現代へのまなざし

日本とはなにかを探求します。

安全保障法制に見られる無責任体質-安倍政権は無責任の体系-

2015-08-04 22:54:25 | 日記
(要旨)
・軍国時代の日本の軍人等について、政治学者の丸山真男が「無責任の体系」と分析している。
・戦後、民主主義を基本的な価値観としている日本ではあるが、戦前と同様に「無責任の体系」が未だに生き延びている。
・「無責任の体系」から脱却し、民主主義を社会に浸透させることが、先進国としての日本の責務である。

(本文)
 著名な政治学者の丸山真男は、第二次世界大戦に突入した日本の政治的状況について分析を行っている。その分析で秀逸なものが「無責任の体系」と言われるものである。これは、当時、軍部で権力を握っていた軍人の精神形態を分析したものである。その概要は次のとおりである。
 まず一点目として、「国家活動が国家を超えた道義的基準に服しないのは、主権者が「無」よりの決断者だからではなく、主権者自らのうちに絶対的価値が体現しているからである。」というものだ。ここで書かれている主権者とは、日本国を統治するとされた万世一系の天皇である。
 そして、その天皇を頂いた軍人が東京裁判等で述べた自己弁護について分析すると、一つは、既成事実への服従であり他の一つは権限への逃避である、ということがわかった。「既成事実への屈服」とは、既に現実が形成せられたということがそれを結局において是認する根拠となることであり、既にきまった政策には従わざるをえなかった、というものである。そして、もう一つの「権限への逃避」とは、法令で規定された職務権限についてはそれを果たすが、権限に属さない部分については関与できない、というものである。
 これこそが、今の時代にも生きている「無責任の体系」なのである。

 この「無責任の体系」は現在の安倍政権に顕著に見られる。通常の内閣総理大臣にとっては、絶対的価値とは日本国憲法であり、憲法に規定されている「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という三大原則が絶対的価値となるのである。しかし、この憲法を押しつけ憲法として否定する安倍総理にとっての絶対的価値とは何であろうか。安倍晋三にとっての絶対的価値とは祖父の岸信介であろう(ちなみに岸信介は総理時代にアメリカ合衆国に追従する日本を確立している。)。既に亡くなった祖父の考えを絶対的価値とするならば、既に死んだ祖父は自分の中にしか存在しないため、すべての自分の行動が正当化され、誰も止める者がいなくなるのである。まさに、独裁者の内面が既に安倍晋三には築き上げられている。
 しかし、一方で、官僚が実務を担っており、官僚達が安倍の暴走を止めると期待する人達も多いのではないだろうか。だが、「無責任の体系」が暴走を止めることはないのである。
 まず、閣僚をはじめとする安倍の周辺の政治家は安倍により任命されており、安倍の決定に反対しない、あるいはできない。次に官僚達であるが、官僚達が総理の判断はおかしいと認識していても、官僚にとっては総理が絶対的権威(選挙で選ばれた議員が選んだ総理)であるため、総理の決断には明確に反対はできない。そして、総理の決断を「既成事実」として、その決断に屈服し、自分達官僚は行政を運営するものの、最終的には内閣総理大臣にその権限があるため、行政運営の方針決定に関する権限は自分達に存在せず(このため、大きな問題が発生しても官僚達は自分達には職務権限がなく関与できなかったとして責任を取らない)、総理に従うしかないということになるのである。このように「無責任の体系」に支配されている霞ヶ関では官僚が疑問に思っていることでも総理の決断で前に進んでいく。現在、国民の多くが反対しており、また憲法学者が憲法違反だと主張している安全保障法案についても、前述のとおり、総理の指示により(憲法違反であるろうが)法律案が作成され、無責任な形で突き進むのである。

 何を絶対的な価値として行政が進められているのかという考察、既存事実に対する不服従、そして権限に囚われることなく日本の将来を展望した意見を陳述すること。こういったことが、今の日本で必要になっているのであろう。安倍政権の無責任の体系に対する批判、自由で民主主義的な社会を構築するために何が必要か、そういったことを考えることが今の日本人に求められているのである。

 神話を信じるのは古代のソフィスティケイトされていない社会である。絶対的な価値とは何かを常に考察し、既存事実に異議を申し立て、自分の権限の中で萎縮しないこと、このような姿勢が「無責任の体系」から脱却し、民主主義を社会に浸透させるために重要なことである。
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