異視点

世の中のなぜ?人生のなぜ?宇宙のなぜ?を垣間見ましょう!

物語:おたまじゃくしをくれた白キツネ3.

2011-03-28 12:30:00 | おたまじゃくしをくれた白キツネ(物語)
キツネは、流れていく小川を追いかけるように少し駆けてから立ちすくんだ

「小僧よ、おれは孤独なのだ
 今の俺は、この流れていく水さえもいとおしい」


「ところで俺には
 帰る方角がわからない」
狐は途方に暮れている

「お坊さんがここで迷ってしまった理由は何なんでしょうね?」

「うーん、だいぶ昔の話になるな
 500年前、この地に
 一人の旅の修行僧が訪ねてきた
 その者はわたしに一つ教えていただきたいことがあると言い、こう尋ねたのだ 
『過去を捨て、未来を捨てて一つのことに心を集中させれば、過去に為した罪を解消させることができましょうか』と」

「わたしは得意気にこう答えた。「そのとおり、過去を離れ、未来を離れてただ一つのことに集中すれば、過去に為した行為は消え去るのだ」と、

 それからどういうわけか、わたしはこの森の中から出られなくなり、狐となり500年迷い続けているのだ」
そう言って、狐は右の前足で自分の顔をこする

この森一面を闇が覆いつくそうとしていた

森の主役が夕日からお月様へ、変えられようとしている

「実を言うと、僕はいま私の背中の方角からやってきました。ですからこの道をまっすぐ 反対の方へ戻れば、村に出られます」
僕はこの狐さんを助けたいという思いにかられた。
いや、もしかするとここから早く帰りたいという思いのほうが強かったのかもしれないが、
お月さんが出たことで僕は急き立てられる思いがしたのだ

「何?反対の方へ戻れば、村に出られる?」

「反対 反対 逆 
 ・・・
 そうか!
 坊主ありがとう
 そういうことだったか!!!」

 過去を離れ、未来を離れて一つのことに集中しても、過去に為した行為は消えないと答えればよかったのか

 そんな単純な行為で魔法のようなことは起きないと

 水の入ったお椀をこぼしたならば、それをもとに戻すことはできないように

 過去に為した事は、もう帰らない

 もう一度お椀にお水を入れるということを為すしか方法はないということか

 ありがとう」
狐さんの顔にはじめて笑みがこぼれた

「その蛙大事にしてやってくれ
 わたしもそう
 おたまじゃくしから蛙に変態するように
 キツネからかつての修行僧へと変態するであろう」

そう言って、狐は発光しながら雲散霧消したのであった。

お月さんの下で、白い煙がふわふわと浮いていた 


あれは、わたしがまだおさない子供のことだった

あの狐の言ったことが、還暦を迎えたいま

ようやくわかってきたような気がする

不落因果 不昧因果


語句の解説:不落因果~因果律の制約を受けないでしょうか
       不昧因果~因果律の制約は眩ますことができない
       臨済禅の言葉です。500転生の間野狐として迷っていた
       者の問いかけの言葉が
       「悟った者は因果律の制約を受けないのでしょうか?」
       それにに対する和尚さんの答えが
       「因果律の制約は眩ますことができない」とあります。





 例えば、盗みをなした者が、盗みをなしたという行為の結果として警察に捕まる。
たとえ何かを悟ることによって気持ちが楽になったとしても、盗みをなしたという行為の結果として警察に捕まるのは捕まりますよね

本物語に出てくる白キツネは、500年前修行者だったときに生半可な悟りしか得ていなかった。それで間違った答えを伝えたことによって、相手の修行者を迷わせてしまったわけです。その迷いの行為の反作用としてキツネに変じてしまい500年ある森のなかで迷っていました。

かくして500年後、偶然か、み仏の思し召しか、突然現れた少年の深読みしない素直な考え方にはっと悟らされ、思わぬ救いを得たのでした。その悟りとは、

      因果の理法はくらますことができない

この物語は、3月24日「社会や国家の人生を考えるということ」という記事に対応しています。(こちらをクリック)そちらもご覧いただくことで物語の言わんとしていることがより明らかになると思います。

注:この物語はフィクションです
  ちなみに、主人公の少年はわたくしではありません

人気ブログランキングへ



物語:おたまじゃくしをくれた白キツネ2.

2011-03-27 11:00:00 | おたまじゃくしをくれた白キツネ(物語)
昨日、あまりにも唐突に始めてしまいましたこの物語
PCのキーボードに手を置くと、自然に文章が沸き出でてきて、いったいどんな内容になるか
私自身にもわからないまま出来上がった原稿

読み返してみて、内容的に問題ないと判断したので、それを三分割したものの第一話でした
普段、内容的に問題のある場合は出さないようにしています

例えば、「この風は神風か」という3月17日の記事で最後にほのめかした

「チェルノブイリ・阪神大震災・東日本大震災に共通する一つのキーワード」
については、内容的にちょっと公開を躊躇しまして・・・・・
いまのところ、お蔵入りにしています

