urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

平石貴樹『だれもがポオを愛していた』創元推理文庫

2005年07月03日 | reading
ネタバレ注意。

久しぶりにいい本格を読んだなあ、という印象。
ポオの見立て殺人を中心として、非常に混沌とした状況はちょっと理解が追いつかないぐらい。しかし解決に至っては、それが論理的帰結としてキレイに解き明かされる。犯人、被害者の入り組んだ「行動」を解き明かしていく、という形の推理モノとして、理想的なフォルムを持っていると思いました。しかもそれがポオの見立てというとても魅力的なガジェットを成立させている、という、よく練られ、サービス精神も旺盛な作品。
登場人物の小説の翻訳、という形を取っており、その「翻訳」という形式を一度取ることが小説に様々な面白みを付加しています。擬翻訳調の文体がまず面白い(山口雅也みたいな作品世界)し、自身も登場人物である翻訳者が、作者の自分の描写に突っ込むとか、ユーモアを介在させる余地も出てきている。なによりロジック構築の端緒が「ディスコミュニケーション」にあり、それがこの作品構成と一貫性を持ったプロットを形作っているところなど、非常にうまいと思います(この「ディスコミュニケーション」については、ケンイチが絡んでくるのかと思っていたのですが)。

総じてセンスのいい作家。プロットの構築も、ユーモアも(名前忘れたけどケンイチを引っ張り出してきた女性がよかった)。寡作にもほどがあるようですが…。強いて瑕疵を挙げるとすれば、動機の部分がちょっと弱いかな、と。まあこれは、ラストの『アッシャー家の崩壊』の新解釈をめぐってのカタルシスによっても左右されるのでしょうが。僕が原典を読んでいないのが悪いのでしょう。
新本格以前の作品ですが、非常に新本格的な匂い(特に山口雅也)を持った作品。「本格」に対する自意識も、陰に日向に見え隠れ。正直『十角館』の宣言よりも好ましかったりした。

《我われが「誰が?」という問いに常に煩わされているのに対して、彼女は「いかに?」という問いを楽しんでいる。あるいは、少なくともそれが――十分に慎重かつ論理的でありさえすれば――、「なぜ?」を経て「誰が?」に達するための最高の近道であると彼女は信じているのだ》(216p)

作品の評価はAマイナス。

448842001Xだれもがポオを愛していた
平石 貴樹

東京創元社 1997-08
売り上げランキング : 124,253

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (みんなのプロフィール)
2005-07-04 09:34:34
ブログ開設おめでとうございます!

アクセス数を上げるために当コミュニティサイトに登録しませんか?
http://profile.zmapple.com/cgi-bin/profile.cgi
より多くのひとに貴方のブログを見てもらえます。

参加するにはこちらからが便利です
http://profile.zmapple.com/cgi-bin/profile.cgi?mode=edit&title=urt%27s%20nest&address=http%3A%2F%2Fblog%2Egoo%2Ene%2Ejp%2Furt_13%2F


お問い合わせはコチラから
http://profile.zmapple.com/cgi-bin/fmail/cmfmail.cgi
はお☆ (えり@バイト先)
2005-07-04 22:29:45
よくこんなに言葉が出てくるね うらやましい☆

この間は 傷つけるようなことを言ってたらごめんなさい。。



今度飲みましょう!!
んん? (Urt)
2005-07-04 23:33:26
何も傷ついてないぞ俺は。つか話付き合ってくれてありがとう。



ぜひ飲むべー。つかバイトしろ(笑)。
ごめん (えり)
2005-07-05 11:32:44
1回目うまく入力できてないと思い似たようなの入れてしまった!!



ときどきバイト先に遊びに行くよ!!
Unknown (Urt)
2005-07-05 12:23:44
最初のやつ消しといたよん。



まあ近いしな…安くしときますよ。