この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

小説『共震』-震災のルポとして生々しい描写、社会の断面を鋭くえぐる批評としても、ミステリー小説としても《共震》する感動作!

2016-12-09 10:34:40 | 最近読んだ本・感想
                                   【 相場英雄著  2013年、小学館刊 】
          【 2016年12月6日 】

 相場英雄はそれまで名前も知らなかったが、夏に読んだ『ガラパゴス』が圧倒的に良くて、いっぺんに気に入ってしまった。『震える牛』もさっそく読んで、この作家のアイデンティティ・作家の個性が分かったような気がした。そして今回の『共震』、思わず身震いしてしまった。

 多読家の妻は図書館から毎週のように本を借りて、主に小説を読んでいるので、小説をあまり読まない私と読書傾向が重なることは少ないが、今回は「この本良かった。」と2週間の借用期間を1週間以上残して薦めてくれた。《読み中》の本がほかに2〜3冊あったのではじめのうちは《合い間》に気分転換のつもりで読んでいて3、4日経ったが、途中から嵌まってしまった。
 明日返却しなけらばならないという休日の午後、残りの半分を一気に読み終えた。


 この本の魅力については、巻末の『解説』で石井光太氏が的確に書いてくれている。
 
  「 相場は通信社の元記者という肩書を持つ一方で、ベストセラーを出してきた小説家だ。ジャー
   ナリストとしての発言をしつづける一方で、いつか小説家・相場英雄として震災に向き合わなけ
   ればならなおいという思いを抱くようになるのは必然だった。・・・」
  
  「 これまで、相場はミステリの主峰を使って社会の暗黒面を暴く作品を著してきたし、今回も大
   きな構造としては同じだ。だが、他の著作と大きく異なるのは、ミステリの方程式を破らんばか
   りに被災地の現実を描写している点だろう。一般的なミステリではあらゆるシーンを謎解きの伏
   線トシテ書くことで複雑化、かつ娯楽化しながらラストに向けて一本の筋書を作り上げる。だが、
   本書には伏線以外の「私情」や「被災地の現状」がふんだんに盛り込まれており、まるで被災地
   のルポルタージュを読んでいるかのような錯覚に陥るほどだ。」


 その通りだ。単なる小説家としてだけでなく、記者の鋭い《眼》がなければかけない場面が多々見られる。相場英雄の経歴を知ってなるほど「そうなのか」と思った。

 この『解説』、他にも合点のいく解説が多く、示唆に富んでいる以上に【頼まれたから書いた】ものではない、深い理解と信頼に基づく【本物の友情】を感じるものになっている。


      ○       ○       ○


 「東北大震災」-「東日本大震災」はあまりにも衝撃が多かった。家のDVDレコーダーには、地震発生直後のニュースで流された『津波に襲われる街の様子の映像』が、再生されることなく今もそのまま残っている。《恐い》という以上に《安易に近づけない》という感情がある。

 被災した人々の気持ちが、報道、その他によって、ようやく少しづつ分るようになって、それらと向き合う自分の気持ちの準備もできてきた。

 最近見たテレビドラマの『5年目のひとり』を見てもそうだったが、「まだまだ終わっていない。これからだ。」という気が改められて感じられた。




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