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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」10

2015年02月10日 | 物語「夢幻章伝」

「俺、バーって行ってみたかったんだ」

ふふふとアヅチは軽く笑う。

「ヘイ、マスター!!って言えばいいんだよな」

心なしか軽くステップを踏んでいるように見えないことも無い。
「ねぇ、マツバ」
「ええ」
マツバとへび呼ロイドは顔を見合わせる。

≪あいつ、浮かれているぞ!!!≫

アヅチ初登場時の無口でつんつんしている
あまり笑わないといった説明って何だったんだ。

「なんだろう、村で見かけてた
 私の知っているアヅチじゃない」
「それ、『私だけに見せる特別な笑顔』ってやつ?」
「なんか違う。それじゃないけど」
「―――けど?」

「別の意味でドキドキはするわ」

マツバはちょっと鳥肌立てている(ひどい)。

ほんと、アヅチは一応
クールキャラのはずなんです。
今回はちょっと新幹線見てテンション上がっちゃってる
鉄道大好きなちびっこの心境なんです。

「あ、ここだな。入るぞ」

からーん!!

入り口の扉につけられたベルの音とともに
三人はバーへと入る。

仄かな明かりのみの薄暗い店内(お昼だけど)。
すでに居た客がちらりとアヅチたちを見て
また、手元の酒に視線を戻す。

「凄いな、凄くバーだな!!」
「……すごくバーって何よ?」

「いらっしゃい、お好きな所にどうぞ」

メガネでヒゲの店主がグラスを拭きながら静かに語り掛ける。

「ヘイ!!!」

アヅチそれ返事の言葉じゃない。

なんだかそわそわしているアヅチをしり目に
マツバはメニューを眺める。

「私、ジンジャーエールで」
「おいらはウーロン茶」
「あ、俺は、オレンジジュ……」

言いかけてアヅチは改めて言い直した。

「ヘイマスター!!
 オレンジジュース一つ!!」

どうぞ、とマスターは枝豆を差し出す。

「マスター、これは」

「君たち息子の紹介でここに来たんだろう?
 サービスだゆっくりしていってくれ」

「「「……息子?」」」

あ、と3人は閃く。

「さっきのやつの!!」
「ナギサの両親の!!」
「道の駅を経営しているという!!」

そのうえ、バーもとは、なんと多角経営。

いただきます、とアヅチとマツバは枝豆をつまみ始めるが
へび呼ロイドは戸惑う。

「ねぇ、2人とも早く出ようよ。
 おいら達の同僚も助けて欲しいし。
 何だかグルメ旅がメインになってるし」

そもそも、と、へび呼ロイドは念押しする。

「こういうお店のソフトドリンクって
 なんだか異様に高いじゃん!!!!」

へび呼ロイドはお財布の中身を心配している。

「……それが商売という物だよ」

マスターが呟く。

「おい、聞こえてるぞ、へび呼ロイド」
「そうよ、サービスして貰ってるのに失礼じゃない」
「うえええ、ごめんなさい―――って2人とも」

へび呼ロイドの声に2人が辺りを見回すと
先程まで居た先客達の姿がない。

「いつの間に……」
「どういう事だ??」

ふふふふ、とマスターの笑いは止まらない。

くっ、しまった、とへび呼ロイドが歯ぎしりする。

「おいら達まんまと罠にはまったようだよ!!」



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