ホンダ期間工切りの非情(1)
2カ月刻み契約の果て
--------------------------------------------------------------------------------
「まさかホンダが大量クビ切りをやるとは思わんかった」
「みんなこれからどうするんやろか」
ホンダ鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の寮内にある談話室。薄明かりのなか、三十代、四十代、五十代の期間工三人が語り合っていました。
4月末までに
自動車、バイクメーカー大手のホンダ(本社・東京都港区)は四千三百人の期間工を削減して四月末までにゼロにします(表)。鈴鹿製作所でも一月十六日、期間工全員にクビを通告しました。
「許したら、いつまでたっても使い捨ての労働はなくならんぞ」
普段は物静かな四十代男性が声を荒らげました。この男性の契約期間はたった二カ月。契約更新を繰り返して約三年間働いてきました。「みんな正社員と同じ仕事を一生懸命やってきた。それを二カ月契約だからと使い捨てにしていいんか」と憤ります。
ホンダ本社によると期間工はすべて一―二カ月という短期契約です。増産で人員が必要なときは契約更新で何年間も働かせる一方、減産になればすぐに契約期間満了を理由にクビ切りできる体制です。
ホンダのような短期契約の反復更新について、舛添要一厚生労働相は労働契約法一七条二項(別項)に照らして「基本的には必要以上に短い期間にならないように配慮をすべき」(一月二十一日、参院予算委員会)と国会で答弁しています。
生活あるんや
鈴鹿の寮内談話室で、三十代男性は「二カ月契約といっても、みんなそれぞれ生活があるんや」と語ります。実家に住む母親への月六万円の仕送りができなくなります。「かあちゃんがショックを受けるから」と打ち明けることができず、悩んでいます。
五十代男性は「ずっと働けると思ってきたが、わしら二カ月の命だったということや」とつぶやきました。
男性の妻と三人の娘が京都府内の自宅で暮らしています。クビになれば、高校二年の長女には進学をあきらめてもらうしかありません。月十五万円の住宅ローン返済、生活費、教育費―、焦りはつのります。
「最近、新聞配達のかけもちを始めてな…。睡眠時間は四時間や。体にこたえるでぇ。そこまでせな、生きていけんのや」
◇
日本自動車工業会の会長企業であるホンダ。エコカー開発など地球環境を考えるクリーンイメージを宣伝する同社は、一方で違法な短期契約の反復更新を利用して「期間工切り」をすすめています。使い捨て雇用の実態を追いました。(本田祐典)(つづく)
--------------------------------------------------------------------------------
ホンダによる「期間工切り」の内訳
鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市) 1770人
埼玉製作所(埼玉県狭山市) 1300人
熊本製作所(熊本県大津町) 680人
浜松製作所(静岡県浜松市) 380人
栃木製作所(栃木県真岡市) 170人
労働契約法一七条二項
使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
(出所:日本共産党HP 2009年2月19日(木)「しんぶん赤旗」)
ホンダ期間工切りの非情(2)
「空白期間」で判例逃れ
--------------------------------------------------------------------------------
「十一年間も正社員と同じ仕事をした。それなのに、この差は何なんですか」
元期間工の桜井斉(ひとし)さん(40)=宇都宮市=は「HONDA」のロゴをかかげた工場を見つめ、ぶぜんとした表情で語ります。
栃木県真岡(もおか)市のホンダ栃木製作所。シンボルカラーの真っ白な作業服を着た労働者が、二つに分かれた工場をつなぐ歩道橋を行き交います。一カ月半前まで、桜井さんもここで正社員と肩を並べ、エンジン部品をつくる機械を操作していました。
1カ月の契約
桜井さんの契約期間は一カ月。更新、更新の連続で雇用をつないできました。一九九七年十二月の入社当初は三カ月間契約でしたが、数年前にホンダが一方的に短縮しました。昨年十一月、十二月末での雇い止めを突然言い渡されました。
