません。それでも私なりに、相手にとってプラスになればとの思いで的確な言葉を選び、話をしているつもりです。そしていざ試合になれば、ピッチ上の誰よりも冷静に的確な判断をすること。それがゴールキーパーにとって最も重要なことだと思います。とにかく、平常心です。

曽ヶ端選手は圧倒的な試合出場数を誇りながら、通算防御率は毎年常に上位をマークしている。こうした鉄人ぶりを発揮するには、怪我をしないための日々のコンディション調整、つまり徹底した自己管理が重要だ。毎試合100%の力を発揮するためのメンタルコントロールも欠かせない。妥協を許さず、常に一流の仕事をするための準備を “継続する力”。そして、試合中にベストパフォーマンスを披露するための “集中力”。この二つの力はどのような背景から生まれるのか。

“継続力”と“集中力”が生まれる背景



 シーズンがスタートする前のこの時期は、まずチームとして1つでも多くのタイトルを取ろうと目標を掲げます。そして個人としては全試合フル出場を果たすことを心に誓い、目標とします。一年を通して出場をし続けるとなれば、もっとも注意すべきなのは怪我の問題です。だから、当然ですけれど身体のケアは気にかけていますね。私は痛みに強いほうなので、これまでも多少の怪我であれば試合に出場してきました。でも、チームに迷惑をかけることはNGです。もちろん、私が出場できるかどうかを判断するのは監督やコーチですから、自分の状態を正確に把握しながら伝えていくことも大切です。
 全試合フル出場という目標を全うするため、日頃からあまり無理はしないようにしています。身体に多少の違和感を覚えたならば、早めに練習を切り上げますしね。私生活においてもそう。休みの日だからといって遊び歩いたりはせずに、家でゆっくり身体を休めるようにしています。もしかすると、私の妻や子供は不満かもしれません(笑)。でも、私がベストの状態で試合に臨むためのサポートをしてくれるので、助かっています。特に妻には、食事の面でも気を遣ってもらっていますからね。チームと自分の目標、それを達成するために、自分のコンディションをきちんと把握し、そのうえでやるべきことに取り組む。このチームで達成したいことがまだまだ沢山ありますから、全く苦にはなりませんよ。
 また、キーパーは集中力が求められるポジションです。試合展開によっては、相手チームがほとんど自陣に攻めてこないこともあります。しかし、ボールが近づいた時だけ集中すれば良いというものではありません。では、どのように集中力を維持するのかといえば、先ほど話した味方選手への声がけもその一つです。試合の流れをつかみ、状況に応じて適切な声がけをすることは、チームメイトのためだけでなく、自分の集中力を切らさないための行為にもなるわけです。
 また、試合前にする工夫もあります。たとえば私は、試合直前にいきなりボルテージを最大にするようなことはしません。テンションが上がりすぎてもよくないからです。スタジアムに足を踏み入れ、ウォーミングアップをし、ミーティングへと続く一連の時間の中で、徐々に気持ちを高めていきます。ゴールキーパーにはどこまでも冷静さが求められますので、試合に必要なメンタルをつくり出すため、特別なことはせずに淡々と行動し、自然とベストの状態に持っていくよう心がけているんです。

シーズン開幕前に、“全試合フル出場” という目標を掲げ、それに向かって冷静沈着に歩みを進めるという曽ヶ端選手。“継続” の中で得たものは何か? との問いかけに、これまでの淡々とした語り口が、熱を帯びたものへと変化していった。

