『蝉しぐれ』、映画館で観ました。
江戸時代、下級武士の養父によって育てられた牧文四郎。彼は父を誰よりも
尊敬していたが、その父は切腹の運命に遭ってしまう。謀反人の子としての
汚名を着せられた文四郎は、母を助けながら、質素に暮らしていく。そこには
変わらず彼に接する幼なじみたちの姿もあった。数年後、文四郎は名誉回復の
機会を言い渡されるのだが‥‥。
絵のように広がる田園風景、美しい藁(わら)ぶき屋根のシルエット‥‥、
オープニングから大スクリーンに映し出される映像美を目の当たりにして、
「今、ボクは“日本映画”を観ているんだ」という実感が沸いてくる。と同時に、
それぞれの役者から発せられる台詞の数々は(その多くが聞き取りやすく
“現代語”に訳されてはいるが…)、改めて日本語の持つ美しさと優しさを
感じずにはいられない。聞けば、原作は『たそがれ清兵衛』『隠し剣、鬼の爪』
と同じ藤沢周平だという。映画の出来はともかくとして、物語自体の好みで
いえば、ボクは断然こちらの方でありました。
さて、恐らくこの映画で、賛否両論分かれそうなのが“キャスティング”。
今回、ボクは映画サークルの仲間たちと観たのだけど、その後のオフ会では
「ふかわりょうがチョットね‥」とか、「今田耕司がぶち壊し‥」などと
仲間たちは毒舌ぶりを展開……(笑)。ただ、ボクの解釈は、主人公を含めた
幼なじみの三人組‥‥ふざけ合ったり、語り合ったりする“友情の温かさ”を
描く上で、彼らのコミカルが必要だったのかなと…。普段、TVのバラエティーを
観ないことが幸いしてか、今回彼らの登場も、ボクはあまり違和感なかったかな。
一方、ボクがこの映画を観て良かったのは、口づけひとつないまま展開され
描かれる“純愛の情”と、膝下さえ見せないで表現される木村佳乃の
“日本的な美しさ”‥‥。正直、これまでボクは「女優」としての木村佳乃に、
あまり魅力を感じていなかったのだけど、今作では焦らしに焦らされた挙句に、
彼女らしい清楚で理知的なお姿を御披露する。演技力のマイナス面(?)を
カバーして余りあるほどの“存在感”を発揮していました。