松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

口蹄疫の殺処分が大幅遅れ 1

2010-05-12 09:47:59 | Weblog
 先月からアメリカに行っていて、やっと9日に帰国した。そして、大変なことがたくさん起きていることに愕然としている。
 
 まず、口蹄疫。
 口蹄疫の処分対象数は5月10日現在、7万6999頭に上っている。ところが、殺処分が進んでいない。終了したのは1万頭あまり。これは大変な事態だ。

 口蹄疫は発生から殺処分までの時間が感染拡大を防ぐ上で重要だ。牛や豚は、感染すると体内でウイルスが増殖し、大量に排出する。特に豚は、高濃度のウイルスをエアロゾルの状態で気道から排出する。風による伝播もありうるという。したがって、感染が分かったら、とにかく早く殺処分してウイルスの増殖、伝播を止めなければならない。24時間から48時間以内に殺処分を完了させるのが国際的な常識だそうだ。

 ところが、日本では感染が分かって4~5日たってもまだ処分が終わらず、わずか1万頭しかまだ処分できていない。
 これは極めて深刻な事態だ。この調子では、感染拡大を止められないかもしれない。
 農水省も宮崎県も、これまでにどれくらい処分できたか、数字をまとめて発表していない。個々の事例を公表しているだけだ。
 一部の心ある人たちが、宮崎県のウェブサイトで明らかになっている個々の事例の数を積算して、トータルの処分対象数と、処分完了数をはじき出し、獣医など関係者に毎日、送っている。私は、そのことを教えてもらい、処分が大幅に遅れていることにやっと気付いた。
 
 宮崎県は、日々の対応で精一杯だろうが、農水省は数字をまとめて公表するくらいはできるはずだ。だが、していない。農水省は、遅れを明らかにしたくないのでは、と勘ぐりたくなってしまう。

 遅れにはいくつかの要因があるが、最大の理由はどうも、処分した牛や豚の埋設場所を生産者が探さなければいけない事になっているためらしい。

 飼っていた牛や豚をすべて処分しなければならず衝撃を受けているところでさらに、埋設場所探し、周辺住民への説明、了解を得るまで、生産者が動かなければならないようなのだ。
 
 もちろん、県職員なども助けているに違いないが、これでは殺処分が遅々として進まないのも当たり前だ。
 なぜ、国が率先して場所探し、住民への説明等行わないのか。こういう時こそ、政治家が“政治主導”でさっさと対応し、農水省に「やれ」と命じるべきものではないか。

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17 コメント

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埋設処理の遅れについて (通りすがり)
2010-05-12 10:32:43
「24時間から48時間以内に殺処分を完了させるのが国際的な常識」とのことですが、情報では殺処分は何とか実施できているとのことです。

ただし、殺処分=埋設ではないので、「日本では感染が分かって4~5日たってもまだ処分が終わらず、わずか1万頭しかまだ処分できていない」というご指摘は、少し違うような気がいたします。

埋設処理が進んでいないのはご指摘の通りですが、決して殺処分が進んでいないわけではありません。また、感染が拡大しないよう、決して万全ではありませんが消毒作業も実施されています。

「この調子では、感染拡大を止められないかも」という危機意識は、現場で汗と涙を流している方々は誰しもお持ちで、国の支援があろうとなかろうと、皆、必死に対応されています。

ご趣旨は、農水省やら赤松大臣、民主党批判ということなのでしょうが、今、現場で汗と涙にまみれている皆さんがこの文書を読まれたら、あまりにつらいと思いますが、いかがでしょうか。
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Unknown (松永和紀です)
2010-05-12 11:08:33
私は、現場に入っている獣医さんの情報を基に書いています。
現場に入っている人たちは、殺処分の全体像を把握できないとのこと。宮崎県も農水省も、実際にどうなっているのかを明らかにしていません。だれも、全体像を提示していないのです。
そのため、一部の人たちが、宮崎県の公表状況を基に積算して、関係者に配っています。その資料を基に書きました。