地元愛とチーム愛が原動力に



 私が長く選手として頑張りたいという思いの裏には、地元であるこのクラブと応援してくださるサポーターの皆さんにずっと貢献し続けたいという気持ちがあります。小学生の頃からサッカーを始め、当時は 「生まれ育ったこの鹿嶋市にプロチームができたらいいな」、などと思ったりもしました。その夢が叶い、しかもそのチームに所属し、選手としてプレーができているんですよ。私にとって、これほど幸せなことはありません。そして、そんな私を支えてくれるサポーターの皆さんの思いに応えるために、一日でも一年でも長くプレーをし続けていかなくてはならないと思っています。
 最近は、Jリーグのチームに2~3年在籍した後に、海外のクラブチームへ移籍する若手選手も増えてきました。それらを否定するつもりは全くありません。でも、自分という選手の能力を最初に認めてくれたからこそ入団したチームに対して、何か恩返しをしてから移籍しても遅くはないと思うのも確かです。サポーターの皆さんも温かい声援を送ってくださるし、入団以来、自分を育て支えてくれたクラブなのですから。しっかり実績を残して、「あいつなら海外でも期待に応えてくれる」 と、チームのメンバーやサポーター、スポンサーの方々、誰もが認めてくれる選手になって気持ちよく送り出されるのが、理想の移籍ではないかと思っています。
 もちろん、所属チームが魅力的であるか否かによって状況も変わってくるでしょう。私が所属する鹿島アントラーズは、私にとっては、大変魅力的なチームです。このチームに在籍してきたことで、何度も優勝の喜びを味わうことができましたし、これからもずっと、そして何度だってその喜びを勝ち取りたいと思っています。それができるチームであるからこそ、ここを離れることなど全く考えられませんし、チームの優勝に貢献していきたいと強く思っています。

曽ヶ端選手には、人一倍強いチームや地元に対する愛情があることがわかった。それらの愛情は、最近の日本社会において、少しずつ薄れている感情のように思えるのだが。なぜ、それほどまでの愛情が注げるのであろうか。


チームと良い関係を持つために

 ホームタウンの地域性もあるのかもしれませんが、鹿島アントラーズでは、クラブとサポーター、スポンサーが一体となって、選手が力を発揮できるよう支援してくれています。私たちが全力でプレーできる環境を用意してくれるのが実感できるからこそ、私たちもそれに応えようという、シンプルな信頼関係の構図ができているのです。たとえばチームスタッフの方々は、対応が丁寧でスピーディ。頼んでいたことが、素早く確実に実行されるので非常に信頼しています。大切にされていると思うと、それに報いたいという意識が自然と強くなりますよね。だから、結果を出そうと選手全員が努力をする。長く貢献し続けようと、しっかり自己管理をする。そしてチームが一丸となれるように、それぞれが自分の役割を果たすようになる。誰かに言われるのではなく、自然とそうなるんですよ。だから、クラブと選手の関係が単にビジネスライクなものに終わらず、「全員がファミリー」 と感じられるのです。そんなクラブだからこそ私はこの、鹿島アントラーズに愛着を感じますし、もっともっと力を発揮して貢献していきたいのです。
 今後も、もちろんチームの核として長く活躍したいです。チームメイトは仲間ですが、ライバルであることも確かです。年下の選手からの突き上げもありますし、ポジション争いに勝たないことには試合に出場できません。だから、みんなと切磋琢磨していきたいですね。私もまだまだレベルアップを図れると確信していますので、この素晴らしいチームで頑張っていきますよ。




(インタビュー・文 伊藤秋廣 / 写真 Nori)

B-plusによる曽ケ端のインタビューである。
GKを“仕事”として語っておる。
やはりここで重要なのは、平常心であり、感情を交えてはならぬというところであろう。
サポーターは感情をぶつけにスタジアムに集まってくる。
その中で常に感情を殺し、冷静にプレイを行うことがGKにとって最も必要なことであろう。
この言葉を鹿島サポーターだけで無く、多くの働く人々に共有していきたいところ。
業務は平常心にて遂行するのである。
それが“仕事”を行うということである。
曽ケ端のプロフェッショナルな姿勢を我らも行っていきたい。

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2 コメント

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Unknown (らすとえんぺら)
2013-03-04 19:45:08
素晴らしい記事だと思います
どうしても特集されにくいソガですが、ソガの良さ、人間性、仕事の心構え、等よく出てて、よくある他のスポーツ物の記事とは異なる味わいがありました
Unknown (おっちゃん)
2013-03-05 13:59:00
「こういう選手がいる」という事を知ってもらい、一人でも多くの人がJリーグに興味を持ち、鹿島を応援し、スタジアムに足を運んでもらいたいですね。