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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

世界のもの笑い 釜石湾口堤防復旧着工

2012年02月29日 | 大船渡、釜石、大槌


ギネスだ、ギネスだと海面から63mの世界一の深さを誇り観光船まで運行した釜石湾口堤防が今次津波で無惨に崩壊してしまった。壊れた防波堤の検証も見えず、市民感情も未だ回復しておらず、高地移転などの民生復興のめども立っていないさなかに、工事だけが先行する意味はなんであるのか?

[湾口防波堤の着工式に続き、復旧工事の説明を受ける出席者たち] 26日午後、釜石市、葛谷晋吾氏撮影(asahi.com)



(1)「ねばり強い」工法と言葉を変えただけ。今次津波の実態も充分に分かっていないのに、従って、旧工法の崩壊の原因も意味もなにも分かっていないのに「まず、倒れたり、ずれたりした防波堤のケーソンを砕いて取り除き、新たなケーソンを設置する。基礎部分は従来よりかさ上げ、ブロックで覆うことで巨大津波に堪えられる」(asahi.com 2/28)というもの。思わず「うそだ!」といいたくなる。ねばり強いとは思えない、一貫性のない付け焼き刃工法で従来よりももろく、弱い堤防になるという事は素人でも分かる。土木工学会でどう評価するのであろうか?釜石市民のコンセンサスはどうであろうか? という以前の拙速工事である事はいなめない。ギネス本部も世界一のギネス称号は撤回したであろうが、それはまあギネスの信用を狂わせた本部としての屈辱の悲劇であった。しかし、この度の復旧工事着工についてはギネスエントリーはおろか東日本震災の喜劇として世界中が注目して見守っている。



(2)着工式で野田武則釜石市長は「湾口防波堤がなければ被害はもっと拡大したであろう」(web岩手日報 2/27)と政治家の「レバたれ」発言、イージーな言い方でこの反世紀の工事を祝した。湾口防波堤があったがために、釜石市民の命がどれくらい失われたかについては口をぬぐったのである。釜石市民の津波による犠牲者の実態、その亡くなった状況、生きた状況、防波堤の状況への良し悪しの影響など、調査や市民感情がまだ定まらない時期に早々とそのような発言を繰り返している。釜石市長,大船渡市長,宮古市長の拙速(せっそく)発言は、皆、このような予算のための中途半端なパフォーマンス発言である。じっくり市民のコンセンサスをとろうという耳を持たず、国の予算が逃げていったら(自分が)困る事ばかり考えている。選挙で選ばれる首長の公共工事だのみの神話がまだ横行している。市民が求めているのはそうではなく本当の復興である。なくなった堤防ではなく、なくなった家をまず回復したいのだ。…



(3)工事着工式はまさしく政治家と官僚と、工事関係者だけで行われた。彼らは未だ、この問題が広く市民主体の(安全,防災の)ものだということを知らない。上から目線の「市民のため」で、その実態は自分たちの工事のための自分たちの工事である。それぞれの利害の思惑だけがすけて見える。日本の大手のゼネコン各社は向こう3年で復興需要17兆円を期待して業務を東北に重点シフトしているという。鹿島、清水,大成、大林,五洋,…。ゼネコン、コンサルタント、ひもつき研究所、あらゆるサプライチェーン、のコンクリート族の営業活動は前の前の前から始まっているのである。防波堤の設計もそのリフォーム計画も、工事行程のタイムテーブルも、商売優先の無反省で出来上がっている。前の設計ミスや手抜き工事,談合の事は軽々と忘れ去られて…。(人の耳目を集めているいわゆるシミュレーションもほとんどがこの大手企業の技術者やコンピューターがはじき出したものだ。県庁や市や国が作っているわけではない。シミュレーションのテーマや目的がなんであるかは分かると思う)。官僚や政治家はその流れに乗るのが大義だと錯覚して、その期待に答えるために何でもやるつもりのようである。市民に向けた顔が仮面であってはこまるのである。



大体にしておかしいではないか?役に立たなかった防波堤をまたもとのままにつくり直すという事は!



[関連記事] 「防潮堤」は効果がなかったこと。これからも期待できないこと。

 

 

 

 

 

 

 

 


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6 コメント

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人命を救った防潮堤もある (typeXR)
2012-03-19 18:58:39
現地に行った人の話によると、湾口防波堤のおかげで兆円規模被害を防いだと聞きましたが。

他にも、普代村の防潮堤と水門は15.5mの高さがあったおかげて、15mの津波を防ぐことができ、死者ゼロにできました。

世界の笑いものというのはかなり憤りを感じます。
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原因不明のままの着工は技術的観点から無意味 (Shinsuke)
2012-04-18 13:48:56
 基礎が石とブロックではだめだ。
 津波を相手とするのであれば、長時間にわたり水圧差を受け続けることを前提とし、水密構造を海底まできっちりとつくらなければ流される。防波堤と防潮堤では、この考え方がまったく異なる。
 ケーソンの下に、苦労して敷き詰めた岩があるが、隙間だらけの岩では水圧差を受けて隙間に流れが発生し、岩と岩の間に存在し小さな、しかし実は支えるためには役目を果たしている石や砂が抜け去る。
 防潮堤は、ダムを建造するのと同じ考え方で作られなければならない。
 10m程度の水位の差が数十分続くという想定だけでも、構造はかなりかわるだろう。海底を岩盤まで掘削し、水密壁を作らなければ対処困難である。10mの水圧は、1kgf/平方センチで、結構な圧力である。
 技術的に改善せねば、折角かけた工費が十分に役立たないという意味で、再考した方が良いのではないかと思う。基礎は従来後方プラスブロックだというのであれば。
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運動のエネルギー (コーケやん)
2012-04-19 01:24:33
こまかなとこをよく見て考えているようで、何となく分かる気がします。少々長くなっても防潮堤、防波堤の記事をこれからもよろしくお願いします。
防潮堤の受ける圧力がダムと水の深さにおいては同じだとは思いますが、私見では運動の圧力を直接受ける点では防潮堤の方が桁違いの強い圧力を受けると思っています。コンクリートにかかる津波の圧力、つまり運動のエネルギー、破壊のエネルギーに思いを巡らしているところです。
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Unknown ( )
2012-04-28 21:27:14
釜石市民ですが、
実際防波堤のお陰で第一波の衝撃を減少させ、津波被害地域が縮小されたと思いますし、犠牲者の減少に一役買ったと思われます。
それに、他の復興工事も並行して行われており文句ありません。あまり簡単に政治家を悪く言うのはどうかと思います。休みなしで働いてるんですから。
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Unknown (Unknown)
2012-06-07 18:42:18
ようは費用対効果の問題でしょう・・。
津波がまた数百年ないにくることがわかっている場所に住むのは私はどうかと思います。
未来の住人につけを払わせることになりますよ。
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はじめまして。 (ヤブキレン)
2012-12-13 08:06:37
はじめまして。
以前から拝読させて頂いておりましたが、昨日、私のフェイスブックで記事を取り上げさせて頂きました。

http://www.facebook.com/ren.yabuki

宜しく御願い致します。
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