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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」20

2013年10月11日 | 物語「水辺ノ夢」

杏子は、湖へと向かう。
誰にも気付かれないように。

ひっそりと。

村を出て、
森を抜け、
湖に、たどり着く。

そこは、深い霧でおおわれていた。
岸の向こうは見えない。

いつものこと、だ。

杏子は、足元を確認する。
濡れていない場所を探し、腰を下ろす。

肌寒い。

杏子は、うずくまる。
目を閉じる。


・・・これから、どうしよう。

ちゃんと考えなければ。

いない。
いない。
もう、いない。

なぜ?

誰に、どう問いても、いない。
いない。
いない。
もう、いない。

いないのだから、
忘れて
自分ひとりで、・・・これから、は。


想い が、杏子の頭の中を回る。

答えは、何も出てこない。


・・・圭は、どうしているだろうか?


杏子は、ふと顔を上げる。

湖を見る。
静かだった水面が、揺れているのに気付く。

杏子は、あたりを見る。

霧の向こうから、ほのかな光。
人工的な、光。

それは、ゆらゆら揺れ、だんだんと近付いてくる。

杏子は立ち上がる。
光を見る。
「・・・圭?」
思わず出た言葉に、杏子は手で口を隠す。

霧の中から、一層の舟が現れる。



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