悪魔の囁き

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2018-01-30 10:13:38 | 日記
第一話【左馬)】(二)


「まいど――」
「ご苦労さんです」とホームセンターコンガのカー用品担当村木が言った。
「いつもお世話になります」
「ところでゼンシンに入ったんだって」
「そうなんですよ。コンガがオープンしてから半年後に、ジョイマートと同じ日商グループの紹介で取引を始めたんですよ」
「うちはテンシャーだっけ」
「そうです。村木さんのところは、DMCグループと日商グループの問屋が会員になって出来た新しい組織なんですよ」
――なるほどぉ. ――
「それでDMCの問屋はハード商品を受け持ち、日商の問屋はソフトを担当したんですよ」
「あとからもめないように配慮した訳ですね」
「そんなところですね」
「でも、カー用品は中さんところだけだね」
「カー用品はうちが会員になっていたので、他の問屋は入いれなかたんですよ」
「ゼンシンはどこが入っているの」
「名古屋から来ている問屋ですね」
「そうなの」
「結構地元の問屋も来るでしょ」
「うちには来ないなぁ~」
「長野は東京より名古屋の方が近いから来るんですよ。
しかし東京の問屋は群馬県までは来るけど、碓氷峠を越えては来ないのですよ」
「うちのオープンも1年は早ければ名古屋の問屋がきたのか」
「そうだと思いますよ」
「ゼンシンは境目だったんだなぁ」
「そうです。それで名古屋の問屋が入っているんですよ」
「店づくりも違うところがあるのかなぁ~」
「でも、1店舗ですからね」
「だと、問屋にお任せか」
「まぁ、そんな事ですねぇ。でもうちが入ったって、どこから聞いたんですか」
「なに、カー用品のチラシがうちのと似ているからだよ」
「そうでしょねぇ。俺が提出した商材で作っていますからね」
「でも、50cc用のキャップタイプのヘルメットが高いね」
「あれは別の問屋から買ったんですよ」
「2980円だとうちの定番と同じだよね」
「そうですよ」
「そんなに高くて売れているの」
「売れる訳がないですよ」
「そうだろう」
「写真だと同じに見えますけど現物は違いますからね」
「そうだよねぇ~」
「はい~」
「じや、どこから買ったの」
「DMCグループのコンパイヤーからですよ」
「聞いたことないなぁ~」
「名古屋から来ている問屋ですよ」
「ふぅん~」
「それにゼンシンだけで来ているから、月に1回しか訪問に来ないみたいですよ」
――なるほどぉ. ねぇ~――
「それでシンワから資料を貰って特売を入れているのか」
「そうです。だからうちはチラシの提案をしているだけですよ」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「せこいなぁ~」
「もしかしたらゼンシンとシンワは、相性が悪いのかもしれませんよ」
「そんな事で片付けるのが、中さんらしいよ」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「どうです。イヤミたらしく、次回は1980円でチラシを打ちますか」
「それもいいねぇ~」
「それでチラシを佐久まで広げて多目に撒けば、効果がありますよ」
「今まで上田方面を重点に撒いていたからなぁ~」
「大林専務に聞いて2千枚ほど多めに撒いてみれば、売上も3割はあがりますよ」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「相変わらず調子がいいねぇ~」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「それに二輪用品も定番で置いているから、フルフェースのヘルメットも特売にかけてみたらどうですかね」
「4980円で安いと思うけど、無名の商品を若い子が買うか、かぁだね」
「定番はマルシンですけど、台湾製のヘルメットならメーカー品の価格を崩す事はないですからね」
「ショウエイやアライは取れなかったんだよね」
「そうです。うちはマルシンを担いでいますからね」
「一流品でないと専門店には適わないからね」
「そうなんですよ。本当は一流メーカーが欲しんだけどね」
「メーカーに頼めばいいのに」
「でもショウエイやアライは掛け利率が高いのですよ」
「どのくらいになるの」
「売価ですと定価の一割引ですからね」
「利益率は」
「10%ですかね」
「それじゃぁ、利益がないな」
「特約店になれば掛率も安くなるんですけどね」
「それならなればいいのに」
「二輪専門店の得意先がないから、年間販売数が目標に達しないのですよ」
「毎月いくら売ればいいの」
「200万円以上ですかねぇ~」
「それじゃぁ~ ホームセンターでは無理か」
「はい」
「やはりやめたほうがいいか」
「そうですね。それに無名のメーカーでも二輪を転がしている連中は、ツーリングの時はメーカー製品をかぶるけど、その辺を走るときは無名のヘルメットかぶって出かけますよ」
「コンビニかね」
「まぁ、そんなところですねぇ」
「ホント――」
「要するに高いものを何個も買う金がないから、予備で持つんですよ」