通りすがりさんは、宮崎県の方でしょうか。ならばどうぞ、実情を公表してください。私は県職員から、「とんでもない事態」と聞いています。現場では多くの問題が発生していて、「なんとかやっている」とは言い難く、毎日涙を流しているような状況だそうです。

現場でだれもが必死に努力していることは、よく分かっています。だからこそ、だれかがそれを把握し、情報としてきちんと多くの人たちに伝えて行かなければならない。私は、とにかく現場の窮状を伝えたいと思っています。
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殺処分、防疫対策の現状 (beachmollusc)
2010-05-12 13:49:40
このブログでははじめまして。

都農町に隣接した日向市に住んでいます。

発生が集中している川南から都農の周辺でサルナシ類の調査を昨年から行っていて、土地勘があります。

もちろん、現在の移動制限域に入ることは避けていて、昨年GPSでマークした野生株の開花状況の確認調査はあきらめています。

県が公表したデータを元にして、10日時点で頭数で集計してグラフにしました。

http://pds.exblog.jp/pds/1/201005/10/49/e0094349_21241583.gif

その後1万頭以上の未処理が増え、処理能力が完全に圧倒されています。制限区域内の約半数を越えた殺処分予定数となっていて、作業中の達成度が分かりませんが、処分待機状態がその半数程度あるみたいです。
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Unknown (Unknown)
2010-05-12 13:58:48
宮崎県は下記のアドレスに処理状況を公表しています。

http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/nosei/chikusan/miyazakicow/h22koutei57.html
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Unknown (コンタン)
2010-05-12 15:18:59
はじめまして。
農水省・県公表資料より殺処理状況をまとめて図表を作成しています。
http://konstantin.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/2010-4081.html
よろしければご参考にしてください。
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Unknown (Unknown)
2010-05-13 14:03:51
はじめまして。

友人がパニック状態で送ってきたメールです。

以下転載-------------------------------------

今一番ありがたいのはこの現状を知ってもらうこと、世論で政府を動かすしかもう手が無いんです。
先日した仲間の輪による消毒剤の話の進捗ですが、政府の圧力がかかり、
「各県まず自分所の防疫の徹底をせよ。宮崎は農相みずから出向き全力で対応している」
との電話があったみたいです

消毒剤が圧倒的に足りません。
人手も圧倒的に足りません。
政府は“現場スタッフを国としても確保している”と発表してますが、
一昨日までの現場スタッフ350人のほとんどは県のスタッフ。
九州農政局から3人の獣医師と20人のスタッフ、追加で30人の自衛隊。
農政局の獣医師はペーパー獣医師で現場じゃまともに牛に触ることも出来ない、
追加で来た自衛隊は4日出たら2日休み実質2/3の労力。
昨日から宮崎による確保と九州各県の応援により倍の700人体勢に。
それでも殺処分対称の1割しか処分出来てません。
県も、保健所も、獣医師も、JAも、市町村も、休みなしで必死になって頑張ってます。
保健所の友人はGWどころか、発生からずっと休み無し、6~21時の重労働。爪は割れ、消毒剤で手の皮膚が爛れ…
それでも必死になって戦ってます

それでも全然処分が追い付かないんです。
今、処分対称の10万頭のうち、20日間で処分が終わったのは1万頭にも届きません。
今1日の処分頭数が千頭。毎日発症する頭数の方が圧倒的に多いんです。
感染した牛は毎日10億個、豚は5兆個のウイルスを撒き散らします。
感染拡大が止まりません。
4月末に発症した友人の農場では、今のペースでは5月内に処分出来るかどうかと言った所です。
全て殺されてしまう。
それでも弱れば排出するウイルスが増える。だから、殺されるのがわかってても、
毎日餌をやり、ビタミンをやり、あらゆる手を尽くして少しでも牛を健康に保とうとしてます。

でも、農場全ての牛に広がり、弱い子牛から次々に弱り、死んでいきます。
死んでも処理業者も出入りできないため、死体の上に大量の石灰を乗せても、腐敗し異臭を放ち始め
それでも親牛は自分の子を一生懸命舐め、石灰を落とそうとします。

