『超監視社会』
ブルース・シュナイアー著/池村千秋訳
2016年12月 草思社刊
【 2017年6月19日 記 】
実に内容の濃い、しかも時宜にかなった-今まさに必要な知恵と方向性を与えてくれる本である。
著者は現在アメリカで活躍する暗号研究者でありコンピュータ・セキュリティーの権威でもある。本書は、ビッグデータに絡んだ《大量監視》を《政府や国家からの監視》と《民間企業からの大量データ収集》の両面から、その問題点を探っている。
「ビッグデータ」「人工知能」「ディープラーニング」といった用語と共に、科学の果てしない進歩が逆に人間の存在を脅かしかねない事態を作り出そうとしているが、一方政治の世界では、「大量盗聴社会」の出現により、個々人の「プライバシー」が脅かされ、自由な世界がせばめられ、民主主義の土台が崩されようとしている。
特に、『共謀罪法案』が《成立》してしまった現在の日本では、この本に書かれている警告・提案は重要で、くみ取るべき指摘が沢山ある。内容は、主にアメリカのことを念頭にかかれているが、著者が言うように「インターネットには国境がない」。ましてや日本とアメリカの仲である。アメリカでやられていることが日本では《関係ない》ということは有りえない。
「ビッグデータ」「大量盗聴」がらみで、もう一冊別の本を同時に読んだが、こちらはフランスの著書だ。共通の話題も多いが、前者の方が「セキュリティー」や「盗聴」に関してより専門的であり、現実社会に与える政治的影響力に関し、圧倒的に内容豊かで示唆に富んでいて、しかも綿密で的確な内容である。
こちらの本は、著者が作家であったりジャーナリストであるから、民間企業の考える「人工知能が果てしなく発展した将来社会の想像的世界」に関する内容が多い。
『ビッグデータという独裁者』
2017年3月 筑摩書房刊
この書籍については、別の機会にふれることにして、今回は『超監視社会』の方を見ていくことにする。
内容構成は以下のようになっている。
『共謀罪法』が《テロ対策》であるとか《国際条約を結ぶために不可欠の法案である》とかいうのはとんでもないウソであることは明白である。『特定秘密保護法』『安保関連法案』などを数の力で次からつぎへと成立させていった経過をみれば、【戦争できる国造り】に着々と駒を進めているのがよくわかる。そして今度は、それに抵抗しようとする【反対勢力を抑え込み、黙らせる】ことである。
『共謀罪法』が危険なわけは、その罪とする範囲の曖昧性にあるという。まともに答えられない《情けない大臣》の口からも漏れるように、警察の匙加減1つで【一般市民も罪に問われる危険性】があるのだ。法案を考えた人の知恵が回らないからそうなったのではない。最初からそれを意図しているのだ。戦前の『治安維持法』と同じだといわれる所以である。《差しさわりのない文言》で法律を成立させた後、《大きく広く取り締まろう》という魂胆だ。
『共謀罪』の恐ろしいところは、計画段階で犯罪とみなし処罰の対象になることである。平たく言えば《考えただけで罰せられる》ということだ。《計画》あるいは《考えていたこと》を証明するには《盗聴》や《監視》が必要である。だから、《大量監視社会》が不可欠なのである。
【大量盗聴】も【共謀罪】も自分にはあまり関係ないと思っている人、あるいは《監視》や《盗聴》を正当化しようとする立場の人の言い分は、は次のようである。
【隠すことがなければ、何も畏れることはない】
しかし、果たしてそうだろうか。確かに今の生活にインターネットは不可欠であるし、それ無しで済ますことは出来ない。科学や技術の進歩が人間に多くの恩恵を授けてくれたのも間違いない。だからといって、このままでいい野だろうか。
本書を見れば、そうした疑問の先が見えてくる。上のような考えが、【間違いで、的外れ】であることがよく分かる。
詳しくは、次回に回すことにして、2、3箇所だけ引用しておこう。
「・・・私たちが「無料」を好むこと、もう一つは「便利」を好むことだ。私たちが好むといっても・・・そうしたサービスを用いないという
選択肢は事実上ない。監視を受け入れるか、サービスを利用しないかの二者択一になっている。」(p-71)
「政府に監視されているかもしれないという意識は、結社の自由と表現の自由を委縮させる。しかも政府が個人のプライバシーを暴くようなデ
ータを無制限に収集できるようになれば、その力は乱用されやすい。」(p-141)
「網羅的監視がまかり通れば、警察の意向次第で誰でも法律違反を問われる恐れがある。」(p-154)
最近の新聞を見ていると、《悪者の森友学園》が逆にかわいそうにに思えるくらい、安倍首相とその取り巻き連中の態度は、桁外れに極悪非道である。
加計問題でも、《知らぬ存ぜぬで》まともに答えようとせず、『共謀罪』だけを異常な手続きで先に通してしまい、国会を閉めてしまった。「国会の私物化」というが、そんな甘いものではない。《独裁への道》そのものである。国連の特別報告者の書簡を無視するにとどまらず門前払いするその姿は、第二次世界大戦前夜、松岡洋祐が世界に背を向けて国際連盟を脱退する道を選んだ姿と重なる。
こんな国民をバカにしきって危険極まりない政府には国会から去ってもらわなければならない。
『超監視社会(草思社)』-のサイト
ブルース・シュナイアー著/池村千秋訳
