マラッカ海賊事件で、日本船籍のタグボート「韋駄天(いだてん)」が襲撃され、井上信男船長(56)ら3人が誘拐された当時の状況が、駐ペナン日本総領事や乗組員の証言から15日、明らかになった。
それによると、14日午後、漁船のような船が韋駄天に接近した。「襲撃船には漁網などがあり、漁船にしか見えなかった」(乗組員)が、船内にはロケット砲や銃などで武装した海賊10人以上が乗っていた。
海賊らは突然、船を韋駄天に横付け。銃などを乱射し、韋駄天の船体に5カ所の弾痕が残った。乗り込んできた海賊らに「激しい銃撃を受け、完全に無抵抗だった」と乗組員。
歯向かうこともできず、乗組員全員は即座に手を上げた。海賊はいずれもTシャツに長ズボン、はだしのまま。銃を抱え「キャプテン、キャプテン」と繰り返した。
井上船長が応対すると「マネー」と金を要求。船長から金を奪うと、持っていた銃の先端で方向を指し示しながら船長を歩かせ、自分たちの船に連れ去った。同様に黒田俊司機関長(50)とフィリピン人のエドガルド・サダン3等機関士(41)も船に乗せ、インドネシア方面に逃走した。
◇
「犯人らは、あれよあれよという間に船に入り込み、船長らを連れ去っていった」「一体、何が起きたのか」。マレーシア・ペナン島沖で海賊に襲撃されたタグボート「韋駄天(いだてん)」。15日午後、同国北西部バタワースに入港した同船の船員は警察の事情聴取に、動転さめやらない様子だ。船体上部には海賊船がぶつかってきた際にできたとみられる痕跡が残っていた。
船腹に白地に赤い線の入った韋駄天は、15日正午の予定だった入港時刻を大幅に過ぎ、午後4時ごろ、えい航していたはしけ船とともに港に到着、埠頭(ふとう)から約1キロ沖合に停泊した。
上弦部には、海賊船が襲撃のため接舷した際にできたとみられる痕跡。ペンキもはがれている。だがロケット弾などによる損傷は判別できない。停泊とほぼ同時に、事情聴取のため警察の小型船が相次いで接舷し、周囲は物々しい雰囲気に包まれた。
事情聴取に同席した成宮敬人・駐ペナン総領事によると、船員は「『何が起きたのか分からない』というショック状態」。あまりの突然の犯行に「断片的なことは分かっても、全体状況がつかめない」(総領事)様子だった。事情聴取に対しても「情報が広く伝わることによって、連れ去られた3人に犯人から危害が加わることを恐れ」(同)、慎重な受け答えに終始したという。
バタワースの港湾治安当局者は、駆け付けた日本メディアに「船員は全員負傷していない。それ以上のことは分からない」と繰り返した。
(03/16 01:20)
それによると、14日午後、漁船のような船が韋駄天に接近した。「襲撃船には漁網などがあり、漁船にしか見えなかった」(乗組員)が、船内にはロケット砲や銃などで武装した海賊10人以上が乗っていた。
海賊らは突然、船を韋駄天に横付け。銃などを乱射し、韋駄天の船体に5カ所の弾痕が残った。乗り込んできた海賊らに「激しい銃撃を受け、完全に無抵抗だった」と乗組員。
歯向かうこともできず、乗組員全員は即座に手を上げた。海賊はいずれもTシャツに長ズボン、はだしのまま。銃を抱え「キャプテン、キャプテン」と繰り返した。
井上船長が応対すると「マネー」と金を要求。船長から金を奪うと、持っていた銃の先端で方向を指し示しながら船長を歩かせ、自分たちの船に連れ去った。同様に黒田俊司機関長(50)とフィリピン人のエドガルド・サダン3等機関士(41)も船に乗せ、インドネシア方面に逃走した。
◇
「犯人らは、あれよあれよという間に船に入り込み、船長らを連れ去っていった」「一体、何が起きたのか」。マレーシア・ペナン島沖で海賊に襲撃されたタグボート「韋駄天(いだてん)」。15日午後、同国北西部バタワースに入港した同船の船員は警察の事情聴取に、動転さめやらない様子だ。船体上部には海賊船がぶつかってきた際にできたとみられる痕跡が残っていた。