桜井さんのように更新を繰り返した有期雇用労働者の場合、期間の定めがない雇用と同様にみなして雇い止めを認めなかった判例(東芝柳町工場事件最高裁判決)があります。ところが、ホンダ本社に尋ねると「継続雇用ではないので雇い止めは認められる」(広報担当者)といいます。
十一年間も働いたのに「継続ではない」とはどういうことか―。契約書で確認しようにも、すでに廃棄処分して何もありません。そこで社会保険事務所を訪ねて桜井さんの年金支払い記録からホンダに雇用された期間を確認しました。その結果、“継続でない”と見せかける手口が明らかになりました(図)。
一カ月更新を続けて一年たつと、いったん契約を打ち切り、“空白期間”をおいて再契約したことにするのです。「一回、一回の契約は切れている」(本社広報担当者)といいます。
同部署へ戻る
桜井さんは「間を空けたのは形式的で、仕事に戻れるのが前提だった」と語ります。実際、五日間、六日間の空白を置いて再入社したときも。いつも同じ部署に戻り、同じ作業に従事しました。
この判例逃れの「空白期間」は、鈴鹿製作所で二年十一カ月ごと、埼玉製作所で二年半ごとなど、他の工場でも行われてきました。
「派遣切り」「期間工切り」の問題に取り組む、鷲見賢一郎弁護士(自由法曹団幹事長)は「一カ月契約というのは前代未聞だ。ホンダの行為は、極端に短い契約を制限した厚労省の雇い止めに関する基準や、労働契約法一七条二項に明確に違反している。間隔をあけたのも許されない脱法行為で、大企業としてあるまじき非人間的な雇用形態だ」と指摘します。
桜井さんはJMIU(全日本金属情報機器労働組合)栃木地域支部に入り、十八日、雇い止め撤回を求めホンダに団体交渉を申し入れました。(つづく)
(出所:日本共産党HP 2009年2月20日(金)「しんぶん赤旗」)
ホンダ期間工切りの非情(3)
どこいった「人間尊重」
--------------------------------------------------------------------------------
「たった二カ月でクビか。だったら何でオレを雇ったんや」
鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で働く男性(25)が怒りを抑えられない様子で語ります。昨年十二月に入社。二月二十二日で雇い止めになります。男性に与えられた仕事は工場内の掃除だけ。入社当初からクビが予定されていたような仕打ちです。
退職願の強要
この男性は、ホンダに退職願の提出を迫られたと訴えます。
期間工全員雇い止めの方針を示したホンダが期間工に配布しているのは「期間契約社員退職願」と題する文書。退職日の二週間前までに「本人自筆にて記入・押印の上、各所属へ提出」と求めています。
「バカにすんな。退職を願ってるわけがないやろ」
男性が提出せずにいると、職場の上司から「総務にそう報告していいんだな。慰労金(男性の場合五万円)がもらえなくなるけどいいんだな」と迫られました。大阪府内の住まいを引き払って寮に移り住んできた男性に帰る場所はなく、加入期間が短いため雇用保険(失業手当)も出ません。少しでも資金を確保したい男性は、渋々署名に応じました。
ホンダは創業以来、「人間尊重」を基本理念にかかげています。福井威夫社長も毎年、新入社員への講話で「理念を尊重し、次の世代に引き継いでほしい」と語ってきました。
しかし―。鈴鹿製作所で三年間働いた四十代男性は「最低限の法律すら守れない企業だ」といいます。
ホンダは正社員には就業規則を冊子で配る一方、期間工には「期間契約社員就業規則」を見せてきませんでした。これは労働基準法一〇六条(法令等の周知義務)違反です。
労基署も指導
三重県津労働基準監督署は一月十三日、鈴鹿製作所に検査に入り、是正を指導。一月二十八日から鈴鹿製作所は就業規則を閲覧可能にしました。検査を受けていない残りの四製作所では「以前から閲覧させている」(本社広報担当者)と、違反を認めていません。
埼玉製作所(狭山市)で十年以上働く四十代男性は「就業規則なんてあったのか」と驚き、ホンダの説明はウソだと証言。栃木製作所で十一年働いた男性も「一度も見たことがない」といいます。
埼玉、鈴鹿の期間工に聞くと、ほかにもさまざまな権利侵害があったといいます。