村木和夫さんは38歳、身長は160cm、顔は細長く、色が白かった
髪は、天然パーマで短く刈り7:3に分けてオデコを出していた。
眉毛が薄くて丸く、一重瞼で細い目に、額には5本のシワを刻んでいた。
鼻は低く、団子で、頬骨と変わらない高さだった。
鼻の下が長く、上唇が薄く、下唇が厚く飛び出していた。
ヒゲが濃く、ヘビースモーカーで下の前歯に茶黒いヤニをこびりつかせていた。
口を尖らし、ツバキを飛ばして喋った。
声が低くこもっていて、電話で話していると聞き取りにくかった。
******

「チューさん。悪いんだけど名古屋に行ってもらえないかなぁ」
「どうしてですか」
「長野本店の出荷が大山君一人では出来ないんだよ」
「あぁ・・・ そうだったか」
「うぅん」
「大村専務はどうなんですか」
「新規が1軒あって、HI本部に打ち合わせに行っているんだよ」
「どこですか」
「成田だよ」
「まさかコーヨーではないですよね」
「同じガソリンスタンド経営だけど、個人で営業しているんだよ」
「するとホームセンターは初めてですね」
「そうだね」
「成田だと、また俺の担当になるわけですね」
「そう言う事になるね」
「吉高はどうしたんですか。静岡から近いでしょ」
「彼はジャイアントエンシューとの取引に、死ぬ気でやってもらっているからね」
「旗揚げの時はジャイアントエンシューを宛にして会社を起こしたんですからね」
「本当に宛が “ハズレ”たよ」
「この先見通しはあるのですか」
「ないね」
「あのバカは“タコ”の見本だからなぁ~」
「家族がいなければ辞めてもらいたいんだけど、子供が小さいからねぇ~」
「幼稚園児でしたっけ」
「そうだよ」
「そんじゃ、しょうがねぇかぁ~」
「悪いねぇ~」
「明日行きますよ」
「そうしてくれる」
「はい>」
「あとで大山君に電話しておくから、頼むねぇ」
「搬入に時に荷物が届かなければ、宮野課長の信頼がなくなりますからね」
「それが怖いよ。もし取引中止になったら、うちは倒産するからね」
「でしょうね」
「情けないけど・・・」
「朝4時に出れば10時には着くか――」

「こんちは。シンワですが」
「ご苦労様です」と一階の発送をしている嘱託の60代のオヤジさんが言った。
「大山さんいますか」
「2階の倉庫で品出しをしていると思いますよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「おっ、よく来てくれたねぇ」
「はい<」
「ありがと。助かるよ」
「何からやりますか」
「そうだねぇ~ オープンの出荷台帳で品出ししてもらおうか」
「商品がどこにあるのか分からないですけど」
「あぁ、そうか。取り敢えず2階と3階の商品には印を付けてあるから、これで出荷して」
「この②③マークですね」
「そう。あとは今までの感で、わかるでしょ」
「俺、プロですから」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「関連で判断できるということだね」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「それで、迫田部長はいるんですか」
「4階の営業部室にいると思うよ」
「そしたらあとで挨拶しておくか、なぁ~」
「それがいいね」
「それと――」
私の耳元で “ナイショのはなし”をした。
「品出ししたら端の方に置いておいて」
「どうして」
「サコタの連中がやきもちを焼いて邪魔にするんだよ」
「せこい奴らだなぁ~」

大山茂さんは43歳、身長は158cm、輪郭は四角で、将棋型の顔していた。
髪の毛は太く白髪まじりで、額が狭く、3本の深いシワを刻み、左から7:3に分けていた。
眉毛が太くて短く、一重瞼で、細い目が垂れていた。
鼻が低く三角で、鼻の下が短く、上下の唇が厚かった。
ヒゲが薄く、白髪まじりのまばらで、鼻を中心に、格パーツが中央に集中していた。
イースト㈱の時代は、名古屋店業務課の係長をしていた。
シンワの畠中社長が支店長の時に目をかけられていた。
倒産すると、サコタと業務提携した時に出荷要員としてサコタに出向していた。
5年後シンワが独立すると、サコタの正社員になった。

