沢登りカヌーイスト

カヌー+沢登り=原始の渓へのフリー切符

オツルミズ沢

2012年10月10日 | 沢登り
2012年10月6~7日 

越後駒ケ岳、水無川、オツルミズ沢
with、まによん、のーる、ブルースリー

10月6日
 朝、5時過ぎに駐車場発。林道を少し歩くと、オツルミズ沢が交わる。アプローチ至便で、林道からすぐに滝が立ち上がっている。最初の小滝はヌメヌメで悪いが、水際を直登する。それは、ここの名が”落ちる水”とあるように、沢全体が一つの滝のような存在のため、なるべくトラッドで直登していこうと決めていたからだ。我々が、ヌメヌメ、ジャブジャブやってるすぐ上を巻き、抜いて行く単独行者。こちらのわざわざ感を実感するが、ポリシーなのでいたしかたない。
 最初の大滝、カグラ滝(80m)は傾斜もなく簡単だが、節理が少ない上越的な滝だ。その上は水が冷たい狭いゴルジュで、途中、谷を塞ぐブロックを巻く。四人ともゴルジュ内でクライミングシューズに履き替え、沢靴とは別物のグリップ力に喜ぶ。特にフェルトのブルースは感激して、沢の最後まで履いていた。
 サナギ滝(200m)は、下部を右岸から巻き右上して行く。2ピッチくらい右上した後、なおも水流を目指し右上、3ピッチ目で水流を少し登り、最終ピッチは垂直の凹角を登る。支点は多かったが、当然使わず自分でセットした。この上も、滝とゴルジュが連続して、登ったり泳いだりと、沢の最初から滝が途切れる事無く大滝に到着。
 大滝(80m)は、右岸を4人でスタスタ登っていく。ロープを付けていないので、縦に並ばず、横にずれて待ちながら登って欲しいのだが、皆一列で登っている。上が落ちたら、ボーリング状態なので注意する。皆イレブンくらいは登れるので、登りは安定しているが、注意を怠ってはいけない。
 大滝の落ち口周辺は泊まり場になりそうだったが、13時過ぎと、まだ時間も早いので先に行く。滝を幾つか越して行くと、大きな雪渓がでてきたので、少し戻って泊まりとする。沢中には小さな河原状があるが、2人くらいしか居れなさそう。細い枝沢状に堆積した流木上を整地してタープを張る。夜、雨が降ってきて強くなるようなら、上から流木が降ってくるから逃げなきゃ、と思っていたが少しの雨で良かった。この沢は全般的にみて、良い泊まり場はないようだ。

10月7日
 朝6時半出発。滝を三つくらい登って前日の雪渓へ、200m弱くらい残っていて概ね安定している。右岸から雪渓上に乗り、各人30m間隔くらいで歩いていく。沢はこの雪渓部分で左、右とクランク状に屈曲している。この左右のクランク部分のあいだから、左岸の急な草付ボロ土壁を登って小さく高巻く。
 このあと雪渓は無く、開けた沢に10m前後の滝が連続し、フラットソールで全て直登していく。一つだけ、のっぺりしていて少し難しかったが、他は概ね節理があり、好フリクションで快適に登れた。ナメ滝がでてくると源頭の様相で、沢の側面は緩やかな草原状になり開放的な癒し系の沢に変貌する。ほどなくして駒の小屋に飛び出し、ガスがかかる越後駒ケ岳へ。頂上には11時、展望は無かったが、頂上を踏む沢登りはやはりいい。下山路はグシガハナ経由で、雨の急坂をたまに滑りながら15時には下山した。
 今回、トラッドでの全滝直登を目指したが、トラッドはでき、全滝直登はできなかった。直登できなかった部分は、下部2カ所ブロックでの高巻き、サナギ滝下部右岸高巻き、雪渓上高巻き、など5カ所ほどどだ。やはり雪渓があると全滝直登は難しい。あとサナギ滝下部の直登も難しそうだ。全滝直登はできなかったが、9割方の滝をフリーでグイグイ直登するのは、全体が一つの大きな滝を駆け上がるようで爽快だった。


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称名滝

2012年10月01日 | 大滝登攀
2012年9月29~30日
北アルプス、立山、称名川、称名滝

 9月の月末は、なめちゃんと4日間くらいの日程で最初に称名滝を登り、その後称名廊下を偵察に行く予定だった。しかし、フーが仕事の都合で、普通に土日だけの休みとなってしまう。予定を変更して、なめちゃんは一人で称名滝をやり、その後フーが合流して称名廊下をやろうという話なった。
 そして、なめちゃんはソロで4段目を登り降りてきた。装備が足りず少しなめていたとのことだった。降りてきた当初は予定通り廊下だったが、メールのやり取りで何となく滝に決まったのがフーの出発前日だった。なめちゃんと行く時はいつもそうだが現地で装備を合わせて30分くらいでパッキングする。今回はいつもと違い、メールで装備のやりとりをして、不足分のギアをフーが持参した。それでもいつも通り、二人の装備を突き合わせての現地セレクトなのでギアは多めに持って行く。
 
9月29日、6時登攀開始。晴れのち曇り、夜時々雨。

1P目、フォローのなめちゃん。取り付きからあったオレンジ色の染み出しが印象的だった。鉱泉系染み出しか?

