これまでのテレビは3:4の縦横比(これをアスペクト比って言います)なんですが、だんだん移行してきているワイドテレビは9:16です。なぜそうなんでしょうか? ぐぐってみると「人間の目は左右に並んで付いているので、横に広い画面の方が見やすい」というあ然とするような説明が書いてあったりします。それって全然なぜ9:16なのかって説明になってませんね。
ハイビジョンに長年執念を燃やしてきたNHKのHPによると開発に当たってアスペクト比は映画との互換性を考えたと書いてあります。これはわかりやすいです。3:4自体が昔の映画の1:1.37っていうスタンダードサイズに近いものですから。で、今の映画でふつうに使われているビスタサイズはヨーロッパでは1:1.66、アメリカでは1:1.85なんだそうです(この辺の数字はサイトによってバラバラだったりして困っちゃうんですが)。9:16は1:1.77…ですから、中間を取ったってところなんでしょうか。
もうちょっとワイドテレビにいちゃもんをつけると、テレビは26型とか32型とか言いますが、あれは対角線の長さをインチ表示したのがもとになってることはご存知でしょう。じゃあ、同じ20型のテレビで、3:4と9:16のどっちが得だと思います?……損か得かを液晶とかプラズマのパネルを作るコストで考えればたぶん画面の面積で比較するのが正解でしょう。対角線の長さが同じであれば正方形がいちばん面積が広くなるのは明らかですから、直感的に3:4の方が得でしょうね。ちゃんと計算するのも簡単です。ピタゴラスの定理により3:4は対角線が5になり、9:16は√337(≒18.36)になります。よって対角線の長さをaとすると、3:4の場合は面積は6/25a*2と表わせます(a*2はaの2乗とみてください)。同様に9:16の場合は面積は72/337a*2と表わせます。6/25=0.24、72/337≒0.21ですから、やっぱり14%ほどお得だという結果ですね。それにしても、337って素数ですから当然、√337は無理数です。ですから、対角線を正確に20インチに合わせると縦横ともに無理数になります。……そんなの工場でできるわけないですね。これが9:16が気に食わないもう一つの理由です。
ハイビジョンの規格を決めるときには人間の好む縦横比を検討したら3:5や3:6が望ましいことになったとさっきのNHKのサイトに書いてあります。つまり1:1.66…や1:2ってことですね。前者は古代ギリシア以来の伝統をもつ黄金比(1:1.618…)にかなり近いので、思わずほくそえんでしまいました。黄金比という言葉を聞いたことはあるでしょうが、高校までの課程ではあまりちゃんと教えないんでしょうね。尻切れトンボばっかりのことを教えるより黄金比と次回に採り上げるつもりの(いつかなあ?)フィボナッチ数列のことを教えた方がよほどおもしろいと思いますけどね。
まあ、それはともかく黄金比がパルテノン神殿やミロのヴィーナスを始めとして、いろんな芸術に使われていて、それはこの比率がいちばん美しく見えるからだっていう説明をよく目にします。……そこでホンマかいなと突っ込みを入れた人は正しいですね。絶対音感じゃあるまいし、建築物や彫刻なんかのこことここの比は3:5じゃない、黄金比だなーんてわかる人はいないでしょう(画像では5:8=1:1.6で近似させてるのがおかしいんですけど)。視覚は聴覚なんかよりよほどだまされやすいもんです。
古代ギリシアの人たちが黄金比を神秘的なものと見ていたのは事実かもしれませんが、それは美しいとか、調和を感じるとかといった感覚的な理由じゃなくて、合理的な理由があったんだと思います。さっき黄金比を1.618…って書きましたが、正確には(1+√5)/2です。複雑な形をしているように見えるでしょうね。でも、これって一辺が1の正五角形の対角線、つまり☆形になるあの長さなんです。正五角形の対角線って中心を通らないし、一筆書きで書けるだけじゃなく、長さにもこういう不思議なところがあるんですね。
定規とコンパスだけで作図する(つまり直線と円の組合せだけでってことです)って幾何の基本ですが、正五角形の作図は正方形や正六角形に比べて飛び抜けて複雑で、かついろんな方法がありますけど、結局は辺の長さに対して(1+√5)/2倍の長さの線分を作って対角線にすることに帰着しています。
で、図を見るとわかると思いますが、この長さの線分を作るのはすごく簡単です。一辺が1の正方形を書いて、その一辺の中点(この取り方は覚えてますか?w)から斜め上の頂点にコンパスをあてて、辺の延長上に交点を作ればいいわけです。これから、正五角形を書くには……☆をイメージして、実際にコンパスをあちこちくるくる回せばわかるんじゃないでしょうか。別のやり方として、与えられた円に内接する正五角形の作図方法も挙げておきます。これも(1+√5)/2の関係がいっぱいでてきます。
じゃあ、今回はこれくらいにしておきましょう。そうそう、A4とかB5の紙の縦横の比率は1:√2で、こっちは白銀比って言うそうです。これは半分に折るとA5、B6と相似の形になるから便利なんですね。1:√2=√2/2:1という関係を利用しているわけです。これを黄金比と間違えてる人もいるみたいですが、それを使っているのは新書版とか名刺だそうです。ちょっと縦長でしょ?
今マッハの勢いでコメントを書いています♪
TVの比率ですか。。。ん。。。あまりTVを見ないので今回は結構勉強になりました。
昔友達の家がワイドだったのですけど、なんだかね、画面に映る人はみんな横長でつぶれているのですよ。
あの時はちょっとしんみりしないといけない状況だったのに、私は肩がふるふると震えていましたよ。
白銀比ですか。。。なるほど。。
日常生活に取り込みたい言葉です
確かにお相撲さんとオペラ歌手ばかり出てくるヒューマンドラマって気がしますねw。
黄金比、白銀比、ゴーヂヤスな感じでしょ?ぜひ生活に取り入れてください。当社比よりはましな言葉だと思いますw。