パフィンの生態

映画と美術好きなパフィンの感想を記録。香港映画が一番好き!

クローサー

2005年05月26日 13時09分21秒 | 映画全般
「卒業」のマイク・ニコルズ監督が大ヒットした劇の原作者に脚本を依頼して
仕上げた上質な恋愛映画。配役は豪華だが、シットリ落ち着いた物語。

シニカルな新聞記者ダン(ジュード・ロウ)はロンドンの街角で
怪我をしたアリス(ナタリー・ポートマン)と出逢い暮らし始める。
1年後、小説を出版したダンは写真家アンナ(ジュリア・ロバーツ)に
一目惚れするが、若い恋人アリスの気持ちを察したアンナに拒まれる。
(この二人のキスシーン美しい!恋は選んでするものじゃない)

腹いせにネット上でアンナになりすまし、皮膚科医ラリーとのデートを仕組むが、
二人は結ばれた。一方、アンナに気持ちが移ったダンの家をアリスは出る。

4人の時間が交差する様子を、やや芝居がかった台詞と演出で綴った作品。
男性が見ると痛い気持ちになるのではないか。女性にとっては、正直で
自由奔放なストリッパーのアリスと、社会的地位に恵まれつつ孤独をかかえる
バツ一女性アンナの対比が面白く、自分と重ねてしまった。(境遇は違うが)

若い頃はアリスやダンのように潔癖で不安定。でも、35歳を過ぎると
男女関係を維持するためには嘘や妥協が必要だと理解するようになる。
恋は大人をも幼く弱い動物にしてしまうなぁ。
恋愛で胸を痛めたり、逃避したりした経験をもつ人にお奨め。

冒頭、髪を赤く染めたナタリー・ポートマンが暗いロンドンの街を歩き、
映画の終りにはニューヨークの街を歩くのが印象的だ。
若く自分の気持ちに忠実な彼女の台詞が映画のスパイスとなっている。
アンナの写真についてのコメントなど鋭い!

セックスに関してのきわどい台詞が多いわりに露出は
ストリッパーをしているナタリーの大胆ポーズぐらい。
むしろ水族館やギャラリー、ダンとアンナの個性を象徴する部屋など
画面の細部が美しく、シャンペンを一杯だけ飲んだような余韻

ゴッホ展 国立近代美術館

2005年05月22日 00時46分46秒 | 美術、音楽
オランダへ行く予定はないので、国立近代美術館へ。22日で終りのせいで、
1時間待ちと駅に「警告」が張り出してあった。

実際、10列ぐらい美術館の外に並ばないと入場できなくて、30分以上かかった。
一人で来ていた上品な奥様に「素敵な指輪ですね。オパールですか?」と話しかけたら、
来月デンマーク、ノルウェイ、スウェーデンと旅行するとのこと。お互いの欧州ばなしを
していたので退屈せず幸運。同じレンガの建物でも色が違うと言われ、「シエナ」の
美しい町並みを思い出す。

作品はゴッホ以外の画家のもあり、シニャックの2枚が良かった!!
ゴッホの作品はアルルの「黄色い家」「夜のカフェテラス」が好きだった。

5年ほど前、上野で「オルセー美術館展」が開かれた時、あまり好きではなかったゴッホ
(=ひまわり)のイメージを覆した一枚の絵が今も忘れられない。

「星降るアルル」と訳してあったかな。橋の手前に恋人のかげ、空には無数の星が輝き、
青、紫、黄、白・・夜の静謐な美しさを見事に描いている作品に魅せられた。
あの絵を見たから、今日の行列に耐えられたわけで、出逢いとは面白い。

そうそう、常設展の階はすいていたが、山本容子さんの連作が見ごたえあった。
15年ほど前、「シンデレラの挿絵展」を小さなギャラリーで観たときから
洒脱なデザインと創作意欲に感心していた人だ。直島で立体アートに親しんだとは
いっても、やはり草間やよいより好き。

鳥インフルエンザ

2005年05月22日 00時30分18秒 | ひとりごと
ベトナム旅行に申し込んだ翌日、新聞で読んだ記事。
「ベトナムで、人から感染したと見られる鳥インフルエンザの患者が一名」・・・
嫌な予感は的中し、今日、代理店から「市場への出入りは控えてください」と
注意書きが届く。え~!市場は一番楽しみにしていたのにー」

今の段階ではホーチミン市民と書かれていないので、旅行を断念する気分には
なれない。市場内部の「アヒルなど動物モチーフのレリーフ」を撮影したかったので
市場に入れないのは痛いが、撮影目的の旅ではない。予約はそのままにしておき、
万が一、SARS時の香港のような状況になったら、予約金は諦めて、自分の身の
安全を優先するつもり。

鳥インフルエンザに罹って帰国し、このマンションが隔離されたら
130世帯に迷惑をかけることになるから、リスクはおかせない。
これ以上患者が発見されないことを祈るだけ。

