肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『裁かるるジャンヌ/裁かるゝジャンヌ (クリティカル・エディション)』、観ました。

2006-06-09 20:59:13 | 映画(さ行)

裁かるるジャンヌ クリティカル・エディション ◆20%OFF!

 『裁かるるジャンヌ(クリティカル・エディション)』、観ました。
英国の侵略からフランスを救った少女ジャンヌ・ダルクは、奸計にはまって
英国軍に捕らえられる。少女が宗教裁判によって火刑に処され、肉体が朽ち
果てるまでを崇高に描く‥‥。
 いまだかつてこれほど“神の存在”を感じた映画を観たことがない‥‥。
1928年製作にして、その完成度の高さたるや近代映画のそれを遥かに凌ぐ。
斬新なカメラワークと前衛的な構図の素晴らしさ、それらを僅かな隙なく
並び替え、はめ込んでいく編集の巧み。更には、極限まで省略した台詞と
監督カール・ドライヤーの研ぎ澄まされた演出の妙。ジャンヌ演じた主演
女優ルイーズ・ルネ・ファルコネッティの圧倒的なカリスマが、観る者の
魂を揺さぶる。「無声映画」という音のない世界だからこそ伝わる臨場感と
緊張感、、まさに“サイレント時代の頂点”に位置する驚くべき最高傑作だ。
勿論、“宗教映画”としても…、“法廷映画”としても…、今尚この映画を
越える作品は作られていない。『裁かるるジャンヌ』‥‥恐らくは今後、
この作品の名がボクの“生涯のベスト10”に刻まれることは間違いない。
 映画はジャンヌ・ダルクの宗教裁判、その“最後の一日”を追いながらも、
彼女の“一途なまでの信仰心”を描いている。「裁判」という名の“拷問”で、
「信仰」という名の“言葉の暴力”に叩かれゆくジャンヌ・ダルク。その澄んだ
瞳からこぼれ落ちる涙に清き彼女の“絶望”を知る。しかし、それでも醜く
歪んだあざけり顔で容赦ない罵倒をやめない司祭の醜悪…、これでもか
これでもかと連続する“クローズアップ撮影”が、一層のおぞましさを強調する。
一方、そんな彼女を僅かに支えるのは“純粋な神への信仰心”…。窓の
格子が床に“クロス(十字架)”の影を映す時…、“鳩の群れ”が教会の屋根に
舞い下りる時…、例え、そこに神の姿が見えなくとも、それは紛れもなく
ジャンヌが“神を感じた瞬間”だった。ボクは信仰を持たない無神論者だけど、
もしも“神”があるのなら、きっとここに描かれたようなものなんだろう。
それ(神)は、姿があるようで姿がない。だけど、そこに居ないようでいて
そこに居る。信じるものにしか見えない、感じない。いや、例え、感じたと
しても直接手を貸して助けてはくれない。いつもそばで優しく見守ってくれる。
挫けそうになった時、倒れそうになった時、我々の“心の支え”となるんだ。

 



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