「それとこの近くにビジネスホテルを取ってあるから、終わったら案内するよ」
「ありがとうございます」
「軽く飲むところも、あるからさぁ」
「いいですねぇ~。こっちは・・・」と小指を立てた。
「ないね――」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「そんじや、1杯行きますかねぇ~」
「そうだね。話したい事もあるしね」

12時になった。
「中くん。お昼は弁当を取ってあるから、4階の食堂で食べよう」
「大山さんは」
「僕は持ってきているんだよ」
「愛妻ですね」
「四十路過ぎると、悪妻だよ」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「ほんじゃぁ、行きますか」
12時半に迫田喜一総括部長が食堂に入ってきた。
「ご苦労様です」
「まいど」
「ジョイマートも勢いがあるねぇ~」
「本店で一先ず終わりにして、これから利益を出す段階に入りますよ」
「そうなの」
「はい< それで部長はいつ長野に行くんですか」
「来週行く予定ですよ」
「それなら日にちを合わせて俺も行きますよ」
「それもいいね」
「面白いところを探してありますから案内しますよ」
「ジョイマートの連中も来るんでしょう」
「来ますよ。ついでに総括も顔を売ったおいたほうがいいでしょう」
「それも、ありか」
出荷もほぼ終わる頃、5時になっていた。
「可也品出したね」
「明日は半日もあれば終わりますよ」
「良かった」
「目処がついたところで、今日はこれで終わりますか」
「そうするかね」
「今日の注文分は終わりました」
「おかげで、全部終わったよ」
「それなら帰りますか」
「待って」
「えぇ」
・・・what?・・・
「掃除をしてから帰らないと業務課の連中に、あとで何を言われるか分からないからね」
「間借りしていると、肩身が狭いですねぇ~」
「ホント、だがなぁ~」
「掃除が終わったら、上に挨拶してくるよ」
「俺も行きましょうか」
「いいよ。先に駐車場に行って車を出してきて」
「わかり。1階で待っていますよ」
「そうだね」

「乾杯<――」
「かんぱい~」
「ご苦労様でした」
「中くんが来なければ、どうしようかと思っていたよ」
「俺も社長に言われなければ来るつもりはなかったんですけど、来て良かったですよ」
「シンワを立ち上げた頃はサコタの連中も手伝ってくれたんだけど、出荷が多くなったら手を返されて足を引っ張られているよ」
「そんなに邪険にされているのですか」
「そぅだよ。品出しを手伝ってもらうと品違いや不足していても・・・
『間違いなく、出荷しました――』で、終わりなんだよ」
「その不足分はどうなるの」
「シンワで補填するんだよ。頭にくるよ」
「手伝ってもらっても、うちが損をするだけかぁ~」
「そういう事だね」
「いやらしいですねぇ~」
「この前なんか送り状の住所印が多くなったから ・・・
『ゴム版の代金も請求するか』と迫田社長が言ったんだよ」
「そんな事まで言うの」
「そうだよ」
「一日も早く独立しないとダメか」
「頼むよ」
「これからも俺のところはメーカー直送しますよ。そうすれば少しは楽になるでしょう」
「中くんのところだけでもそうしてくれると、ありがたいよ」
「小山くんのところもメーカー直だから、手がかからないでしょう」
「そうだね。小山くんも気を使ってくれているよ」
「ただサコタの商品をなくす訳にはいきませんからね」
「それでないと業務提携した意味がサコタにないからね」
「メリットを優先する事はできないけど、出来るだけうちの利益が取れるアイテムをバランス取って定番に入れていきますよ」
「メーカー直は多めにしていいですよ」
「分かりました――」
***◆◆◆***

