明日の風

明日は明日の風が吹く。気楽にいきましょう!

カバノー裁判官が加わった合衆国最高裁

2018-10-18 23:42:39 | 法・裁判

歴史的な僅差(2票差)になったが、疑惑があったカバノー裁判官の指名に上院が同意した。似たような例として、1991年のトーマス裁判官のケースがある。トーマスについては、52-48の4票差だった。
さて、最高裁の勢力図は、はっきり保守派優位になった。ただ、同性婚や人工妊娠中絶を支持する判例が次々に覆されるだろうという論調には疑問がある。アメリカ法はそんないい加減なものじゃないよというのがアメリカ法研究者の直感だろう。
まず、同性婚や中絶を最高裁が違憲とするだろうという見方は完全な誤解だ。最高裁で争われてきたのは、両者をどうするかを決めるのは最高裁か州議会かということだった。
だから、かりに現在の判例が保守派の裁判官によって全面的に覆されても、問題の解決は州議会に委ねられるということだ。
カバノー裁判官の前任者・ケネディーが長く最高裁のキーパースンだったので、こういう議論が出ているのだが、ではケネディーに代わるキーは誰か? ロバーツ首席裁判官だと思う。
ロバーツがわが国でも有名になったのは、オバマケアが合衆国憲法に反するかが争われた事件で、強制徴収される健康保険料を税金だとみなせば合憲というウルトラCの理屈で、オバマ政権に助け舟を出した(2012年)
保守派ではあるが、最高裁の権威を守ることに腐心する首席裁判官と感じた。同性婚にせよ中絶にせよ確立された判例を覆すには相当の理屈や説明が必要である。私は、ロバーツがそれをするとは思えない。
特に中絶は憲法上の権利(だから州は禁止できない)という判例(ロー判決)は45年前のもの。中絶が自由だったほぼ半世紀を最高裁が一片の判決でひっくり返すことはできないと思う。ちょうど、白人と黒人を別々の学校に通わせることが人種差別にあたるとしたブラウン判決(1954年)を変更することが不可能なように。
もちろん、カバノーの最高裁入りで、何も変わらないだろうという意味ではない。現在の判例は、州の規制が女性の中絶の選択への「不当な負担」なら違憲、そこまででなければ合憲とする。
州内の中絶クリニックが激減したことによって、中絶希望の女性が遠くまでドライブしなきゃならないことを「不当な負担」とみるか? 2016年の最高裁はyesと答えたが、現在の最高裁がどう判断するか、これは分からない。

同性婚についてはhttps://blog.goo.ne.jp/wewish_2012/e/ef36f496aa47c9af271638b3438b08b0
中絶についてはhttps://blog.goo.ne.jp/wewish_2012/e/ce5c36fc8dcfcd3abe55295b2ac89e6a 

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« リコー、パナソニックから金星 | トップ | 秋の大光山 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

法・裁判」カテゴリの最新記事