▽祖母の葬儀の日に「出てこい」と言われて働かされた。特別休暇もなく、欠勤の可否も上司の意向しだい(埼玉、二十代男性)
▽自分のチームは契約書を正社員に預けさせられた。日常的に契約内容を確認できなかった(埼玉、別の二十代男性)
▽二〇〇七年末まで「寮には住民票を置くな」と言われ、選挙に行けなかった(鈴鹿、三十代男性)(つづく)
(出所:日本共産党HP 2009年2月21日(土)「しんぶん赤旗」)
ホンダ期間工切りの非情(4)
正社員登用を期待させ…
--------------------------------------------------------------------------------
「頑張ればむくわれるからと言って、さんざん働かせたくせに…。今さら二カ月契約だからやめろだなんて都合が良すぎる」
鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の二十代男性は、正社員を目指していましたが今月二十二日に雇い止めになり、夢を断たれました。
正社員を目指す期間工は多く、埼玉製作所(狭山市)の二十代前半の女性も「車が好きで、ホンダで働くのがあこがれだったのに」と肩を落とします。
夢を抱いたのにはわけがあります。ホンダが期間工募集のホームページで「ヤル気を持って頑張る人には正規従業員への道も開ける制度」「年1~2回応募するチャンス」などと宣伝して人集めをしてきたからです。
サービス残業
冒頭の男性は、ホンダが正社員登用をエサに、期間工を正社員以上に製造現場で働かせていたと訴えます。男性の場合、タイムカードを押してから毎日一、二時間、違法なサービス残業をさせられていました。
鈴鹿製作所では正社員登用を目指す若手期間工のサービス残業が横行。ホンダ本社はその存在を否定していますが、正社員の五十代男性は「正規登用されたければサービス残業をやれと期間工に言ってきた」と証言。「いまとなっては申し訳なくて顔向けができない」とうつむきます。
年齢制限で正規登用の声がかからない三十歳以上の期間工も長期雇用を信じて働いてきました。埼玉製作所の五十代男性は、春に中学校に入る子どもの教育費や住宅ローンの返済のためにほかの仕事をやめて入社。「できるだけ長く働こうと心に決め、特にきつい仕事を文句も言わずやってきた」といいます。
内部留保増大
手取り月二十万円で、必死に働いてきた期間工たち。ホンダはもうけを生み出す道具としてその数を増やし続け、製造現場の三人に一人は期間工になりました。同時に内部留保(ためこみ)は六兆円超にまで増大しました(グラフ)。たった0・3%で、削減される四千三百人全員の雇用を一年延長できるほどの額です。
「ホンダの期間工切りは極めてあくどい」。JMIU(全日本金属情報機器労働組合)本部の三木陵一書記長は「本来なら期間の定めがない雇用とすべき労働者を、違法な短期契約で安く働かせてもうけをあげてきた。悩んでいる人はあきらめないで声をあげてほしい」と話しています。
◇
二十二日現在、鈴鹿製作所、栃木製作所の期間工がJMIUに入り、ホンダに雇い止めの撤回を求めて団体交渉を申し入れました。日本共産党は今月九日、赤嶺政賢、塩川てつやの両衆院議員がホンダ本社(東京都港区)を訪ね、雇い止めの撤回を求めました。(おわり)(この連載は本田祐典が担当しました)
(出所:日本共産党HP 2009年2月23日(月)「しんぶん赤旗」)
2カ月刻み契約の果て
--------------------------------------------------------------------------------
「まさかホンダが大量クビ切りをやるとは思わんかった」
「みんなこれからどうするんやろか」
ホンダ鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の寮内にある談話室。薄明かりのなか、三十代、四十代、五十代の期間工三人が語り合っていました。
4月末までに
自動車、バイクメーカー大手のホンダ(本社・東京都港区)は四千三百人の期間工を削減して四月末までにゼロにします(表)。鈴鹿製作所でも一月十六日、期間工全員にクビを通告しました。
「許したら、いつまでたっても使い捨ての労働はなくならんぞ」
