野老の里

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奥武蔵へようこそ 2023年9月24日 武川岳大栗沢コースを歩く

2023年09月28日 | 奥武蔵へようこそ
(武川岳東尾根)

埼玉県飯能市と横瀬町との境にある武川岳(1052)を地形図で見ると東西南北に尾根を延ばしていることがわかる。その四方の尾根にはそれぞれ登山道が付けられており、特に北の二子山からの縦走ルートと南の前武川岳(1003)への縦走ルートは登山者が多い。他方東西を結ぶ尾根は西の妻坂峠に至るルートはまだそれなりの登山者がいるが、東の名栗げんきプラザへ下りるルートを歩く人はあまり見かけない。理由としては名栗げんきプラザから尾根伝いに歩くコースは「山と高原地図」(昭文社)だと難路扱いになっていること、大栗沢へ下るコースは長い林道歩きを強いられることにあるのではないかと推測される。これまで武川岳の東尾根については2016年の12月に名栗げんきプラザからの尾根コースを歩いたことがあった。今回は一般ルートである大栗沢コースを歩いてみたい。そこで浅間神社経由で二子山に登り、武川岳まで縦走して大栗沢コースを下ることとした。名栗げんきプラザへ出た後は長岩峠を越えて正丸駅へと出る予定だ。

冨士浅間神社を経て二子山
朝小手指駅で電車に乗り遅れて8時という普段からすると遅い時間に芦ヶ久保駅に着く。ホームから下の広場を見下ろすと長いこと空き家状態だった売店が綺麗に整備されている。駅を出て売店だった建物を覗くと綺麗な休憩所「あしがくぼStation Base」に様変わりしていた。昨年の10月に訪れた時はまだ廃墟状態だったのでこの変化は嬉しい限りだ。休憩所脇で準備を整え、いざ出発。広場から続く坂を下ると道の駅あしがくぼに併設された加工場の前を通る。道なりに行くと橋の所で砂利道へと変わる。2016年に歩いた時はまだ工事中であったが、今では整備された遊歩道となっている。歩き始めるとすぐにトンネルへと続く道が分かれる。ここは兵ノ沢コースの入口なので見送って更に先へと進む。落石注意の看板がある急斜面下を抜けるとキャンプ場施設の前で道が分かれる。左の道を上がると線路の保守作業中だが下を潜るトンネルは通れるようになっている。トンネルを抜けると冨士浅間神社と書かれた鳥居が立つ。鳥居の先右の斜面に浅間神社コースが上っている。ここからは急坂が続くので一息入れる。

(二子山浅間神社コース 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)





(あしがくぼStation Base)


(休憩所脇からの眺め)


(トンネル方面は兵ノ沢コースへ 浅間神社コースは右に入る)


(落石注意の看板が立つ急斜面脇を行く)


(富士浅間神社の鳥居)


(これより先はキャンプ場で立入禁止になっている)

まずは細い九十九折を上がる。元々頼りない細道なのだが前日まで降っていた雨のせいもあってか滑って斜面を転げ落ちそうで怖い。九十九折が終わると兵ノ沢に沿ってトラバースする。ここも斜めに傾いた細道だ。2016年に下って来たときは生きた心地がしなかったが、上りに使っても結構怖い。トラバースが終わると兵ノ沢の西にある沢地形を上がっていく。急傾斜の九十九折でここも体力的には厳しい。そのまま沢地形を上がっていくかと思いきや、トラバースしながら東に突き出た尾根の上に出る。尾根に出たからといって傾斜が緩くなったわけではなく、ただ転げ落ちる心配がなくなったにすぎない。ゴツゴツとした岩場が出てくると一段ときつい急坂でトラロープが張られた所もある。ここを登り切ると冨士浅間神社の拝殿前に出る。舌状に突き出た尾根の狭い所に建てられていて引きで写真を撮ることはできない。拝殿の後ろに回り込むと所々木に邪魔されるものの、なかなか眺めが良い。両神山から蓑山にかけて見渡せて眼下には秩父の街も一望できる。城峯山から延びる尾根の東端の向こうには榛名山までもが見える。

(ここのトラバースは踏み場が斜めになっていて通過が難しい)


(トラバース道を振り返るとキャンプ場が見える)


(沢地形を少しジグザグに登る 結構傾斜が急)


(尾根を登っていくと岩場が現れる)


(このトラロープの付けられた岩場を登り切れば浅間神社に出る)


(富士浅間神社)


(神社裏には石祠がある その脇からの眺めが良い)


(浅間神社裏からの眺め)

鳥居からここまででの間だけでもかなり汗を絞られたが、この先も急坂は続く。檜に覆われた小ピークを越え、更に急坂を登り切ると北に尾根が分かれる所に道標が立つ。やや細くなった尾根は傾斜が緩く息を整えるには都合がいい。傾斜が少しずつ増してくるとトラロープで通せんぼされた岩場に差し掛かる。登る分にはこの岩場を直接越えていけなくもないのだが、尾根の北側にもロープが張ってあり、岩場を回り込むことができる。この岩場の上に出ると人が十分に入れるほど大きな洞穴がある。といっても洞窟というよりは岩の積み重なった石室のように見える。その先の急斜面を登り切れば二子山雌岳に着く。駅から1時間半ほどで着いたがかなり疲労が激しい。2012年に登った兵ノ沢コースは雌岳の山頂直下だけが問題だったことと比べると急坂が断続的に現れるのが鬱陶しい。息を整えていると男性が二人雄岳へと向かって行った。

