宮古on Web「宮古伝言板」後のコーケやんブログ

2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

<ニュース解説>5 家は建つのか?

2017年03月14日 | ニュースレター



ニュースレターNo.14> 5段目


 若い人は浸水跡地に家を建てていない。これからも建たない

被災地に、被災跡地に家は建つのか? の深刻な疑問がある。鍬ヶ崎地区では区画整理がほぼ完成して、新築が競って建ち始めている。もう一息という希望もあるが、深刻な疑問とは、若い家族の家が建つのかどうかという事である。独身でもいい、若い人が家を建てて、そこに住むかどうか?  …つづきを読む



<解説>


この3月末で福島の帰宅困難地域が規制解除されるが帰還予定者は多くない。陸前高田や大槌も帰還者の調査を進めているがやはり多くないという。宮古市鍬ヶ崎地区は可住地とした浸水跡地への帰還者を役所は把握していない。一概にはいえないが、いずれの地も元住民が帰還を熱望していた土地であったはずである。


 お年寄りが多い

鍬ヶ崎地区で建設が進む住宅はお年寄りのご夫妻かお年寄りのいる家族が多い。満を持して家を建て移住してきた一軒の家を訪ねたが、ご夫妻が笑みを浮かべて新築物件に満足そうだ。元住民も他の地域の方と同じである。そこで生まれ育った故郷に当然のように帰還して落ち着いた。

 鍬ヶ崎に戻ってきたお年寄りたちは、津波を恐れていない。津波は鍬ヶ崎につきものだからいつも避難の事は頭にある。警報が出たら沖に船を出すか、高台に逃げれば大丈夫だ。死ぬ事はけっしてない。昔は地震の大きさや引き潮の気配で声をかけ合って避難したが最近は気象庁の警報を待つようになっただけである。


 「独りよがりにならないでね」

しかし息子夫妻、娘夫妻は鍬ヶ崎に戻ってこないという。孫からは「独りよがりにならないで気をつけてね」と言われているが意味が分からない。私らの経験から、海を生業にする漁師は波には負けるから絶対むりはしない、人間は自然には勝てない事を知っているのだ。だから自然には逆らわない。自然と共生して防潮堤もいらないし津波警報もいらないくらいだ、と。

 お年寄りたちはこうして自分たちの経験が絶対だと信じている、信念が永遠だと信じている。しかし現実にはお孫さんがいうとおりである。お年寄りや年配者は防潮堤を受け入れ津波警報にはいち早く耳を傾けている。ボランティア活動を歓迎し、災害に対する支援金や支援物質を拒否するわけではない。しかし、まわりが整えば再びまわりに壁をつくってその中の生活に入って行こうとしている。受け身一途というのか? 自分の事だけ考えているといっていいのか?

 

若者の住まいの選択

一方、若者、若い夫婦、こどもや孫のいる世帯は、可住と言われても、どうしても鍬ヶ崎に家を建てる気はしないという。お年寄りの考えは裏表、半々としても、マグニチュード 9 の東日本大震災クラスに通用しない防潮堤では跡地に家を建てる根拠がなくなっている。浸水跡地では一家団らんのイメージが浮かばない。

反対に、防潮堤がなければ地場産業の再建も、関連産業復活も可能性があるように思える。職住分離で地域の特徴も打ち出しやすい。鍬ヶ崎の海のある風景は、産業や生活を育む地域のアイデンティティ(生きがい、存在の証)となっている。時間がかかってもここから世界に発信していきたいという思いが強い。鍬ヶ崎地区から海が離れる事はない。海から鍬ヶ崎が離れる事はない。


参考1 そこに新たに家を建てるかどうかの問題その地域の将来の姿と深く関係を持っている。震災後の鍬ヶ崎のありようがどうなのか? 漁業基地としては、震災後コンクリート防潮堤でかこまれた北海道奥尻島の衰退を引き合いに出す人もいるが、まさに北海道、東北の沿岸地帯のスケールの大きなイメージのことである。まさかそこには臨海工業地帯や大都会を後背地とする大港湾地帯等の護岸や諸施設にかこまれたハードな海岸線ではないであろう。詳しくはここで述べないが、どっちかといえば空気や景色や自然環境や観光、癒し、そして生業としても1次産業中心から発した2次、3次、6次産業のソフトと寄りの産業ベルト地帯になるのではなかろうか。

参考2 防災に関して、国も県も、どこの自治体も約束したのに守られていない事がある。災害の検証、特に死亡した方々の検証、どこで、どのような環境で、どのようにしてなくなったのか、の一件一件の検証を、6年経っても手つかずの自治体が多い。年月が経って民間で自主的に行なった(大槌町)りしている所があるがこの問題は行政、民間をとわず何年かかってもやらなければならない事である。亡くなった方にも申し訳がない面もある。

(参考記事)津波避難の実態を面接調査へ 内閣府、2万人規模想定
 内閣府は18日、東日本大震災の津波から住民がどう避難したか実態を検証し、減災対策に活用するため、大規模な面接調査を行う方針を固めた。津波被害が出た青森から千葉までの太平洋岸6県の沿岸市町村を対象に、住民避難を支援した消防団員らを含め最大2万人規模を想定している。必要経費として本年度第3次補正予算案に約2億円を盛り込む考えだ。 多くの人から避難体験を直接聴き取ることで(1)住民らの意識を高め安全に逃げる方法(2)高齢者や入院患者ら災害弱者のスムーズな避難の在り方(3)消防団員らが被災を避けながら支援する方策?などを多角的に検討する狙い。(2011.9.18、47ニュース等)

この問題は震災の単なる被災調査ではない。将来の津波防災の、防潮堤や道路などの建設をはるかに上回る自治体必須の「防災のための」最優先課題の重要調査である。



 






 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <ニュース解説>4 県が決め... | トップ | 不気味な壁(日立浜) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