四段目
1P、35m、Ⅳ、フー
明茶色の染み出し部分でビレイ、その右のゆるやかに膨らんだカンテ状のスラブからスタート。数m登ると草付きクラックとなり、これをゆるやかに右上する、最上部はランぺ状クラックで簡単。目指すは2P目の1本キレイに走る右上クラック。
ルートの取り付き地点は、出来るだけ右の登れそうなライン。1P目は一見どこでも登れそうな右上節理の壁だが、この右端のラインでない左側だと上に行って行き詰まる事になる。ランナーはハーケン主体だがカムもいくつか決まる。


2P目、リードのフー。写真だとねて見えるが実は垂直近い。

2P、30m、Ⅵ、フー
1本見事に走る右上クラックだが、クラックには砂が詰まり、その周りにはまばらに厚手の苔が点在している。こんな状態のクラックをオンサイトでフリー化とは山岸さんスゴイ。なめちゃんが3日前にソロで登った時に少し掃除されているが、カムを決めた所程度なので、両手首にゴムでぶら下げたミニタワシ、ダブルアックスならぬダブルタワシで根気のフリー。クラックはフィンガーで始まり、ハンドが効く所まで行けば後はやさしい。クラックの上のフェースにはかかりの良い小エッジも多く、クラックが汚い所はこれとクラックのへりを抱え込むようなムーブで登った。砂でジャミングが利かず、ジャムとフェースムーブ半々という感じだ。なんとかノーテンで登りオンサイトできた。3日前にクリーニングしてくれたなめちゃんに感謝。このピッチのランナーはカムのみでいける。アンカーはカムとハーケン。


2P目、フォローのなめちゃん。


3P目、リードのフー。この後すぐ落ちる。

3P、30m、Ⅴ+・AA1、フー
ここをフリーで登ればオールフリー確実。右上バンドを5mくらい登り、垂壁部が始まる。垂直部分(少し前傾してる)は10mくらいであろうか。垂壁基部にハーケン3枚かため取りして、スタート直後まだ足下くらいで左足が滑りフォール。リラックスし過ぎで、「あれっ」という感じだった。パンプも疲労も無い。新たにハーケンを打ちテンションすると、そのハーケンが抜けフォール。ちょっと落ち着こう。下の滝見台には観光客も増えてきた。もともとフリーでクライムダウンが出来る範囲内で、様子を見ながら登り、その中でランナーが決められるかどうかという事だが、この部分はハーケンが主体なので、それもかなり難しい事は分かっている。フリーでやるならランナーを回収してビレイ点からやり直さなくてはならない。フォールして緊張の糸が切れ、時間の事もあるのでエイドで行く事にする。ヒット&クライムダウンで1~2本でもいいから打ちたかった。いや、テンションまじりでもフリーのムーブを試したかった。などと未練が残る。エイドはナイフブレード8枚くらいと厚手ハーケン2枚くらい、途中マイクロカム1カ所と、抜け口にもカムが決まる。再登者が増えリスが広がったのか、小ハーケンはほとんど根もとまで決まった。AA2+との事だが、体感AA1のような気がする。
抜け口手前のまだ垂壁最上部のガバで簡易アブミをしまい再びフリーに。しかし、ここからが悪かった。上のスラブは濡れていてヌメヌメ、ハーケンもタイオフ。左上ラインに入り岩が乾くとトラバースのランナウト、ロープが重くフットホールドが外傾しているので濡れたクライミングシューズでは緊張する。
最初の3ピッチを連続してリードさせてくれたなめちゃんに感謝。4ピッチ目からつるべで登る。

4P、60m、Ⅲ+、なめちゃん
節理のサイズが多彩で、岩がボコボコしたスラブ。なめちゃんが駆け上がる。カム、ハーケンとも色々使える。
4段目の終了地点は広いバンド状テラス。テラスで残置ハーケンを1枚回収する。


5P目、リードのフー

3段目
5P、45m、Ⅳ+、フー
4段目の落ち口横から1段上のテラスにあがり登攀開始。左手前のカンテ状を登り、草付き下の壁を右上トラバース。1本目に初めて#3を使用。フォローのためになるべくこまめにランナーを取るがそれでも5m間隔ぐらいか。荷物が大きいとフォローの方が恐い所だ。トラバース後、カンテをまたいで水流の左を登る。最後のほうは水流の左際を少し登り、その上の乾いた壁中にある顕著なテラスでビレイ。


