山形のサクランボの収穫時期には、熟練の人手が足りなくなります。全国各地からバイトの方が山形に集まり、サクランボ農園で働きます。観光旅行を兼ねると思えば、バイトの方も楽しい一時でしょう。次は、モモの産地に赴き、バイトをします。次は、北海道ではジャガイモを収穫という具合に全国の農家を助けながら、自分は観光をするという仕組みも可能になってきました。このように1年中、農作業のお手伝いをしながら、全国を回る旅ができたら楽しいだろうなと思いました。
そこで、高い農業技術を持って、全国各地の複数の農家を支援できる人材の存在について考えてみました。まず思いついたのは、農業大学の学生さんです。理論だけでなく、実践も必要です。大学の整った農場での実践と地方の農家の経営には、多くのギャップがあります。農業の理念型を作りあげることは大切です。その理念型が、実際の現場ではどうなるのかを調べることも必要です。空理空論にならないためにも、大学と農家のギャップを、自分の目と体で体験することが必要になります。バイトと旅は、そんな問題を解決する機会になるかもしれません。
例えば、大学生には、4年間の集大成としての卒業論文の作成があります。この論文に農家問題を掲げ、全国の農家を走破しながら、問題の本質を把握してはどうでしょうか。実践的課題に、バイトという立場から核心に接近していくのです。農業大学の学生さんは、一定の農業技術や経営の知識を持っています。その技術や知識を持つ目で、各農家の課題を把握していくわけです。課題を把握するだけでも十分なのですが、もう少し高見を望みたいものです。課題を把握し、解決にまでに到達していくのです。解決までいければ、論文も優れたものと評価されるでしょう。
今時の大学生は、ITリテラシー能力が優れています。バイトに、パソコンやスマホを持参することは当たり前でしょう。農家の栽培方法や収穫、そして販売などの様子を目と体で確認できます。例えば、栽培方法も優れており、収穫の量や質が良い農家。でも、販売の段階で赤字になっているようなケースがあります。そこで、その農家を黒字にする課題設定をするわけです。バイトの学生一人だけでは解決が難しい場合、研究室に応援をお願いします。研究室の院生や学生の意見を、求めることになります。販売で黒字にする方策をいくつか提示してもらいながら、その農家にあった解決方法を見いだしていくわけです。農協を通して販売していたために、品質が良いにもかかわらず、価格が抑えられているケースもあります。そこで、スーパーへの直売ルートを開拓するという切り口で課題解決を図るわけです。すると、収穫から販売までの時間が短縮され、鮮度の良い農作物を消費者に提供できるようになります。消費者から喜ばれ、販売が増え、利益が出た。この成功の背景には、見る目のある消費者の存在、物流のルート確保、スーパーの販売能力、農家の供給能力などの分析が、論文には記述されることになるでしょう。大学生も知見を増やしながら旅を楽しみ、農家は助けを受けて豊かになります。できたらいいな!