お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

もうひとつのギビングツリー:匿名のチャリティ

2008-12-05 | from Silicon Valley

クリスマスシーズンになると、アメリカのそこかしこに「ギビングツリー」がたてられます。シルバースタインの絵本にちなんだこの"ツリー”には、オーナメントの代わりに、たくさんの紙の短冊が下げられています。短冊に書かれているのは「クリスマスプレゼントに欲しいもの Wish List」とそのプレゼントを待っている人のファーストネーム、年齢、性別。

そう。短冊に書かれているのは、家庭内暴力を逃れて施設で暮らしている子ども達や、ホームレス支援施設で暮らす家族など、誰からのプレゼントも期待できない人たちの「願い wish」です。

ギビングツリーは、たとえば、ショッピングセンターや銀行のロビー、学校や公共施設の玄関など、大勢の人の行き来のあるところにたてられます。場所を提供するスポンサーは、その施設を使う人に呼びかけて、匿名のチャリティを募ります。チャリティに参加するのは簡単。短冊を取って、そこに書いてある品物を買ってギフト用に包装し、その包みの目立つところにツリーからとった短冊の紙を貼ってツリーの下に置いておくだけ。

今日の写真では、木はもうほとんど裸。枝にはほんのわずかな数の短冊を残すだけになっています。でも、木の下に所狭しと置かれたプレゼントから、初めはたくさんの短冊が付いていたことがわかります。

娘のハイスクールにも毎年ギビングツリーがたちました。ツリーがたつと、生徒たちは早速短冊を見に行き、親に予算と買物の都合を相談し、手に負えそうな内容と数の短冊をとって家に持ち帰ります。

ある年にはウォークマンの希望が殺到し、一番安い店を探して1ダース以上まとめ買いしました。別の年には、GAPのセールに早朝から並んで、さまざまな年齢の子どもたちの洋服を買いました。短冊に年齢や性別が書いてあるのは、プレゼントを選ぶときの参考にするため。洋服や靴を希望する人はサイズも書いてあります。

ギビングツリーは匿名の善意を寄せ集める仕組み。アメリカ人はこういう仕組みを作るのがうまい国民です。プレゼントの希望を聞き書きする人、短冊の紙を作る人、短冊をツリーに下げる人、ツリーを置いてくれる施設を探す人、自分の施設内にツリーを置かせる人、ツリーから短冊を取ってプレゼントを買って持ち寄る人、誰もかれも皆が匿名のボランティア。一人ひとりが「(自分に)できること」だけを少しずつ寄せ集めることで、知らず知らず、全体としてうまく機能するようによく考えられています。

アメリカは公共政策の行き届かない国。だからこそ市民は自分たちの小さな手でもできることを寄せ集めて大きくまとめあげる知恵を育ててきたのだろうと思います。

でも、1929年以来の経済恐慌と言われる今年は、残念なことに、例年ならシリコンバレーでもそこかしこで見かけるギビングツリーを、まだほとんど見かけません。



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