(檜に覆われた小ピーク)


(尾根が分かれる所に道標が立つ)


(途中フラットな尾根になる所もある)




(ロープで塞がれた岩場は東から回り込める)


(洞穴)


(山頂直下も厳しい登り)


(二子山雌岳頂上)

雌岳の南にある岩場から西のトラバース道へ移り、鞍部から急坂を登り返すと二子山雄岳(882.8)に着く。雌岳と同じく檜に覆われた山頂だが、南の岩場へ向かうと相変わらず眺めが良い。伊豆ヶ岳から武川岳を経て手前に焼山への尾根、奥に大持山から武甲山へと連なる尾根が見渡せる。武甲山は山崩れによる白い地肌が剥き出しになっていて増々痛々しい感じになっている。

(二子山雄岳頂上)


(岩場からの眺め)

武川岳へ縦走
岩場から山頂方面へ戻ると男性がこちらを眺めている。岩場からの眺めが良いことを伝えたのだが、トレラン愛好家の人たちはこの岩場の存在をあまり知らないようだ。二子山雄岳から大きく下る。途中大きなキノコが点々と生えている。ここのところ雨続きだったのでキノコが急成長したのだろう。急坂が終われば緩いアップダウンの尾根歩き。落葉樹の葉はまだ青々としている。今年は暑い日が続いていて本当にあと一月で紅葉するのだろうか。焼山沢への道を分け、急坂を登り切ると焼山(850)だ。2020年に訪れた段階で木の枝が煩くなって眺めが得にくく感じていたのだが、葉が茂っている現在では武甲山が一部望める程度で二子山方面の眺望は得られなくなってしまった。

(焼山から武川岳にかけての周辺図 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)





(大振りなキノコが点々と生えている)


(まだ葉は深い緑色をしている)


(焼山沢への道との分岐)


(落葉樹林の道が続く)


(焼山頂上)


(頂上からは武甲山が辛うじて望める)

焼山の山頂直下を除けば蔦岩山へ向かっては比較的緩やかなアップダウンが続く。途中林道が尾根を寸断している所があり、そこからは林道を歩いたほうが楽だ。道標がある所で再び尾根に上がると急坂が立ちはだかる。上部は岩場が露出しているため脇道が付けられているのだが、その脇道もだいぶ荒れている。岩場を直登していくと手を使わないとちょっと難しい部分もある。ここを登り切っても蔦岩山の北東の肩のような部分まではやや急な登りが続く。肩のような部分に出ると以前は武川岳から前武川岳にかけて眺めが得られた記憶があるのだが、現在は枝が伸びて眺望はほとんど得られなくなっていた。山頂直下の岩場を回り込むと蔦岩山(1004)に着く。ここは新緑か紅葉、または冬枯れの時期にしか歩いたことがなかったので、緑濃い時期は随分と薄暗く感じる。

(緩やかなアップダウンの道)


(尾根が寸断されている)


(無理に尾根に戻らず林道を行く)


(ここで尾根に復帰)


(岩場のある急坂)


(蔦岩山の北東の肩に出る かつてのような展望は無い)


(蔦岩山頂上直下の岩場)


(蔦岩山頂上)

武川岳へはそれほどアップダウンがきつくない。かつては武川岳が望める所もあったのだが、木が成長してすっかり暗い林になった。鞍部からやや急な坂を登り返すと緩やかな尾根に出る。新緑・紅葉の時期だと気分良く歩けるのだが、現在はまだ暗い林のままだ。そのまま緩く登ると広い武川岳(1052)の山頂に出る。定期的に草刈りでも入るのか下草が煩くなくてブルーシートなどを敷いて地べたで休憩を取るのも悪くない。でも幸いなことにベンチが空いていたので、カップラーメンを作って昼食を取ることにした。

(武川岳へも落葉樹が多い)


(武川岳頂上 下草の無いすっきりとした山頂だ)


(頂上の様子)

大栗沢コースを下る
昼食を取り終えるともう12時近くなっている。家族に残した計画書には14時半に正丸駅に着く予定としたのであまり余裕があるわけではない。しかしここまででかなり疲労していて落ち着いて周囲を観察できる余力が無いもの事実だ。安全策を採って山伏峠へ下ることも考えたが、途中までは歩いたことがある道だし、わからなければかつて歩いた尾根コースをそのまま下ればよいと考えて大栗沢コースを予定通り下ることにする。山頂から北東に延びる東尾根は落葉樹林が広がる緩斜面が続く。尾根が広く下りに採るとちょっと迷いそうだ。道標が立てられた岩場を過ぎると傾斜が少し急になる。すると途端に踏み跡が不明瞭になる。右手には南へ派生する尾根が下っているのも見えて、地図を確りと見ないと混乱しそうだ。