5P目、アンカー直下のなめちゃん。ここはサラサラと穏やかな水流クライムが楽しめる。


6P目、リードのなめちゃん。さすが日本一、水流のスケールがでかい。水流の端とはいえ爆風で持って行かれそう。よくオールフリーでいった、でもこの上がもっと悪い。

6P、60m、Ⅴ、なめちゃん
水流と平行に左の側壁を30m登り、右にトラバースする。そこから水流の左端を暴流クライム、その上は再度左壁に移り直上、最後は落ち口に向かい右トラバース。この落ち口に向かい右トラバースする所が悪い。ボロボロで砂砂、数個の浮石が投げられ水流の中をすごい速さで落ちていく。なめちゃん、上に右に行ったり来たり40分くらい挌闘して突破した。


7P目、フォローのなめちゃん。

7P、20m、Ⅲ、フー
落ち口わきのバンドとスラブを登り2~3段目間の河原に立つ。

岩小屋は下地が頭大の岩がゴロゴロだったので、そのすぐ上の大岩間の平らな砂地で寝る。
ツエルトを大岩間に張り快適な空間を確保する。夜は焚火に、五目御飯、味噌汁、焼酎少々、つまみ、とこのようなクライミングにしては豪勢であった。しかし、滝の飛沫で湿度100%
の世界では焚火は人の手が離れるとすぐ消えてしまう。


8P目、リードのなめちゃん。氷食地形か雪食地形か? ゆるやかなU字溝。9P目は右上して落口のすぐ脇にでる。

9/30、4時過ぎ起床、6:15、2段目登攀開始、曇り時々晴れ、14時から雨
2段目
8P、30m、Ⅳ+、なめちゃん 
釜わきのスラブを右上後、バンドを左上、再度右上してアンカーポイント。
登攀ラインがかなりジグザグなので、下部のランナースリングは全て120~180以上で取るもロープはドラッグぎみ。

9P、60m、Ⅴ-、フー
見た目より節理がある。ラインは左端のアンカーポイントから直上後右にトラバースだと思うが、フーはいきなり右トラバースして、間違いに気づき左上、その後右上とジグザグにラインをとり、ランナーをかなり長くとるもドラッグ気味。上部、凹角への右トラバースは濡れたスラブでいやらしい上に重いロープ。ロープを引っ張りながら、たるませた状態で登る。50m以上ロープをのばした状態でこのピッチ核心の最上部凹角へ。垂直だがガバで、このあたりからカムが使えるようになる。
すごい重さのロープを引きながら60mいっぱいで、2段目落ち口のテラスへ。
ここは1枚岩の真っ平らなテラスで気持ちが良い。水量が少なく、滝の爆風も寒くない。


10P目をリードするなめちゃん。

1段目
10P、45m、Ⅴ+、なめちゃん
テラスに残置ハーケンがあったので抜いておく。
左右2本あるクラックの右を登る。出だし砂が詰まったクラックをクリーニングしてナッツがばち効き、その上の小レッジに立ちハーケン、その上はカム小、無理なくフリーで行けるラインだ。

11P、30m、Ⅲ、フー
やさしいスラブをカム3つで駆け上がる。簡単だが楽しい。ウイニングラン的なピッチ。

称名滝落ち口の水量は少ない、なめちゃんが落ち口を飛び渡り、左岸を軽快に称名廊下F1の落ち口までへつっていく。水量の少ない時期、称名廊下の入り口の感じからすると、なんだか行けそうだと勘違いしてしまう。ここから長さ2000m、両側壁200~300mの日本最大最難のゴルジュがはじまる。入り口からは見えない中間部からが本番らしい。

今回我々が登ったラインは、ワンプッシュでは初登の木下Pと同じで、大西(ソロ)、山登魂P、など、その他数パーティーに登られているようである。

このルートは4~5Pで少し草付きがあるがほぼ100%岩で、すっきりとしたラインだ。しかもロープスケール約400m中エイドは3P目の10数mだけ。もちろんルート上には残置は一切無い(今回残置2本回収)。
自分の目でラインを決め、自分でランナーをきめ、自分でアンカーをきめる。
本物のアルパインクライミング(大滝だけど)を、これ程の長さ、ロケーションで出来るのは岩、沢、大滝、各ジャンルを合わせても日本でトップクラスの素晴らしいルートである。

この称名滝のライン中、唯一残った10数mのエイドセクションのフリー化、可能性はあるがかなり難しそうである。それは、支点がハーケン主体で、残置が許されないルートだから。でもいつかはフリーで登られるような気がします。
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