今回の物語は、禅問答のような問いかけから
何かを示唆しようという意図があるようです

最後まで行かないと、よく意味は解らないかもしれませんが
さて、続きをいってみたいと思います。



「おい、小僧
 さあどうするのだ
 その蛙を食えるのか?
 それともおまえはわたしに答えを与えてくれるというのだろうか」
狐が僕を問い詰める

「お坊さん、僕にはかわいそうでこの蛙を食べることができません」

「小僧、おまえは優しいんだな
 その優しさが命取りになることもわからないのか
 くくく」

「小僧、ちょっと来い」
狐が僕の手を引いた。僕はまるで宙を浮くように軽々と持ち上げられ、川べりに尻餅をついた。狐は怒ったんだろうか。僕は少し怖くなった

「俺は、毎日この小川のほとりでただ川のせせらぎを見つめて
 途方にくれているのだ」
透明でさらさらとながれる清水が狐の顔を映し出していた

「やい、小僧
 この水はどこから来たのか?」

「それはもっと上の方から流れてきているのではないでしょうか」
僕は当たり前のことを当たり前のように答える

「ではこの水はどこへ去っていくのであろうか?」

「もっと下の方へと去っていくと思いますよ」

「私がこの小川に小便をしたら、下流で洗濯をしている人は
 困らないだろうか?」

「おそらくその人は小便で汚れた水で洗濯をすることになるから
 白いシャツなんかは黄色くなるんじゃないでしょうか」

「わたしはしてしまった」狐が顔を赤らめた

「は?何をですか」

「だから、その小便をだよ」

「それを気にしているのですか?」

「当たり前だ」
そう答える狐の顔を見て、僕はだんだん可笑しくなってきた

「小僧よ、その気にする思いから私が離れれば
 小便の件は解決するだろうか?」

「お坊さんは気が楽になるでしょうね」

「では下流で洗濯をした者はどうだ?」

「白いシャツを汚してしまうことに変わりはないでしょう」

「では、もし小便をして川を汚した罪というものがあるならば、それは誰に来るか?」

「お坊さん、洗濯をしていた人は迷惑を被ることになりますから、悪いのは小便をした人になります

お坊さんがその気にする心をやめようがやめまいが、下流の人が汚れた水で洗濯するという結果は変えられないのですから」
僕は、狐に対し、大人が子供を諭すときのような気分で答えた

「おい、小僧
 いったい、この小川の流れを元に戻すことはできないかな」
狐が小川を悲しそうにみつめた

「お坊さん、それはできないと思います。
 もう流れていってしまってますから
 過ぎ去った過去は過去ですので、もう元に戻すことはできないのではないでしょうか」
 僕がそういうと狐は2、3歩かけだして「うわーん」といううなり声をあげた

そのうなり声に答えるようにカラスが遠くの空で「カー、カー」と鳴いた
僕が空を見上げるとカラスが大空をかけていくのが見える
そして視線を狐の方へ下ろすと
 
夕日が狐の背中をいたわるように照らしていた

つづく

人気ブログランキングへ


物語:おたまじゃくしをくれた白キツネ1.

2011-03-26 11:11:11 | おたまじゃくしをくれた白キツネ(物語)
「公案」

深い森を出ると、そこに小川が流れていた。

ふと見ると、一人の袈裟衣を着た男が、川べりに座り、両の手で水をすくっていた。

その男にみつからないようしばらく様子をみようと思ったが、

彼は、まんじりとこちらを見て、その両の目をかっと見開きこう言った

「何奴!いづこへ向かう?」

僕は驚いた。

袈裟衣を着た男だと思ったが、そいつが狐のように見えてきたからだ

錯覚かな・・・

「あ、ああ、あ、
・・・
道に迷ってしまって」

そうとだけ答えるのが精一杯だった。

「あなたはお坊さんですか?」

そう尋ねると、その袈裟衣を着た男がこう答えた。

「ただの狐だ」


「狐には見えませんが」

「おまえの目は節穴か
 俺にかまうとろくなことがない」

「ここで何をしているのですか」

「わたしもここで迷っているのだ」
キツネはうつむきかげんで首を振った

「悟りを開いたと思ったかつての私

 なぜこのようなところで腹をすかしているのだろう
 おい、おまえその答えを教えてくれ」

「はい、お坊さん
 僕は、まだ子供ですし、そんなことはあいにく答えられません」

「おまえが答えずに私はどうすればよいのか」

「あなたはいつからここにいるのですか」

「500年ほど経っただろうか」

「早く家に帰ればよいではないですか」

「だから私は迷っていると言っているだろう」

「おい小僧、おまえにいいものをやろう」
そう言ってキツネが僕に渡したものは、おたまじゃくしから蛙に変態しかかっている生きものだった

「その蛙をおまえが食うか
 それとも、俺が、おまえを食うか
 さあ、どちらか一つを選ぶがよい」
わけのわからない気色の悪い笑みを浮かべたキツネの姿に
僕は身震いが止まらなかった。

何をどう答えればいいんだろう
そう思うと家で、夕飯の支度をしているだろう
母ちゃんのことをふと思い出し
急にさびしくなった

つづく

人気ブログランキングへ