ジョゼと虎と魚たち(通常版)角川エンタテインメントこのアイテムの詳細を見る |
『ジョゼと虎と魚たち』、観ました。
ある日、大学生の恒夫は、坂道を暴走する乳母車に乗った少女に遭遇する。
脚の不自由な彼女は、自分を“ジョゼ”と名のり、手際よく料理した食事を
恒夫に振る舞う。次第に恒夫はユーモラスで不思議な性格のジョゼに
惹かれていく‥‥。
オイラのワイフが言うことにゃあ、「絶対的に原作をオススメする」って
言うけれど、本を読まないオイラは“聞く耳持たぬ”(笑)。やっぱり小説よりも
映画だネ(笑)。映画が始まって、ものの一分足らずで物語の中へ引きずり込む
切り口の上手さ、改めて“日本語の美しさ”を思い知らされる脚本の素晴らしさ
(もしかしたら田辺聖子の原作が良いのかもしれませんが‥)、それから
若き主演コンビの妻夫木聡と池脇千鶴も透明感のある演技で良いカンジ。
この映画の凄さは観る者すべてが“障害者だが純朴なるヒロイン”に「好奇心」や
「憐れみ」を抱きつつも、いつしかその感情が「深い愛情」へと変化しているところ。
遠い「汚(けが)れなきもの」への憧れ‥‥、それはバージンのメス犬にしか
興味を示さないバイト先の店長しかり、人なら誰もが知らず知らずに持っている
感情なのかもしれないね。
さて、映画は“寓話的”であり、またどこか“郷愁的”なイメージに溢れている。
乳母車に取り付けられたスケボー、青空に浮かぶ綿菓子のような白い雲、
忘れ去られたウサギのぬいぐるみ、サガンの小説、閑散として誰もしない水族館、
あの日の砂浜で拾った貝殻‥‥、それら全てのディテールは触れば
壊れてしまいそうに脆(もろ)く、見つめれば消えてしまいそうに儚(はかな)い、
まか不思議な幻想空間を作りだす。そして、この映画を北野武の『あの夏、
いちばん静かな海。』とダブってみえたのはボクだけだろうか‥‥。
両作品に共通するのは、社会に疎外された障害者の視点から普段ボクらが
気付かずに通り過ぎていってしまう、小さくとも“かけがえのない幸せ”の
発見だった。それはお金で買うことも、人から分けてもらうこともできない‥‥
人が人を愛し、人が人から愛される喜びなんだね。
たとえ、それが永遠に続くものではなかったとしても‥‥、
たとえ、それが明日に終わる運命だったとしても‥‥、
褪せることのない思い出として、それを支えに人は生きてゆける。
少なくともボクの知る誰よりもジョゼは“人生を前向き”に生きていた‥‥。
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