普段は物静かな四十代男性が声を荒らげました。この男性の契約期間はたった二カ月。契約更新を繰り返して約三年間働いてきました。「みんな正社員と同じ仕事を一生懸命やってきた。それを二カ月契約だからと使い捨てにしていいんか」と憤ります。
ホンダ本社によると期間工はすべて一―二カ月という短期契約です。増産で人員が必要なときは契約更新で何年間も働かせる一方、減産になればすぐに契約期間満了を理由にクビ切りできる体制です。
ホンダのような短期契約の反復更新について、舛添要一厚生労働相は労働契約法一七条二項(別項)に照らして「基本的には必要以上に短い期間にならないように配慮をすべき」(一月二十一日、参院予算委員会)と国会で答弁しています。
生活あるんや
鈴鹿の寮内談話室で、三十代男性は「二カ月契約といっても、みんなそれぞれ生活があるんや」と語ります。実家に住む母親への月六万円の仕送りができなくなります。「かあちゃんがショックを受けるから」と打ち明けることができず、悩んでいます。
五十代男性は「ずっと働けると思ってきたが、わしら二カ月の命だったということや」とつぶやきました。
男性の妻と三人の娘が京都府内の自宅で暮らしています。クビになれば、高校二年の長女には進学をあきらめてもらうしかありません。月十五万円の住宅ローン返済、生活費、教育費―、焦りはつのります。
「最近、新聞配達のかけもちを始めてな…。睡眠時間は四時間や。体にこたえるでぇ。そこまでせな、生きていけんのや」
◇
日本自動車工業会の会長企業であるホンダ。エコカー開発など地球環境を考えるクリーンイメージを宣伝する同社は、一方で違法な短期契約の反復更新を利用して「期間工切り」をすすめています。使い捨て雇用の実態を追いました。(本田祐典)(つづく)
--------------------------------------------------------------------------------
ホンダによる「期間工切り」の内訳
鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市) 1770人
埼玉製作所(埼玉県狭山市) 1300人
熊本製作所(熊本県大津町) 680人
浜松製作所(静岡県浜松市) 380人
栃木製作所(栃木県真岡市) 170人
労働契約法一七条二項
使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
(出所:日本共産党HP 2009年2月19日(木)「しんぶん赤旗」)
ホンダ期間工切りの非情(2)
「空白期間」で判例逃れ
--------------------------------------------------------------------------------
「十一年間も正社員と同じ仕事をした。それなのに、この差は何なんですか」
元期間工の桜井斉(ひとし)さん(40)=宇都宮市=は「HONDA」のロゴをかかげた工場を見つめ、ぶぜんとした表情で語ります。
栃木県真岡(もおか)市のホンダ栃木製作所。シンボルカラーの真っ白な作業服を着た労働者が、二つに分かれた工場をつなぐ歩道橋を行き交います。一カ月半前まで、桜井さんもここで正社員と肩を並べ、エンジン部品をつくる機械を操作していました。
1カ月の契約
桜井さんの契約期間は一カ月。更新、更新の連続で雇用をつないできました。一九九七年十二月の入社当初は三カ月間契約でしたが、数年前にホンダが一方的に短縮しました。昨年十一月、十二月末での雇い止めを突然言い渡されました。
桜井さんのように更新を繰り返した有期雇用労働者の場合、期間の定めがない雇用と同様にみなして雇い止めを認めなかった判例(東芝柳町工場事件最高裁判決)があります。ところが、ホンダ本社に尋ねると「継続雇用ではないので雇い止めは認められる」(広報担当者)といいます。
十一年間も働いたのに「継続ではない」とはどういうことか―。契約書で確認しようにも、すでに廃棄処分して何もありません。そこで社会保険事務所を訪ねて桜井さんの年金支払い記録からホンダに雇用された期間を確認しました。その結果、“継続でない”と見せかける手口が明らかになりました(図)。
一カ月更新を続けて一年たつと、いったん契約を打ち切り、“空白期間”をおいて再契約したことにするのです。「一回、一回の契約は切れている」(本社広報担当者)といいます。
同部署へ戻る
