政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

法務省と検察庁の奇怪な関係…怒りの小沢幹事長

2010-01-16 19:30:37 | 小沢一郎
小沢と検察の戦いはチキンレースの様相を帯びてきていた。
検察はどこまで強気に出られるか。
小沢は事情聴取の要請をどこまで拒否し続けられるか。
先に一歩進んだのは石川議員外を逮捕した検察だった。

昼過ぎに小沢が幹事長職を休職するというニュースが流れた。
ついに小沢の負けか、と思っていたらちょっと違っていたようだ。

【小沢幹事長あいさつ詳報】「信念を通し、戦っていく決意」 (産経ニュース 1/16)
(抜粋)
しかしながら、このような形式的なミスにつきましては、今までのほんとんどのケースで、報告の修正、あるいは訂正ということで許されてきたものであります。それにもかかわらず、今回の場合は、なぜか最初から、逮捕、強制捜査という経過をたどって、今日に至りました。私はこの点につきまして、何としても納得のできない気持ちでおります。

「それが突然、きのう、きょう、現職議員を含む3人の逮捕ということになりまして、本当に私は驚いております。しかも、意図してたかどうかわかりませんけれども、わが党の、この党大会に合わせたかのようにこのような逮捕が行われている。私は、到底このようなやり方を容認できないし、それがまかり通るならば、日本の民主主義は本当に暗澹(あんたん)たるものに将来はなってしまう。私はそのことを私個人のうんぬんよりも、非常に憂慮いたしております」

そういう意味におきまして、私は断固として、このようなやり方、このようなあり方について、毅然(きぜん)として、自らの信念を通し、そして戦っていく決意でございます

当面、こういう権力の行使の仕方について、全面的にきちんと対決をしてまいりたい、そのように考えております。


近頃政治家の口からは、絶えて聞くことのなかった毅然として痛快な発言である。
徹底抗戦の宣言である。
検察のやり方に小沢は本気で怒っているようだ。
どうやら小沢の方も一歩踏み出したようだ。
しかも大股で。
珍しく鳩山もはっきり小沢支持を明言している。
小沢と一蓮托生の覚悟をきめたらしい。

相手は東京地方検察庁特別操作部である。
検事40名・副検事2名・検察事務官90名

何故彼等はここまで執拗に小沢を追うのか。
小沢こそ彼等の真の敵であると思っているからだろう。
彼等は久しぶりの大物相手の戦いに張り切っている。
田中角栄以来の獲物である。

ある意味小沢は角栄以上の大標的とも言える。
角栄を追いつめ、逮捕しても自民党政権はそのまま存続する。
検察にも自民党を政権の座から引きずり下ろそうという気はなかったろう。
しかし、小沢は違う。
鳩山をいたぶったあと、小沢を引きずり下ろせば、民主党政権はガタガタになる。
小沢さえいなければ民主党など怖くはない。
うまくすればもう一度自民党に政権を戻せるかも知れない。

しかし、検察はなぜそれ程小沢を嫌い、恐れたのだろう?
理由は幾つか考えられる。

民主党の主張する、”取り調べの可視化”を嫌ったということもあろう。
これまでの自民党との快適な関係を懐かしんでもいるだろう。
”天下り禁止”も気に入らないだろう。

しかしわたしは、「脱・官僚」、「政治主導」という民主党の主張が最大の理由ではないかと思っている。
各所で”官僚”の抵抗が見られている。
羽毛田宮内庁長官、藤崎駐米大使の時限爆弾のような発言も当然その流れであろう。
”財務省”は省庁中の省庁、財務官僚は”官僚中の官僚”と呼ばれているようだ。
ところが検察庁はそれ以上である。

検察庁をかつての関東軍にたとえる人もいるが、実態はそんなものではなさそうだ。

検察庁は制度上は法務省の外局である。
当然、法務省の指揮監督下にある。
しかし、現実は逆である。
法務省が検察の指揮下にあるのである。

他の省庁と異なり、法務省における役人の最高の地位は事務次官ではない。
法務省では検事総長なのである。
その下に八つの高等検察庁の検事長そして最高検察庁の次長検事がいる。
彼等ははいずれも認証官である。
皇居で天皇から認証を受ける。
事務次官は認証官ではない。
法務事務次官は検事出身者がつく。
事務次官には検事出身者しかなれない。
そしてそのあとで検事長に昇り、さらに検事総長を目指すのである。
検事として採用された彼等は、法務省と検察庁との間を往復し、ときに外国駐在なども経験しながら役人としての修行を積んでいく。
検事として採用された者でなければ、法務省ではキャリアであっても事務次官にはなれない。

彼等は中央省庁の事務次官以上の存在なのである。

実質的に法務省は検察庁の下部機関なのである。
法務省の役人はだれも検事総長に命令を出せる力を持っていない。
では、法務大臣は?
法務大臣は検事総長を通して検察の指揮を執れることになっている。
しかし「指揮権発動」は中立公正な検察の捜査を妨害するものという迷信があまねく行き渡っている。
1954年の造船疑獄のとき以来発動されたことはない。
もし今、指揮権発動が出来る政治家を敢えて挙げるとすれば亀井静香ぐらいであろうか。
現法務大臣にはあいにくそれをやるだけの良識も度胸もなさそうだ。

実質的に検察庁は独立王国なのである。
関東軍は、参謀本部から独立した組織で独自に中国での戦線を拡大していった。
統帥権は天皇にあり、関東軍を抑制することはだれにもできなかった。

