2016年2月13日
長野県、菅平高原、根子岳、アイスクライミング&山スキー
with、アイカワさん
4年前、今回のラインをカミサンと踏破したが、頂上が欠けていた。大谷不動のアイスクライミングルートをゲレンデから、山ルートへと昇華させるため再訪した。
話は去年の夏に遡る。海外遡行同人の総会で、アイカワさんに複合系山行の話しをすると盛り上がった。この手の山行をやる人は、なかなか居ないので貴重だ。いつもの、お調子者モードで「来年やりましょう」と軽いノリのヨッパライはそこらじゅうで約束をしていた。年が明けて「そろそろどうですかね」みたいなメールが来る。「ちょうどメールしようと思ってたんですよ」と、山行は即決する。今回は訓練も兼ねているため、装備は真っ当だ。スキーセット一式には当然、ビーコン、スコップ、プローブも入っている。クライミングはロープ2本にスクリュー多めに10本、アックスはリュ―シュレス。複合系の山行は、クライミング道具一式持って滑れるのか?、スキー道具一式持って登れるのか?、みたいなところが核心になる。
踵と甲のアダプター アダプター装着
山行の一週間前、兼用靴のソールが経年劣化で剥がれ、修理出しとなったため、紐靴(スカルパフレネイ)でのスキーとなる。深雪だと真っ当に滑れないのでアダプターを装着する。踵部分は旧型ファンドライブのアウター、足の甲部分はスキーベンチャーのアダプター、これを固定バンドで締めるとかなりマシになる。性能的にはプラブーツと兼用靴の中間くらいか。
林道を滑るアイカワさん ロットの滝
当日は、待ち合わせ場所にお互い遅い到着となり、睡眠時間は私が3時間、アイカワさんは1.5時間と寝不足。7時10分前に出発、スキー場の一番下を緩やかに登り、林道に入る。少し行くとすぐに二俣、緩く足跡が無い右俣に入りかなり緩い林道をクロカン風に滑っていく。積雪は50cmほどで、気温はかなり高く雪が重く滑りが悪い。途中で大谷不動の左岸壁の左と中央が見えるが、かなり細い。今年は雪も、氷も不作のようである。出発から1時間20分でロットの滝下に到着。滝直下までスキーを一度も脱がず入れた。ここは状態(積雪、足跡)が良ければスキーアプローチに向いている。
リードの準備をするフージマ F1落ち口のアイカワさん
「前に来たときは確か6本くらいで登ったな~」という記憶があったので、多めにスクリュー9本持ってリードし始める。氷は高い気温で柔らかい、1本爪アイゼンでは氷を切りそうで少し恐い。スキー一式を背負っている事もあり、必要以上にアックスをキメてしまい抜けずに苦労する。出だし、ビビりーで2~3m間隔でとっていたら、下三分の一で半分のスクリューを使ってしまった。まずいな~、という事で中間からは2次曲線的にランナウトしてスクリューを節約するが、どうも足りなさそうだ。最後の垂直下で滝修行のように滴る水に打たれビショ濡れになりながら、荷物だけA0のフリーで登る。これは、上のスクリューをキメたらクライムダウンして下のスクリューと荷物をとりに行くという具合だ。ん~、なんかカムが無くなってきた時のクラッククライミングに似ているな~。かなり時間をかけてリードしてしまったが、フォローのアイカワさんが早く登り、取り戻してくれた。
今回アイカワさんは、たぶん国内初となるテレマークブーツでの本格的なアイスクライミングをしたのではないだろうか。ぶっつけ本番で、うまいもんである。この時ちょうど、まによん、のーるが来て写真を撮ってくれた。感謝である。
F2右俣をリードするアイカワさん
F1の落ち口から、40mほど先にあるF2は二俣になっており、右俣をそのままつるべでアイカワさんがリードする。そのままコンテに移行し、F2落ち口から50mほど先を谷底から左岸を登っていく。谷の側面を60mほど登れば安全地帯の枝尾根上にでる。そこから大雪原までは距離にして100mもない。
雪原下部は林間コースならぬ、笹間コースか 根子岳頂上のアイカワさん
低気圧が来ているため強風で、晴れ間と飛ぶ雲の大雪原の向こうには、北アルプスが連綿と続き、鈍く灰色に光っている。逆方向の山頂方面は、一面ガスの中で上に行くほど風が強く、途中で帰ろうと思ったほどだ。風速20~30mは出ていた感じだった。
ショートスキーのためビミョーにもぐり、テレマークにはとてもついて行けない。かなり疲れて頂上に到着。
アイカワさんのテレマークスキー、うまいです ガンガンいきます
いよいよ、お楽しみのスキーです。アイカワさんは華麗にテレマークターンを刻んでいく。私は荷物背負っての紐靴ショートスキーだったので、後半にいくほど足にキテ、くさった雪にトップから引っ掛かりヘッドスライディング。かなり息が上がりヘロヘロになりました。やはり、ショートは残雪期用ですな。17時前にスタート地点に到着。ちょうど10時間行動でした。私がバテずにクライミングも荷揚げ等併用していたら7~8時間行動で行けたでしょう。
今回のアイス&スキーですが、アイスはⅤ級程度で難しくなく、スキー部分も初級で簡単です。山頂を踏むアイス&スキーの練習には持って来いの場所ですが、雪崩には要注意です。F1上の谷間部分は150m(谷底90m、側面60m)程と短いですが、晴天時や悪天時、高温時、悪い積雪状態時は、入渓しない方が無難です。
朝~昼にかけて太陽が当たると、F1落ち口上のスグ右岸側からスノーシャワーが集まってきます。大きいものは雪崩に近い事もあります。落ち口のビレイ点もこのような時は下地が安定した右岸側より左岸側が無難です。
あとF2右俣の落ち口上のスグ左岸側(植生が無く40~50度くらい)も良く雪崩ます。傾斜と下地が雪崩れやすい形状です。F2下のスカート近くからF2上20mくらいの間は、同時に2人以上いない方が良いです。
F2左俣からは、大きな雪崩がでる事があり、距離も長いので入らない方が無難。という具合に、短いながらも安全ではないので状態が良い時に入っても、このF1上から枝尾根までの谷間部分はスピーディーな行動が求められます。やはり、冬の谷間というのは危険です。いろいろ見極めなければなりません。
ここでの一番の核心は、この谷間部分の好状態時を掴むというチャンス力でしょうか。ま~、スキーに関わらず冬壁でも何でも、チャンス物の核心は、やはりそのチャンスにめぐり会えるかどうかという事なのかもしれません。ただ、これも継続してやっていれば、そのチャンスを掴む確率は当然上がる。でもリスクは0にはならない、日々勉強と経験を積み重ねないとな~