環境講演会のご案内です。今夜のNHKのニュースで鳥取県東部沿岸土砂管理協議会のことが流れていましたね。年々細っていく砂浜海岸のこと、対策としてのサンドリサイクルのことなど、海岸工学の専門家でいらっしゃる松原先生にお話を伺います。美しい鳥取の砂浜と鳥取砂丘を守るために皆で一緒に考えましょう!
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鳥取の『雨』と文化について考える第19回講演会
「鳥取の砂浜海岸」
- 白砂青松を次世代に残すために -
日 時:平成20年 8月 23日(土)13:30~16:00
開催場所:放送大学鳥取学習センター講義室
(鳥取市役所駅南庁舎5階) 鳥取市富安2丁目138-4
講 師:鳥取大学大学院 工学研究科
社会基盤工学専攻 松原雄平教授
参加費 : 無料
主 催: NPO法人 鳥取環境市民会議 TEL 090-4694-0575
【講演要旨 講師より】
鳥取県は、東西129kmに及ぶ海岸線を有している。長さ100km以上と聞けば、相当に長い海岸線を持っている県と受け止められるかもしれない。しかし、我が国の海岸線の総延長、約38000kmから見ると0.2%に過ぎず、都道府県別の長 さでは最短である。全国一短い鳥取の海岸ではあるが、東部の岩美・浦富海岸から、西部の弓ヶ浜海岸まで、砂浜、礫浜あるいは岩礁海岸と、多種多様な海岸模様が見られる。 なかでも全体の約6割を占める砂浜海岸には、広大なスケールで展開する鳥取砂丘、神話と伝説の舞台となる白兎海岸、白砂青松の北条海岸、そして出雲風土記に現れる皆生海岸があり、山陰の風土が高密度に息づいている。
しかし、残念なことに、近年、県内の砂浜海岸において侵食が進み、砂浜が急速に減少しつつある。たとえば鳥取砂丘前面の海岸線の変化を航空写真で調べると、昭和22年から平成15年の50年間に、40mから50m程度、海岸線が後退し砂浜が減少していることがわかる。県内の海岸で失われた砂浜面積の大きさは全国で第7位に、それを海岸線延長で割った平均侵食量では、なんと全国でワー スト1になる。有形無形の自然そして文化資産が連続する海岸が、急速に消えゆきつつある、これが鳥取県の海岸の現状である。このような状況は、程度の差こそあれ各都道府県で共通して見られることであり、国土保全という観点から極めて 深刻な問題といえる。
これまで鳥取県は、県内で発生する海岸侵食問題に対して、その都度、担当部署が個別に保全策を図ってきた。たとえば、防風林の前面の海浜が侵食された場合、農林部が単独に、最新の知見と技術とで最適な侵食防止対策を図っていた。 しかしながら、所轄の部課が抱える問題に対して、河川課、空港港湾課、林務課、水産課などの関係部課が横断的に連携して対応する組織体制には、必ずしも成り得ていなかった。こうした状況に対して、県は、全国に先駆けて、新しい海岸管理 制度「鳥取沿岸における総合的土砂管理ガイドライン」を策定した。これは、海岸侵食・堆積などの問題に対して、土木、農林、などの各所管毎の単独対応でなく、横断的に情報交換を図り、連携して鳥取県の海岸を守ろうという画期的な制度である。さらに、この海岸管理のガイドラインには、単に施策を実施するのみでなく、その効果を定期的な海岸調査(モニタリング)で検証し改善につなげる、いわゆるPDCA のサイクルが盛り込まれている。サイクルが進むにつれて,成果がスパイラルアップ してゆくことを謳っていることも特筆すべきであろう。
山陰の冬季風浪はすさまじく、その自然の営力がもたらす海浜の変化を食い止めようとすることは、並大抵のことではない。この度の鳥取県のガイドライン策定は、次世代に素晴らしい自然資産を残すために、人的・物的資源をつぎ込む決意・覚悟を あらわにしたと受け止めることができる。他県からも大きな関心をもってその成果を 見守られているだけに、鳥取県の海岸保全事業に大きな成果となることを期待したい。県民,市民の皆さんも、鳥取の海岸に足を運んでいただき、そのかけがえない資産価値を再確認いただくとともに、ガイドラインの成果に注目いただければと思う。
(鳥取沿岸の総合的な土砂管理ガイドライン検討委員会 委員長)
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