2016年12月 草思社刊
【 2017年6月19日 記 】
実に内容の濃い、しかも時宜にかなった-今まさに必要な知恵と方向性を与えてくれる本である。
著者は現在アメリカで活躍する暗号研究者でありコンピュータ・セキュリティーの権威でもある。本書は、ビッグデータに絡んだ《大量監視》を《政府や国家からの監視》と《民間企業からの大量データ収集》の両面から、その問題点を探っている。
「ビッグデータ」「人工知能」「ディープラーニング」といった用語と共に、科学の果てしない進歩が逆に人間の存在を脅かしかねない事態を作り出そうとしているが、一方政治の世界では、「大量盗聴社会」の出現により、個々人の「プライバシー」が脅かされ、自由な世界がせばめられ、民主主義の土台が崩されようとしている。
特に、『共謀罪法案』が《成立》してしまった現在の日本では、この本に書かれている警告・提案は重要で、くみ取るべき指摘が沢山ある。内容は、主にアメリカのことを念頭にかかれているが、著者が言うように「インターネットには国境がない」。ましてや日本とアメリカの仲である。アメリカでやられていることが日本では《関係ない》ということは有りえない。
「ビッグデータ」「大量盗聴」がらみで、もう一冊別の本を同時に読んだが、こちらはフランスの著書だ。共通の話題も多いが、前者の方が「セキュリティー」や「盗聴」に関してより専門的であり、現実社会に与える政治的影響力に関し、圧倒的に内容豊かで示唆に富んでいて、しかも綿密で的確な内容である。
こちらの本は、著者が作家であったりジャーナリストであるから、民間企業の考える「人工知能が果てしなく発展した将来社会の想像的世界」に関する内容が多い。
『ビッグデータという独裁者』
2017年3月 筑摩書房刊
この書籍については、別の機会にふれることにして、今回は『超監視社会』の方を見ていくことにする。
内容構成は以下のようになっている。
『共謀罪法』が《テロ対策》であるとか《国際条約を結ぶために不可欠の法案である》とかいうのはとんでもないウソであることは明白である。『特定秘密保護法』『安保関連法案』などを数の力で次からつぎへと成立させていった経過をみれば、【戦争できる国造り】に着々と駒を進めているのがよくわかる。そして今度は、それに抵抗しようとする【反対勢力を抑え込み、黙らせる】ことである。
『共謀罪法』が危険なわけは、その罪とする範囲の曖昧性にあるという。まともに答えられない《情けない大臣》の口からも漏れるように、警察の匙加減1つで【一般市民も罪に問われる危険性】があるのだ。法案を考えた人の知恵が回らないからそうなったのではない。最初からそれを意図しているのだ。戦前の『治安維持法』と同じだといわれる所以である。《差しさわりのない文言》で法律を成立させた後、《大きく広く取り締まろう》という魂胆だ。
『共謀罪』の恐ろしいところは、計画段階で犯罪とみなし処罰の対象になることである。平たく言えば《考えただけで罰せられる》ということだ。《計画》あるいは《考えていたこと》を証明するには《盗聴》や《監視》が必要である。だから、《大量監視社会》が不可欠なのである。
【大量盗聴】も【共謀罪】も自分にはあまり関係ないと思っている人、あるいは《監視》や《盗聴》を正当化しようとする立場の人の言い分は、は次のようである。
【隠すことがなければ、何も畏れることはない】
しかし、果たしてそうだろうか。確かに今の生活にインターネットは不可欠であるし、それ無しで済ますことは出来ない。科学や技術の進歩が人間に多くの恩恵を授けてくれたのも間違いない。だからといって、このままでいい野だろうか。
本書を見れば、そうした疑問の先が見えてくる。上のような考えが、【間違いで、的外れ】であることがよく分かる。
詳しくは、次回に回すことにして、2、3箇所だけ引用しておこう。
「・・・私たちが「無料」を好むこと、もう一つは「便利」を好むことだ。私たちが好むといっても・・・そうしたサービスを用いないという
選択肢は事実上ない。監視を受け入れるか、サービスを利用しないかの二者択一になっている。」(p-71)
「政府に監視されているかもしれないという意識は、結社の自由と表現の自由を委縮させる。しかも政府が個人のプライバシーを暴くようなデ
ータを無制限に収集できるようになれば、その力は乱用されやすい。」(p-141)
「網羅的監視がまかり通れば、警察の意向次第で誰でも法律違反を問われる恐れがある。」(p-154)
最近の新聞を見ていると、《悪者の森友学園》が逆にかわいそうにに思えるくらい、安倍首相とその取り巻き連中の態度は、桁外れに極悪非道である。
加計問題でも、《知らぬ存ぜぬで》まともに答えようとせず、『共謀罪』だけを異常な手続きで先に通してしまい、国会を閉めてしまった。「国会の私物化」というが、そんな甘いものではない。《独裁への道》そのものである。国連の特別報告者の書簡を無視するにとどまらず門前払いするその姿は、第二次世界大戦前夜、松岡洋祐が世界に背を向けて国際連盟を脱退する道を選んだ姿と重なる。
こんな国民をバカにしきって危険極まりない政府には国会から去ってもらわなければならない。
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