肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『南極日誌』、観ました。

2006-02-26 21:34:41 | 映画(な行)

南極日誌 ◆20%OFF!

 『南極日誌』、映画館で観ました。
南極の到達不能点を目指す6人の探検隊。彼らは80年前の英国探検隊によって
書かれた日誌を発見するが、その後日誌に書かれているアクシデントに次々と
遭遇し……。
 つい先だって『皇帝ペンギン』を観て、南極に住む彼らの“驚異的な生命力”に
驚かされてきたばかり…。そう思えば、この『南極日誌』出てくる人間たちが
何と“ひ弱でちっぽけな存在“にみえることよ(笑)。きっと、人間たちの持つ
エゴや名誉欲や虚栄心が、ペンギンたちとの決定的な違いとして、人間を
“醜い生き物”に変えているんだろうね。
 さて、今作に描かれる「南極の恐怖」とは“肉体的な限界”というよりも、
むしろ“心の内面に潜んだ狂気”‥‥、見渡す限りの氷の世界、頭上の太陽は
半年間も空に上って沈まない。歩けど歩けど景色は変わらず、ただ疲労だけが
確実に蓄積されていく。一時間歩いたのか…、あるいは半日歩いたのか…、
彼らはいつ果てるとも分からぬ“袋小路”に迷い込んでいくわけだ。
結局、今作における「到達不能点」とは、人知を超える“神の領域”のこと。
そこに行けば“何か”が変わる…。一団を率いる主人公もまた、過去の
トラウマから解放され、自身も強くなれると“幻想”を抱く。しかし、彼は
気付かなかったんだ。人は“神(完璧な存在?)”にはなれやしない…、そして、
時に己の弱さを認め、“引き返す勇気”も強さの一つだということを‥‥。
 最後に、この映画を総括すると、南極の広大な大地を舞台にして、人間の
狂気を描く“着眼点の鋭さ”はさすが(韓国映画)だと思った。ただ、一切の
スペクタクルを封印し、空の‘青’と大地の‘白’が延々と続く単調な映像は、
もう少しシナリオ面に工夫と、凹凸があっても良かったかなと‥‥。
それから、ベースキャンプに待機する隊員が“女性である必要性”が、あまり
感じられなかったのが残念。ひとつひとつの台詞は非常に考えられているだけに、
全体を通してみた時の“バランスの悪さ”が惜しまれる作品だ。

 



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