検察庁は法務省の出先機関でもなく、さらには独立機関でもなく法務省を支配する上部組織なのである。
自衛隊が文民統制を無視して、防衛省を支配するかのごとき状態といえよう。
あるいは関東軍が参謀本部そのものを指揮するようなものである。

民主党の唱える「公務員制度改革」、「脱官僚」、さらには「事務次官廃止」「霞ヶ関改革」等を座視していては、彼等の独立国家が危機に陥る。
検察庁と法務省の人事制度を含めた関係見直し、検察庁と法務省の完全分離、検事総長の政治任用、認証官の見直し、あるいは特捜解体なんて事まで言いだしかねない。

今ここで小沢を追い落とすことができれば、彼等の王国は安泰である。
今後、検察に刃向かう者はだれもいなくなるだろう。

東京地検特捜部の功績は永遠に検察庁内で語り継がれることになろう。





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9 コメント

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Unknown (らむちゃのパパ)
2010-01-17 01:49:38
小沢氏には、是非とも検察との戦いに勝ってもらいたいものです。彼らは、間違った捜査や誤認逮捕、また無罪の人にえん罪をかぶせても、何の責任もとらない官僚の中の官僚です。私怨や偏見と正義の区別すらつかない人たちではないかと思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100116-00000601-san-pol
三Kの記事ではありますが、鈴木宗男氏の言っていることに賛同いたします。
返信する
Unknown (Ping)
2010-01-17 13:14:13
なぜ民主側の連中が「帝人事件」「昭電事件」を採り上げないかが不思議です。メディアは記者クラブからの締め出しが怖くて、この事件の裁判の結果がどうなったかなど報じることはできないと思います。
記者クラブ制度を平野の思うがまま愚かにも残しておいて開放しなかった結果、民主は今自分で自分の首を絞めている状態といえます。鳩山の甘さが招いたといっていいでしょう。
ちなみに昭電事件は政治家側は一人微罪で有罪。
帝人事件は逮捕・起訴合わせて100件近く(だったと思います)が全員無罪。両方とも事件が原因でリベラル派内閣総辞職。鳩山もリベラルです。
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東京地検特捜部のデッチ上げ捜査を許すな (ももだぬき)
2010-01-17 21:27:34
東京地検特捜部のデッチ上げ捜査はクーデターです。微罪逮捕から始まっていますが小泉ヒトラーや竹中ムッソリーニなどが捕まらないのは不公平でえこひいき。+JR西日本山崎ともと日本郵政西川を逮捕しないのはけしからん。山崎は宝塚線大事故を起こしたのに役人にワイロを贈ったから(怒)爆発。なお、クロスオーナーシップ禁止も特集して下さいな。
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Unknown (Y家の母妻)
2010-01-17 22:02:42
初めまして、コメントさせていただきます。
いつも、ユーモアを隠し味に的確で論点をきちんと踏まえた記事を拝見しております。
さて、初心者的見当違いなことをお聞きして申し訳ないのですが、原靴総務大臣が禁止すると言い出している「クロスオーナーシップ」とはどういうことなのでしょうか?
新聞TVともに、困ることらしいのですが・・?
なぜこまるのでしょうか?
ネットで調べてみたのですが、いま一つ良くわかりません。
どうして、新聞社がTVの株券をたくさんもつことはいけないのでしょうか?
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らむちゃのパパ様 (亭主)
2010-01-18 18:22:47
鈴木宗男氏の言葉には説得力がありましたね。
しかし未だに小沢に対する攻撃は止む気配はありません。
それでもごく少数ではあってもマスコミの一部に、検察に対する疑問の声も上がるようにもなりました。
小沢には徹底的に戦って貰いたいものです。
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Ping様 (亭主)
2010-01-18 18:33:38
記者クラブという制度は権力側にとっては実に都合のいい制度です。
それをそのままにしておいた平野や鳩山は、いまそのしっぺ返しを喰らっているとも言えますね。
小沢だけではなく、鳩山にこそ毅然たる態度が要求されるところでしょう。


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ももだぬき様 (亭主)
2010-01-18 18:45:19
>東京地検特捜部のデッチ上げ捜査はクーデターです

それにマスコミが荷担し、全省庁の”官僚”が支援しています。
小沢・鳩山にとっては長い戦いになりそうですね。
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Y家の母妻様 (亭主)
2010-01-18 19:04:03
コメントありがとうございます。

クロスオーナーシップについて原口総務大臣が禁止の方針を打ち出しました。

どの程度の内容なのか分かりませんが、情報の寡占化、新聞社・テレビ局のとめどない商業主義・利益追求主義の抑制等が目的ではないかと思うのですが。
電波は公共の財産でもあります。
メディアは、企業として法律でとくに保護や規制を受けています。
マスメディアの在り方は民主主義にとっては重要な問題です。
わたしもよく考えてみたいと思います。
返信する
「叩けば埃が出る」捜査はすべて (osekkai)
2010-01-18 22:14:34
禁止だ、人権を無視する司法の輩を裁く法律を制定すべし。法律と言う無謀な暴力を行使する検察官をなぜさばけないのか。
冤罪を与えた検察官を罷免しよう。
警察の不正経理がまかり通る世の中、変な日本だね、ばれて処分は末端だけ、連座制で幹部を
罷免だ。
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