キングダム・オブ・ヘブン

2005年05月16日 22時48分19秒 | 映画全般
アカデミー賞作品賞「グラディエーター」より個人的には好み。配役の上手さ、
絵の美しさ、スリリングな展開はリドリー・スコット監督ならではなので
娯楽作品として楽しめると思うが、戦闘シーンが臨場感たっぷりなので
女性の観客は覚悟した方がいい。世界史が苦手な人も退屈するかも。

なぜ「グラディエーター」より好きになったか。
グラディエーターが個人の復讐の成就で終わっているのに対して、
「キングダム・オブ・ヘブン」は十字軍とイスラム軍の衝突を避けようと努力した
賢者二人、エルサレム王(キリスト教徒)とサラディン(イスラム教徒)を登場させ、
宗教という大義の下の戦争より、家族、兵士、民衆への愛情を優先させることの大切さを
訴えた映画であると感じたからです。歴史から学ばないのは虚しいです。

それはテンプル騎士団がキャラバンを襲撃し、イスラム軍を挑発したために、
サラディンが大軍を率いてきた際、瀕死のエルサレム王が最後の力を振り絞り、
じきじきに出向いて和睦するシーンが象徴している。サラディンも軍の安全を優先し
和睦に応じたのだ。二人は実在の人物。エルサレムを奪還するイギリスの獅子王も
映画のラストに少し顔を見せています。

成り行きから騎士になったバリアンですが、賢明な王や騎士を尊敬し、
父の最期の言葉を自分の心の言葉として理解し、勇敢な騎士となり
「真実と思うこと」を実行したのではないでしょうか。遺伝子のチカラ。

やや硬い映画となり、「グラディエーター」のように痛快ではないと失望する方も
いるかもしれませんが、十字軍を美化せず、エルサレムにイスラム軍が入城した時、
サラディンが倒れた十字架を起こすシーンを挿入した監督に敬意を払います。
善い騎士の行動や台詞に監督の理想とする指導者のあり方を感じました。

雪の舞うフランスより、太陽が降り注ぐ砂漠の領土でバリアンが再生していく様子や、
バリアンが愛する姫の刺繍で飾られた服やショール、衣装の配色の見事さから、
監督のオリエントの美への憧憬も感じます。オリエント風の洋服やアクセサリーが
流行しているし、キリスト教徒とイスラム教徒の共存が望まれているのでは?

「アレキサンダー」が不評だったように、イスラム教徒に敬意を払った映画に
大きな支持は得られないかもしれませんが、オーランド・ブルームの一途な演技は
彼にとって大きな一歩になるでしょう。

インタビューを聞いて、この映画の主人公同様、光に向かって前向きに歩く人という
印象を受けます。次回作は現代の青年の役とのこと、楽しみです。
シビラを演じたエヴァ・グリーンはフランス人。独特の存在感をもった女性でした。
バリアンの父にリーアム・ニーセン、その親友の騎士にジェレミー・アイアンズ‥
他にも驚くような配役の妙です。

Shall we Dance?

2005年05月05日 21時36分21秒 | 映画全般
予告編で流れるピーター・ガブリエルの歌声と窓辺に佇むジェニファー・ロペスに
心をひかれて観た。原作となった周防監督の作品を観ていなかったので、
比較することなく笑ったり、応援したり、映画にすんなり感情移入できたのかも。

ジェニファー・ロペスはダンスの名人という設定なのでダンスシーンが見せ場となるが、
主人公ジョンと心を通わせた夜に練習場で踊るシーンなど迫力があった。パーティの夜の
黄色のドレスは露出度満点!色々な意味で彼女の魅力を存分に味わうことができ満足。

ジョン(リチャード・ギア)とビヴァリー(スーザン・サランドン)夫婦の雰囲気は
日本版とは違うらしい。ジョンの浮気を疑って探偵に調査依頼したものの、ダンス教室に
通っているだけだと判明した時点で夫のプライバシーを尊重する点に感心した。
デパートのディスプレイ責任者という自分の世界を持っている強みだろう。原作では
どんな夫婦として描かれていたのか、明日、テレビの放送で確認したい。

夫婦が結婚生活を見直し、絆を一層深めるというハリウッド版の前向きなラストは
好感がもてた。「皆がダンスを好きになって幸せ」って単純なようだけれど、
音楽やダンスには心を揺さぶり、心を結びつけるチカラがあると思うから。

配役は原作に近いと書いてあるが、笑いと希望を与えてくれるリンク(スタンリー・トゥッチ)、ボビー(リサ・アン・ウォルター)以外の人物設定に注目して日本版を観てみたい。
入門クラスの二人の男友達が好きだったので。

音楽が大変センスが良かった。

追記:日本版をテレビで観ました。ダンスの迫力と音楽の選曲、撮影が
リメイク版の方が好みでした。ラテン系のダンスが印象的でしたからね~。
ジェニファー・ロペスの起用が映画の雰囲気を変えていたと思います。

同時に、スーザン・サランドンが会場から飛び出すシーン、リンクが
職場で笑いものにされた時、女性の手をとりダンスをしてみせたシーンは
いかにもアメリカ人の「明快さとユーモア」を感じ、好感をもちました。
バラの花も嫌味にならないのは文化の違いでしょうか(^^