(武川岳東尾根への入口)


(東尾根に入ると最初は広く緩やかな尾根が続く)


(岩場の中に道標がある)


(ここから傾斜が急になる 道が不明瞭なので要注意)

明瞭な踏み跡が現れると傾斜も再度緩くなる。下生えのある所でも確り道が付けられていて整備状態は良い。尾根が分かれる所では右に明瞭な道がある。やや急な斜面を下りきるといくらか細くなったフラットな尾根が延びている。どこが分岐なのだろうかと思いながら歩いていると紫陽花らしき低木の中に道が付けられている。この道に入るとどんどん傾斜が増していく。低木帯を抜けてしばらく下ったところでスマートフォンのGPSアプリで現在地を調べると何時の間にか大栗沢へと下る道に入り込んでいた。分岐を確かめたかったのだが、そろそろ尾根を外れて沢へとトラバースする辺りに差し掛かっていて、戻っての確認は断念した。

(傾斜が緩むと下生えがある)


(尾根が分かれる所 右のこの道を下っていく)


(フラットな尾根 どの辺りを歩いているのかわからず不安に)


(踏み跡に導かれると灌木の急坂を下っていく ここで分岐を見逃したことに気付く)

西に延びるトラバース道を下っていくと道標の立つ大栗沢の側に下り立つ。ここからは沢沿いの左岸を下っていく。道は比較的高い所を高巻いているせいか大雨などで崩れている所は無い。大栗沢コースは明治期の古い地形図にも道形が描かれているほど古くからあるルートなのだが、今歩いている所は新たに付け替えられたもので古道ではない。沢床が近づき一旦渡渉する所がある。ここでボクより少し年上の男性が沢水を汲んでいるところに出くわす。2016年に武川岳東尾根を歩いた際にも大栗沢コースを登って来る男性に出会ったので、予想以上に歩く人が多いようだ。再び左岸に戻ると大きく道が削られた所がある。ただ歩く分には支障が無い。

(トラバース道は明瞭で歩きやすい)


(ここからは沢の左岸を歩く)


(最初のうちは高巻くように下る 道は間伐材で補強されている)

傾斜がだいぶ緩んできたなと感じる所で林道が交差する。林道西名栗・鍋コーシ線だ。ここから道は砂利敷となる。少し下ったところでかつての古道部分に入るのだが痕跡らしきものは全く感じられない。ジグザグに下ると舗装路へと変わる。硬い舗装路歩きは疲れた身体には正直しんどいのだが、幸いにも周囲が高い木に覆われて日陰を多いので今日みたいな残暑の日には有難い。長く感じた舗装路も実際には10分ほどで県道53号線(名栗街道)に合流する。名栗げんきプラザを見送り、正丸峠からの市道が合流する地点が長岩峠への入口だ。

(林道西名栗・鍋コーシ線を横切る)


(ヘアピンカーブが連続する所から舗装路に変わる)


(周囲は高い木が多く日陰の多い道が延びる)


(大栗沢)


(県道53号線に合流)


(左は県道53号線 右は正丸峠へ 林道永井谷線は右手前にある)

砂利敷の林道永井谷線を進み、道標に従って山道に入ると木板で永井谷の沢を渡る。その先は長岩峠へ向かって急坂が続く。一見厳しい道に見えるのだが、昔からある峠道ならではの九十九折が意外と歩きやすい。ツガの木台を経て尾根をトラバース気味に進むようになると長岩峠に出る。その上の大蔵山に上がればもう顕著な登りは無い。亀岩までは緩やかな坂で、それ以降実谷のふたまたまでは急坂続きで汗だくになる。馬頭さま前のベンチで小休止し、大蔵山集落を下ると西日が暑い。斜めに付けられた石段を上がって正丸駅に着いた頃には疲労困憊。今年は残暑が厳しくて長いルートを歩くにはまだ早かったようだ。

(林道永井谷線)


(ここから長岩峠の峠道に入る)


(ツガの木台)


(長岩峠)


(大蔵山 頂上というよりは尾根のちょっとした高まりという感じ)


(亀岩)




(ふたご岩)


(実谷のふたまた)


(馬頭さまの大岩が左手に見える)


(大蔵山集落に咲く彼岸花 今年は開花が遅れている印象)

DATA:
芦ヶ久保駅8:01→8:13冨士浅間神社鳥居→8:47冨士浅間神社→9:26洞穴→9:33二子山雌岳→9:42二子山雄岳→10:22焼山→11:08蔦岩山→11:28武川岳11:50→12:28林道大栗沢線→12:51林道永井谷線→13:04ツガの木台→13:10長岩峠→13:24亀岩→13:41実谷のふたまた→13:47馬頭さま→14:12正丸駅

地形図 正丸峠 

交通機関 
西武池袋線 小手指~芦ヶ久保 481円
西武池袋線 正丸~小手指 419円

関連記事:
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 平成28年12月25日 正丸駅から浦山口駅 ~武川岳と大持山~
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全般を通して一般ルートです。但し二子山を歩くルートはどれも急坂があるのである程度の体力が必要です。

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