桜井さんは「間を空けたのは形式的で、仕事に戻れるのが前提だった」と語ります。実際、五日間、六日間の空白を置いて再入社したときも。いつも同じ部署に戻り、同じ作業に従事しました。
この判例逃れの「空白期間」は、鈴鹿製作所で二年十一カ月ごと、埼玉製作所で二年半ごとなど、他の工場でも行われてきました。
「派遣切り」「期間工切り」の問題に取り組む、鷲見賢一郎弁護士(自由法曹団幹事長)は「一カ月契約というのは前代未聞だ。ホンダの行為は、極端に短い契約を制限した厚労省の雇い止めに関する基準や、労働契約法一七条二項に明確に違反している。間隔をあけたのも許されない脱法行為で、大企業としてあるまじき非人間的な雇用形態だ」と指摘します。
桜井さんはJMIU(全日本金属情報機器労働組合)栃木地域支部に入り、十八日、雇い止め撤回を求めホンダに団体交渉を申し入れました。(つづく)
(出所:日本共産党HP 2009年2月20日(金)「しんぶん赤旗」)
ホンダ期間工切りの非情(3)
どこいった「人間尊重」
--------------------------------------------------------------------------------
「たった二カ月でクビか。だったら何でオレを雇ったんや」
鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で働く男性(25)が怒りを抑えられない様子で語ります。昨年十二月に入社。二月二十二日で雇い止めになります。男性に与えられた仕事は工場内の掃除だけ。入社当初からクビが予定されていたような仕打ちです。
退職願の強要
この男性は、ホンダに退職願の提出を迫られたと訴えます。
期間工全員雇い止めの方針を示したホンダが期間工に配布しているのは「期間契約社員退職願」と題する文書。退職日の二週間前までに「本人自筆にて記入・押印の上、各所属へ提出」と求めています。
「バカにすんな。退職を願ってるわけがないやろ」
男性が提出せずにいると、職場の上司から「総務にそう報告していいんだな。慰労金(男性の場合五万円)がもらえなくなるけどいいんだな」と迫られました。大阪府内の住まいを引き払って寮に移り住んできた男性に帰る場所はなく、加入期間が短いため雇用保険(失業手当)も出ません。少しでも資金を確保したい男性は、渋々署名に応じました。
ホンダは創業以来、「人間尊重」を基本理念にかかげています。福井威夫社長も毎年、新入社員への講話で「理念を尊重し、次の世代に引き継いでほしい」と語ってきました。
しかし―。鈴鹿製作所で三年間働いた四十代男性は「最低限の法律すら守れない企業だ」といいます。
ホンダは正社員には就業規則を冊子で配る一方、期間工には「期間契約社員就業規則」を見せてきませんでした。これは労働基準法一〇六条(法令等の周知義務)違反です。
労基署も指導
三重県津労働基準監督署は一月十三日、鈴鹿製作所に検査に入り、是正を指導。一月二十八日から鈴鹿製作所は就業規則を閲覧可能にしました。検査を受けていない残りの四製作所では「以前から閲覧させている」(本社広報担当者)と、違反を認めていません。
埼玉製作所(狭山市)で十年以上働く四十代男性は「就業規則なんてあったのか」と驚き、ホンダの説明はウソだと証言。栃木製作所で十一年働いた男性も「一度も見たことがない」といいます。
埼玉、鈴鹿の期間工に聞くと、ほかにもさまざまな権利侵害があったといいます。
▽祖母の葬儀の日に「出てこい」と言われて働かされた。特別休暇もなく、欠勤の可否も上司の意向しだい(埼玉、二十代男性)
▽自分のチームは契約書を正社員に預けさせられた。日常的に契約内容を確認できなかった(埼玉、別の二十代男性)
▽二〇〇七年末まで「寮には住民票を置くな」と言われ、選挙に行けなかった(鈴鹿、三十代男性)(つづく)
(出所:日本共産党HP 2009年2月21日(土)「しんぶん赤旗」)
ホンダ期間工切りの非情(4)
正社員登用を期待させ…
--------------------------------------------------------------------------------
「頑張ればむくわれるからと言って、さんざん働かせたくせに…。今さら二カ月契約だからやめろだなんて都合が良すぎる」
鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の二十代男性は、正社員を目指していましたが今月二十二日に雇い止めになり、夢を断たれました。
正社員を目指す期間工は多く、埼玉製作所(狭山市)の二十代前半の女性も「車が好きで、ホンダで働くのがあこがれだったのに」と肩を落とします。
夢を抱いたのにはわけがあります。ホンダが期間工募集のホームページで「ヤル気を持って頑張る人には正規従業員への道も開ける制度」「年1~2回応募するチャンス」などと宣伝して人集めをしてきたからです。
サービス残業
冒頭の男性は、ホンダが正社員登用をエサに、期間工を正社員以上に製造現場で働かせていたと訴えます。男性の場合、タイムカードを押してから毎日一、二時間、違法なサービス残業をさせられていました。
鈴鹿製作所では正社員登用を目指す若手期間工のサービス残業が横行。ホンダ本社はその存在を否定していますが、正社員の五十代男性は「正規登用されたければサービス残業をやれと期間工に言ってきた」と証言。「いまとなっては申し訳なくて顔向けができない」とうつむきます。
年齢制限で正規登用の声がかからない三十歳以上の期間工も長期雇用を信じて働いてきました。埼玉製作所の五十代男性は、春に中学校に入る子どもの教育費や住宅ローンの返済のためにほかの仕事をやめて入社。「できるだけ長く働こうと心に決め、特にきつい仕事を文句も言わずやってきた」といいます。
内部留保増大
手取り月二十万円で、必死に働いてきた期間工たち。ホンダはもうけを生み出す道具としてその数を増やし続け、製造現場の三人に一人は期間工になりました。同時に内部留保(ためこみ)は六兆円超にまで増大しました(グラフ)。たった0・3%で、削減される四千三百人全員の雇用を一年延長できるほどの額です。
「ホンダの期間工切りは極めてあくどい」。JMIU(全日本金属情報機器労働組合)本部の三木陵一書記長は「本来なら期間の定めがない雇用とすべき労働者を、違法な短期契約で安く働かせてもうけをあげてきた。悩んでいる人はあきらめないで声をあげてほしい」と話しています。
◇
二十二日現在、鈴鹿製作所、栃木製作所の期間工がJMIUに入り、ホンダに雇い止めの撤回を求めて団体交渉を申し入れました。日本共産党は今月九日、赤嶺政賢、塩川てつやの両衆院議員がホンダ本社(東京都港区)を訪ね、雇い止めの撤回を求めました。(おわり)(この連載は本田祐典が担当しました)
(出所:日本共産党HP 2009年2月23日(月)「しんぶん赤旗」)
なるほど。それは大変だ。
私の会社なら、管理職(=自分)でも絶対無理な額。
それを、非正規をわかっていながら組む神経のほうがよっぽど問題では?
このような、非正規雇用の「悲惨さを訴える文章」を読むと、いかに非正規雇用で切られた人の、物事の考え方に対する甘さがよくわかる。
もうひとついうと、手取り20万って、一般の(大企業除く)会社なら、かなりのベテランにならないともらえない額だよ。
勤めて数年の人間のもらえる額じゃない。
それを理解しないで、文章を書いているのかな?
弱者の味方といいながら、世間相場を知らないのかと思ってしまう。
ん???
整合性取れないだろう。
田舎人間には分からん。。。
だとしても、期間工を選んだ安易さは責められても仕方ないけどね。
結局、きちんとした見通しを立てずに、容易にローンを組んだということでしょ。
こういう話を「かわいそうな話」と出すってことは、書いている側もいかに社会に対する認識が甘いかわかるね。
進学を控えているって記事もあるけどさ。
国公立で奨学金と授業料免除(貧困家庭なら間違いなく審査がとおる)で、親からの仕送りゼロで卒要した学友を何人も見ている私からすれば、認識が甘いとしかいえない。ちなみに工学部だったから、バイトに明け暮れるような生活はできなかったにもかかわらずね。(ほとんどが月3万~4万バイトで稼ぐのがやっと)
手取り20万なら、勤務年数数年の人間だと、妥当な数字だろ。
基本給18万の、手当て込みで24万くらいのそう総支給だからね。
>クビになった人をツツイテ喜ぶなよな 情けない?・・・
その人間を、自分の論理の正当化のための道具に使っているほうがよっぽどな避けない。
しかも、その道具の論理が15万のローンって、それこそ世間知らずだろ。
じゃあ、貯金できた人間がなぜ、職を失って火と突き立たないうちに所持金ほぼゼロになるのか、説明できる?