消毒剤の不足から、本来は牛に使わないような強い薬を大量に毎日浴びせられ、
牛は毛が抜け、ぼろぼろになっていきます。
そんな中で、自分の家族同然の牛を殺す事も出来ず、飼い続けなければならないんです。

また、保健所や獣医師が殺処分現場に集中せざるを得ず、発症が疑われる農場の検査も出来ず、
テレビや報道では50件80,000頭となっていますが、オレが把握しているだけで発症の疑いがあり検査待ちの所があと40農場あります。

とにかく人手が足りないんです。
もう殺処分が追い付かないんです。
首相が激甚災害に認定し、自衛隊を出さない限り、拡大は収まりません。
その必要があるかどうかを関係閣僚と話し合い、必要とあれば検討する」とか言ってる場合 じゃないんです!
ワクチンと言う手も有りますが、現行の法律では使えず しかも大臣は「参院選後の国会で立案立法を…」とか言ってますが、
その頃には国内の牛・豚・山羊・羊・鹿・猪…等の偶蹄類はいなくなってるでしょう。

皆さんにお願いです、 とにかく今、宮崎で大変な事が起こってると言うことを、多くの人に伝えて下さい。
もう世論で政府を動かすしか方法がないんです。

資材機材も、人手も、予算も… もう国に頼るしかないんです。
よろしくお願いします。
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農水省の機能不全 (ダラット)
2010-05-16 07:32:56
今回の対応の遅れの一因に、鳩山内閣の標榜する「政治主導」があると思います。
農林省内では、何事も政治判断をすることとされ、政治家が口を出すべきでない科学的な問題も、政務三役(大臣、副大臣、政務官)にいちいち伺いを立て、了解を得ないと決定できません。
その上、政務三役に科学的な素養のある者は1人もおらず、説明の際に聞かれることと言えば、非科学的で的外れなことばかり・・・、ただの時間の無駄で、言論統制状態が続いているようです。
役人は対策を早く実施したいようですが、残念ながら、後手後手に回っているのが現状です。
早期の解散総選挙は見込めず民主党政権は続きそうですから、少なくとも、科学的な事項は政務三役の検閲は不要にする、または政務三役を科学的素養のあるまともな人間にすげ替えるべきだと思います。まともな人材がいるかは甚だ疑問ではありますが・・・。
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宮崎県口蹄疫問題について、あえて農家と宮崎県知事の対応を非難する (元養鶏関係者)
2010-05-17 13:36:51
宮崎県口蹄疫問題について農家と宮崎県知事の対応を非難する
家畜の疾病に関して、その責任は都道府県知事にある。各自治体の家畜保健衛生所が疾病コントロールを指導する。今回の宮崎県口蹄疫感染は、農家の衛生管理方法のミスと家畜保健衛生所の指導・疾病コントロールのミス、並びに宮崎県の対応の遅れが問題で、政府の対応への批判は間違っている。
宮崎県は日本有数の畜産県。牛・豚・鶏の農家がひしめき、一度感染症が発生したら周囲への伝播・発症、感染の終焉には莫大な時間がかかる。特に肉牛については専業経営だけでなく、歴史的な小規模兼業も宮崎では多い。小規模な家族経営で肉質の良い肥育用子牛を素牛として繁殖も行ってきた。農家は、口蹄疫が発症すれば伝播は拡大し、その病原を地域から撲滅することが容易でないことは百も承知している。緊急対策が必要であれば宮崎県知事が農林水産大臣及び農林水産省官僚に即座に要請すべきである。
宮崎県知事は宮崎県産品の販売のみに力を入れて生産の安全には力を入れてこなかった。地域主権を訴えても結局、責任を政府に押し付けてくる。宮崎県知事は養鰻での輸入鰻の表示偽装などを見過ごしてきた実績がある。今回、宮崎県民はタレント知事の人気に浮かれ県政運営手腕の甘さを見過ごしてきたツケを支払うことになった。
JAや経済連も畜産農家に資金貸付をし、借金漬けで飼料・資材を販売し生産物を買い上げ販売することで組織を肥大させていった。甘い汁だけ吸って負担は国に押し付けるJAや経済連のメディア発言には責任感がなく呆れる。メディアもバカ丸出しで政府批判を繰り返す。日本の政治はバカなメディアにより無茶苦茶にされてしまっている。
