長尾真(「わかる」とは何か,岩波新書2001)によれば、「わかる」ということには、以下の三層構造があるという。
①言語の範囲内で理解する「第1レベル」
②文が述べている対象世界との関係で理解する「第2レベル」
③自分の知識、経験、感覚と照らして理解する「第3レベル」
ううむ。抽象度が高くて、ようわからん。
ここで、この枠組を用い、遺伝子組み換え表示制度パンフレットにおける「わからない」言葉を、実証的に検証、分類を試みた研究がある(科学技術に関するメッセージ作成の留意点、電力中央研究所研究報告Y01002 平成13年7月)。その結果をみて、なんとなく「わかって」きた。
●遺伝子組み換え表示制度パンフレットにおける「わからない」言葉の例
第1レベルと分類された語句の事例: ほ場、デキストリン、異性化液糖
第2レベルと分類された語句の事例: 遺伝子組み換え不分別、閉鎖系温室、病気に強い
第3レベルと分類された語句の事例: 表示義務はありません、安全性が確認されている
そうか。こういうことか。
①わからない第1レベルとは・・・「言語の意味が不明」
=「そもそも言葉の意味が理解できない。何言ってんだか、想像すらできない」
例→「『デキストリン』って、いったい何?」
②わからない第2レベルとは・・・「自分の理解と発言者の説明とが一致するか不明」
=「文字面からなんとなくイメージは浮かぶが、そのイメージが、発言者が実際に示したかったモノや概念と一致しているかどうか、確信が得られない。」
例→「えーと、『閉鎖系温室』って、密閉されて外部と空気が行き来しないガラスとかの温室のことかなぁ。でも、ほんとに、『閉鎖系温室』の実物って、そういうものなのかなぁ?」
③わからない第3レベルとは・・・「発言の信憑性、論理整合性が不明」
=「言葉の意味はわかるが、なぜそういえるのかの背景や根拠、発言者の意図が読めない」
例→「どうして『表示義務はありません』で許されるんだ! 『安全性確認してます』って、どうしてそういい切れるんだよ!」
【ディベーターへの教訓】
1.①のレベルでは、専門用語は必ず解説しましょうということ。遺伝子組み換え論題や原発論題を経験した皆さんは、とっくにご案内のこととは思うが。
2.②のレベルでは、皆さんの発言を聞いてジャッジの頭に浮かぶイメージは、あなたの伝えたい内容とは違っているかもしれないということを、肝に銘じておくこと。その差異を埋めるのは、理解を促進するイメージ、すなわち「たとえ話(実例、仮想例)」を活用することが有効。
3.③のレベルでは、主張には論理もしくは公表資料を証拠として提出することで、客観性を持たせるよう、最大限努力すること。基本中の基本。
だから!
秋季大会で「総合学習は生徒の自主性を育てます」と、“不用意”に仰らないで頂きたい。
→私にとっては、「総合学習」という語句にレベル②の問題が発生する、
→ほとんどすべてのジャッジは、レベル③の問題を看過してはくれない、
ので、ご注意の程を。
では、各種大会でのみなさんのご健闘を心より祈りつつ、かつまた、明後日、成蹊大学でお会いできることを楽しみに。
①言語の範囲内で理解する「第1レベル」
②文が述べている対象世界との関係で理解する「第2レベル」
③自分の知識、経験、感覚と照らして理解する「第3レベル」
ううむ。抽象度が高くて、ようわからん。
ここで、この枠組を用い、遺伝子組み換え表示制度パンフレットにおける「わからない」言葉を、実証的に検証、分類を試みた研究がある(科学技術に関するメッセージ作成の留意点、電力中央研究所研究報告Y01002 平成13年7月)。その結果をみて、なんとなく「わかって」きた。
●遺伝子組み換え表示制度パンフレットにおける「わからない」言葉の例
第1レベルと分類された語句の事例: ほ場、デキストリン、異性化液糖
第2レベルと分類された語句の事例: 遺伝子組み換え不分別、閉鎖系温室、病気に強い
第3レベルと分類された語句の事例: 表示義務はありません、安全性が確認されている
そうか。こういうことか。
①わからない第1レベルとは・・・「言語の意味が不明」
=「そもそも言葉の意味が理解できない。何言ってんだか、想像すらできない」
例→「『デキストリン』って、いったい何?」
②わからない第2レベルとは・・・「自分の理解と発言者の説明とが一致するか不明」
=「文字面からなんとなくイメージは浮かぶが、そのイメージが、発言者が実際に示したかったモノや概念と一致しているかどうか、確信が得られない。」
例→「えーと、『閉鎖系温室』って、密閉されて外部と空気が行き来しないガラスとかの温室のことかなぁ。でも、ほんとに、『閉鎖系温室』の実物って、そういうものなのかなぁ?」
③わからない第3レベルとは・・・「発言の信憑性、論理整合性が不明」
=「言葉の意味はわかるが、なぜそういえるのかの背景や根拠、発言者の意図が読めない」
例→「どうして『表示義務はありません』で許されるんだ! 『安全性確認してます』って、どうしてそういい切れるんだよ!」
【ディベーターへの教訓】
1.①のレベルでは、専門用語は必ず解説しましょうということ。遺伝子組み換え論題や原発論題を経験した皆さんは、とっくにご案内のこととは思うが。
2.②のレベルでは、皆さんの発言を聞いてジャッジの頭に浮かぶイメージは、あなたの伝えたい内容とは違っているかもしれないということを、肝に銘じておくこと。その差異を埋めるのは、理解を促進するイメージ、すなわち「たとえ話(実例、仮想例)」を活用することが有効。
3.③のレベルでは、主張には論理もしくは公表資料を証拠として提出することで、客観性を持たせるよう、最大限努力すること。基本中の基本。
だから!
秋季大会で「総合学習は生徒の自主性を育てます」と、“不用意”に仰らないで頂きたい。
→私にとっては、「総合学習」という語句にレベル②の問題が発生する、
→ほとんどすべてのジャッジは、レベル③の問題を看過してはくれない、
ので、ご注意の程を。
では、各種大会でのみなさんのご健闘を心より祈りつつ、かつまた、明後日、成蹊大学でお会いできることを楽しみに。