松永和紀blog

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オズの魔法使いとニセ科学の伝道師はいかに聴衆を震え上がらせたか?~Dr. Oz Showウォッチ2

2011-01-20 16:04:46 | Weblog

まずは、Dr. Oz Show遺伝子組換え特集の内容をかいつまんで紹介しよう。

ゲストは、U.C.Davisで遺伝子組換え米を研究しProfessor of Plant Pathologyを務めるPamela Ronald Ph.D.  、Consumer Union所属の科学者、そして遺伝子組換え反対の本を出している作家、Jeffrey M. Smithの3人である。 

ホストが医師、科学者がゲストということで、科学的な議論になるか、と期待させるが、そうはならない。Jeffrey Smithが「The American Academy of Emergency Medicineという団体が、遺伝子組換えは危険だと指摘している」と述べ始め、会場の観覧者を震え上がらせた。この団体は実は、代替医療を推進する極めてマイナーな団体で、遺伝子組換えについても、古くて既に反証されているような研究結果や、いい加減な実験設計による結果を振りかざして反対運動を繰り広げているようなところだ。 

 Pamela Ronaldは、「危ないという主張は、科学ではない。論文だって出ていない。科学に基づいて考えなければ」と主張するのだが、Jeffrey SmithにもMehmet Ozにも通用しない。結局は「怖いですね」「ラベルが必要ですね」「ラベルがあったら避けられますね」というまとめで、観覧者の拍手喝采、ということになってしまった。

科学のステップは、方法が明確で査読を経て論文として公表され、第三者による追試を経て「正しい」と認識されるのが一般的だが、そうした科学の“常識”は、TVショーにとってはどうでもよいものだったようだ。「日本でも、同じだなあ」と思う人も多いのではないか。

 Pamela Ronaldは、自身が遺伝子組換えを研究している一方、夫は有機農業の研究者で実践もしているという異色の人だ。健全な科学に基づく適切な情報を市民に伝えようと本も書いており、ブログでも発信し続けている。

だから、TVショーにも出たのだろうが、終わってみて難しさも感じたようだ。感想を書いたブログには複雑な思いがあふれており、181ものコメントがついている。宗谷さんの訳をお読みいただきたい。ちなみに、日本語に翻訳してウェブに掲載することについては、宗谷さんがPamela Ronaldから直接、了解を得ている。


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