日本のマスコミは課題抽出・取材力がなく事実の解明力がない。よって、事実に基づかない偏向報道や重箱の隅をつつく揚げ足報道ややじうま報道ばかりである。ジャーナリズムの基本、独立・公正・中立が皆無である。それに惑わされている幼稚な日本国民にはメディアリテラシー教育が必要だ。しかし、金儲け主義社会に都合の悪いメディアリテラシーを誰も始めようとしない。
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無能 (風旅人)
2010-05-17 20:29:31
このまま政府の無策が続く本州にも遅かれ拡大するな。牛、豚のみならず犬、猫も皆・・される恐れがある。参院選の前にそんな事態になれば、民主はもう終わりだろう。最悪・最強のウイルスとの戦いは核なき核戦争くらいの心構えが要るのに、
民主の態度は、無能・・・
 無能・・・・ 嗚呼、無能・・・ 
民主に過去期待はしていたのだが、残念。しかたないか。それにしても、無能にも程度があるのですけれど。酷すぎですなぁ。
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マスコミにダマされるな (根無し草)
2010-05-17 23:08:01
口蹄疫は犬や猫には感染しません。ヒトへの感染もないといってよいでしょう。宮崎の口蹄疫の伝播も急速に拡大しているようには見えません。
感染症の撲滅には隔離が有効です。家畜を海外から輸入する場合も検疫といって動物検疫所で一定期間隔離・検査して水際で病原菌・ウィルスの侵入を食い止めています。
宮崎県も家畜保健衛生所も政府も間違った対応はしていないと思います。ヒト・モノ・家畜の移動を制限し、家畜には申し訳ないですが出来るだけ少ない人員で殺処分する。ただ、残された生産者には生活がありますから、宮崎県知事が官房長官に要請したことで、民主党政府も動きやすくなったと思います。しかし、その先の畜産・酪農製品加工・販売者は仕入れ販売数量が減り、経営への打撃は大きいものです。消費者にとっても少なからず商品数量減少による価格上昇があるかもしれません。反対に風評被害が出ると消費者間に安全な牛肉への消費低迷が起こります。それだけは避けなければなりません。
核戦争は体験したことありませんが、専門家ではないマスコミが騒ぎすぎると国民に事実が伝わらず捻じ曲げられた情報が国民を誘導して風評被害が起こり、死者が出ます。6年前の鳥インフルエンザ問題で死者が出たのは残念でした。口蹄疫ごとき、鳥インフルエンザごときを悲観的に考える必要はありません。海外の例を見ても必ず収束します。核戦争のように命を落とすことがあってはなりません。国、県からの支援は必ずあります。畜産は宮崎県の基幹産業、宮崎県は日本の食料生産基地です。小生のようなサラリーマンはリストラ、派遣切り、倒産、自己破産などを経験しています。就職難の現状で辛抱強く就職活動している若者もたくさんいます。
現在の家畜防疫体制は自民党政府時代に構築されたものです。農林水産分野での事業仕分けを進めて、畜産農家・企業・団体で有事に効率よく行動できる体制への再編を政府に求めていくことが必要です。今回の口蹄疫問題に支援する資金は国民の税金です。これまでの国家予算の使い方では天下りや渡りの人件費にばかり税金が費やされ、現場の畜産振興事業に使われていないケースもあるはずです。また、生産者も今回のような有事の場合の準備として、(現在すでに存在するかもしれませんが)保険や積立金制度を構築することを考えるのはどうでしょうか。生産者の自衛、政府・自治体の政策、消費者の理解・協力の三位一体(過去の人気総理から借用しました)で今回の口蹄疫は乗り切ることが可能です。
現在のマスコミのように、あたかも他人事かのように政府を非難するだけでは何も解決しません。日本国民は自らの意識を改革しなければなりません。
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