船腹に白地に赤い線の入った韋駄天は、15日正午の予定だった入港時刻を大幅に過ぎ、午後4時ごろ、えい航していたはしけ船とともに港に到着、埠頭(ふとう)から約1キロ沖合に停泊した。
上弦部には、海賊船が襲撃のため接舷した際にできたとみられる痕跡。ペンキもはがれている。だがロケット弾などによる損傷は判別できない。停泊とほぼ同時に、事情聴取のため警察の小型船が相次いで接舷し、周囲は物々しい雰囲気に包まれた。
事情聴取に同席した成宮敬人・駐ペナン総領事によると、船員は「『何が起きたのか分からない』というショック状態」。あまりの突然の犯行に「断片的なことは分かっても、全体状況がつかめない」(総領事)様子だった。事情聴取に対しても「情報が広く伝わることによって、連れ去られた3人に犯人から危害が加わることを恐れ」(同)、慎重な受け答えに終始したという。
バタワースの港湾治安当局者は、駆け付けた日本メディアに「船員は全員負傷していない。それ以上のことは分からない」と繰り返した。
(03/16 01:20)
政府は外務省に対策本部を設置し、マレーシア、インドネシア両国に3人の捜索などを要請するとともに情報収集を進めている。
海賊がなぜ3人を拉致したのか不明だが、身代金要求が目的だとの見方が出ている。3人の安否が心配だ。無事に解放されるよう祈りたい。
海賊は十数人が乗った小舟で近づき、いきなり銃撃を浴びせたうえで、数人がタグボートに乗り込み、現金や船舶書類を奪うとともに3人を連れ去ったという。
速度が遅く小型のタグボートは海賊のかっこうのえじきとなってしまったようだ。
無事だった乗組員の一人は「激しい銃撃を受け、完全に無抵抗だった」と語っている。極めて乱暴な犯行だ。
マラッカ海峡は海賊行為が頻発し、「魔の海峡」と呼ばれている。04年に世界で起きた海賊事件325件のうち、45件がマラッカ海峡で発生した。日本関係の船舶の04年の被害は7件だったが、日本のシーレーンの要で憂慮されていた拉致事件が起きてしまった。
マラッカ海峡は幅が狭く、マレーシアまたはインドネシアの領海だ。領海内の警備はその当事国が責任を持っている。日本は周辺国に働きかけ情報収集などで捜査のバックアップをすべきだ。
マラッカ海峡での日本船の襲撃事件といえば、99年10月に日本人が船長の貨物船アロンドラ・レインボー号(パナマ船籍)が時価13億円相当のアルミ塊を積んだまま海賊に乗っ取られ、乗組員17人は救命ボートで大海に放り出された事件が有名だ。
この事件をきっかけに日本はマラッカ海峡の海賊対策の協力を始める。海上保安庁はマレーシア、インドネシア、フィリピンなどで海賊対策会議の企画立案に携わり、巡視船を派遣しての現地での合同訓練も実施している。
昨年6月にはアジアの17の国と地域の海上警備組織のトップを東京に集め、海賊対策に加えテロ対策での連携を確認した。日本としてもマラッカ海峡の治安確保がどうしても必要である。
海賊も昨年12月のインド洋大津波によって船を破損するなどの被害を受けたと見られる。このため一時鳴りを潜めていたが、数日前にインドネシアの船会社のガスタンカーが襲われたのに続いて日本のタグボートが狙われた。
海賊が津波で被害を受け資金調達を迫られているとしたら、今後さらに活動を活発化させるのではないか心配だ。
海賊がテロ組織とかかわりがないのかどうか。テロ組織と関係があれば、国際的な大規模な捜査協力が必要である。
この地域では東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)などで海賊やテロ対策が進められつつある。
関係国による警備のさらなる強化が望まれる。
2005年3月16日 0時08分