「括。何時頃チックインしました」
「6時だよ」
「風呂は――」
「入ったよ」
「それなら俺も入ってくるので、7時にフロントで会いましょう」
「そうだねぇ」
1時間過ぎた。
2階レストラン前の狭いフロントで出入り口横のソファーに座り、
半年前の週刊誌を読んでいた。
「待ちました」
「今来たところだよ」
「じや、行きますか」
「どこに行くの」
「いつもの赤ちょうちんで下地を作ってから、面白いところに行きましょう」
「あちこちに顔を出しているんだねぇ」
「一人で飲む時は赤ちょうちんで終わりにしているんですよ」
「毎晩、お客相手では金が続かないか」
「それはありますよ」
「ジョイマートの連中は何どこで飲んでいるの」
「次に行く店で飲んでいると思いますよ」
「直ぐに行かなくてもいいのかい」
「1時間ぐらい遅れて行った方が適当に出来上がっていて、乗りがいいんですよ」
「ツボを心得ているね」
「行けばどのみちマイク片手に、飲みながら歌いますからねぇ」
「みんな好きなんだね」
「それで盛り上がって、2発 3発  爆発“\ボーン/”するんですよ」
――なるほどぉ. ――
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \

「話は変わりますけど、先週サコタに出荷に行った時にうち用の定番商品の在庫が少ないのですけど、サコタでは売っていないのですか」
「そうなんだよ。どうしても関西系のメーカーを優先して売らなければ、年間契約を達成できないからね」
「東京のメーカーとは契約をしていないのですか」
「そんな事ないよ。しているよ」
「そしたら在庫してもらわないと、達成が出来ないじゃないですか」
「業務課では分かっていないんだよ」
「せっかく早見係長がうちの窓口をしているんだから、定番在庫だけでも欠品しないようにしてもらいたいですね」
「あれ。やっているはずだよ」
「えぇ~ 大山さんの話だと注文を入れて納品されると、業務課で荷物を開けないまま、
メーカーに返品するらしいですよ」
「そうなの。知らなかったなぁ~」
「ですか」
「早川係長も得意先を持っているから、手が回らいのかもしれないなぁ~」

☎♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦
「はい。サコタです」と電話セールス兼任の取締役常務新井浩一郎が出た。
「トップ・カーマンです」
「いつも、お世話になります」
「お世話をしています」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「ありがとさんです」
「――いますか」
「チョト待って下さいねぇ」
「早川君。生井社長から、2番」
「はい<」
「お電話かわりました」
「注文、いいかい」
「どうぞ」
「在庫はあるよねぇ」
「大丈夫ですよ」
「いつ持って来る」
「急ぎですか」
「そう」
「明日持って行きますよ」
「なら、その時に・・・」
「有難うございました」

「もしもし」
「タカハギ製作所です」
「サコタの早川です」
「まいど」
「お世話になります」
「カーコンポなんだけど、注文いい」
「少々お待ちください」
「はいぃ~」
「・・・どうぞ」
「TT―DX100セット2台、TWE―120セット1台、
TCH―130セット3台、以上だけど、在庫あるよね」
「大丈夫ですよ」
「明日午前中に納品できる」
「出来ますよ」
「欠品があったら、即、電話して」
「了解」
「それじゃぁ~ よろしく」
「有難うございました」

「常務。トップ・カーマンの配達に行って来ます」
「運送便に載せたのがいいんじゃないのか」
「僕が行かないと注文を出してくれなくなるんですよ」
「相変わらず “クセ”が あるなぁ~」
「そうなんですよ」
「生井社長も偏屈だから、自分の気に入らない営業マンが来ても、相手にしないのですよ」
「係長は人当たりがいいから、気に入られているんだなぁ」
「部品屋回りの時からの付き合いですからねぇ」
「取引して3年目だったね」
「そうです」
「これから “グゥン~” と伸びますよ」
「だろうなぁ」
「じゃぁ~ 行ってきます」
「社長に宜しく」
「はい<」
「頑張ってなぁ」

「まいど<」
「ご苦労さん」
「納品伝票は後で送ります」
「金は完売したら振り込んでおくよ」
「お願いします」
「これ、前回の分ね」と茶封筒を渡した。
折りたたまれた口を開け“ふう・ふう”息を吹き込み、中を確認した。
「はぃ はぃ はぃ」
「現物は早めにね」
「分かり」
「これで帰りますので」
「来週電話するよ」
「数は小まめに、注文してくださいね」
「わかっているよ」
「それと、ステレオ以外も注文してくださいね」
「そうだな」
「ただし、金額の張るのは避けてくださいよ」
「わかったよ」
「じや、また来ます」
「よろしく――」


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