TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」52

2015年07月28日 | 物語「夢幻章伝」

「どうぞ、アヅチさん
 食べて下さい」

ことん、と
アヅチの前だけに置かれたクッキーを見て
マツバは女子力的な何かで悟った。

この、クリミアという子。
アヅチのことが気になるようね。

だが、テーブルの上に置かれているのは
黒い、何か、の、塊。
アヅチは思いがけない展開に
戸惑いが隠せない。

「なぜ、俺だけ」

俺だけ、こんな
毒物実験的なクッキーを!!!

まさか、
勘違いをしているのでは。

「俺たち、爺さんを運んできたけど
 決して危害を加えたわけでは……」

アヅチは報復で
こんな扱いを受けているのでは、と
怯えている。

「何を言っているんですが
 これは、私の……気持ちというか……その
 分かってはくれませんか」

黙って食えと!!!!???

「やっぱり、こんなの困りますよね」
「分かったよ!!食うよ!!!」

………。
…………。
……………。

「おふっ」

アヅチはとっさにお茶に手を伸ばす。

ぐびっ。

………。
…………。
……………。

「ぼふっ」

マツバはお茶に伸ばし駆けていた手を
そっと戻した。

「どうです、アヅチさん」
「………夏休み最終日、ため込んだ宿題を終わらせ
 ふぅ、これでなんとかなったな、と
 思った夜分11時頃に、
 漢字の書き取り1日1ページ(全く手を付けていない)を
 思い出した様な、―――そんな気分」
「フフフ、なんですかそれ
 アヅチさんったら面白い人」

その後アヅチはトイレに駆け込んだので
マツバはクリミアと2人きりになる。

「ふむ、表現がへたくそなのか
 あえて誤魔化したのか
 そんな中にも、季語を取り入れて季節感を先取りとは
 及第点と言った所ね」

マツバは辛辣に評価する。

「ねぇ、クリミア。
 ここから北一族の村までどれくらいあるの」
「あ、居たんですか。
 北一族の村は徒歩で1時間程度ですよ。
 かくいう私も北一族ですし」
「1時間、それなら、
 今日のウチにたどり着けそうね」

谷一族のトウノの事もあるが
爺さん運んでヘトヘトな事もあって
早いところ北一族の村へ辿り着きたい。

「ええっ!!
 アヅチさん、行っちゃうんです、か」

やがて、アヅチが青い顔をしてトイレから戻ってきたので
2人は予定通り北一族の村へ向かうことに。

「あの」

せめて夕飯でも、と
引き留めていたクリミアだったが、

「私、村まで案内します。
 分かりにくい道なので」

「いや、そこまで迷惑はかけられないよ」
「私たち旅には慣れているし」

いいえ、と
クリミアは慌てて2人を引き留める。

「とても複雑な道なんです。
 それこそ地元民しか知らないような獣道で
 トラップも数多くあるんです!!!」

「「どんな道なんだ!!!」」

そして、爺さんは置いていって良いのか。

「あ、祖父には妹が付いているので
 大丈夫です」

と、クリミアが指し示した
家の奥の方から声が聞こえる。

「じぃちゃん寝てなよ」
「ワシは、ワシはぁああ
 行かねばならんのじゃあああああ」
「寝てなっつってんじゃん」
「若者達よ、
 飛び出せ、飛び出せ注意じゃあああ」

「「………」」

「以上、祖父から
 お二人へメッセージでした」

お、おう。

「爺さんが元気そうだって事は
 分かったぜ」
「そうね元気は何よりよ」

飛び出せ~、と
どこかで聞いたことがある様な単語を背中で聞きながら
アヅチ&マツバ、そしてクリミアは旅立つ。

「さぁ行きましょう。
 アヅチさんっ!!」

ずずずいっと、
クリミアが先導するのは明らかな一本道。

「実は今、北一族の村はとっても良いことがあるんです。
 アヅチさん―――と、ついでにマツバさん、
 お二人ともちょうど良い時期に来ましたね」

これは、イベントの予感。



NEXT

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。