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「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

高まる沖縄・日本への中国の脅威(後)─エスカレートする「琉球奪還論」と始まった対日開戦論─

2005年12月30日 | 「謀略」に抗するために
前篇から続き
◆現実化する可能性のある「琉球奪還論」
 さて、今日の結論として、今日見たところで一番、恐ろしいのは以下の論である。

鷹眼看臺海――光復琉球,不戰而定台灣。[原創](鷹眼が見る台湾問題-琉球を本土復帰させれば戦わずして台湾を平定できる)
http://bbs.tiexue.net/ShowThread.aspx?PageIndex=4&PostID=4380464
 概要は、沖縄の「反日感情」などを利用して沖縄を独立させれば、万一、台湾海峡で開戦のときは、沖縄を戦場にでき、台湾は防禦拠点を失い、そのまま降伏せざるをえないという内容。かなり整然とした論で、大学教授か政府関係者が匿名で書いている可能性が高い。特に、以下のように、沖縄の人々を利用すれば、政治的・軍事的に最大の利益を得られるとしている。
 部分的に訳す。
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(一) 光復琉球是我們的既定目標。(琉球の本土復帰は我々の既定目標である)
中華之崛起之鼎盛的標準在哪裡?我看在領土上,還得回到沒簽訂不平等條約之前。(中略)這麼算來,也就只有琉球了。就算琉球人民與大陸的交情,我們也得幫助他們呀!我是堅持琉球復國的,因為琉球國必定是對美萎仇恨至極而與中華友好共處的。但美萎是絕對不願意放棄既得利益的,一旦獨立它們將兩手空空,因而它們是絕對不會同意恢復琉球國的。即使是打贏了,我們能得到三分之二的琉球就知足了。畢竟戰爭是政治的延續,是為政治服務的。我們在政治上並不想世界毀滅!
(中華の興隆隆盛の基準はどこにあるか?領土上で言えば、不平等条約締結前の領土を取り戻すことである。(中略:かつての領土だった中央アジアから韓国・ベトナム・チベットまでを中国の友好国にして将来併合すると述べている)こうして)見てくると、ただ残っているのは琉球である。琉球人民と大陸との交情を考えれば、我々は彼らを援助することがきでる。私は琉球の回復を堅持する。琉球国は必ずアメリカ・日本を烈しく恨んでいるから中国とは友好的になる。ただ、アメリカと日本は絶対に既得権益を手放したくないから、一旦、彼らが独立すれば、失うものは大きく、その復国には絶対に同意しない。これによって、勝利をえさせるようにできる。我々は三分の二の琉球で満足する(訳注・奄美諸島以南の沖縄諸島を指す)。結局、戦争は政治の延長であり、政治に仕えるものである。我々は政治上世界の破滅を思いたくはない。)
(二)台海必有一戰,而戰爭對琉球的破壞要比對台灣的破壞小一些(台湾では必ず一戦ある。戦争による琉球の破壊は台湾の破壊に比べれば極めて小さい)。
琉球人民一直在不懈地進行著反對侵略的鬥爭,萎寇也無心在琉球大搞建設。特別是二戰時,萎國為了保全其民族,特地選擇了琉球為防禦戰場,造成琉球人民銳減三分之一,而琉球的圖書、王宮、典籍等象徵被毀於一旦。萎寇一直想做而無法做成的事,美軍做到了。雖然萎寇摧毀了琉球的國家、文化、語言、歷史,但萎寇摧毀不了琉球人民的精神和記憶!萎寇沒想到的是,醒目的琉球歷史書中仍然印著:「琉球曾是中國的附屬國,我們不是萎國人「!琉球人民的年收入只有萎寇的一半,島上又多是軍事基地,大型工業設施很少。戰爭對經濟的破壞相對就小。而台灣就不一樣了。台灣是一個製造業中心,戰爭對台灣的破壞很大。既然在光復台灣後還得光復琉球,我們為什麼不能兩弊相權取其輕呢?我不認為台灣同胞的生命比琉球同胞的生命重要,我關心的是怎麼能把損失減少到最小。
(琉球人民はひたすら侵略に抵抗闘争をしてきた、日本も何も考えず琉球に大建設を行った。特に第二次大戦のとき、日本は自分の民族を守るために、沖縄を選んで防禦戦場とし、琉球人民は三分の一に減った。琉球の図書、王宮、典籍などの象徴は一度に壊された。日本はただそうしようとしたが、なすすべもなく、米軍が来た。日本は琉球の国家、文化、言語、歴史、を破壊したが、琉球人民の精神と記憶は破壊できなかった。日本は次のようなことは思いもしない。琉球の歴史書には「琉球は中国の付属国で我々は日本人ではない」「琉球人民の年收は日本人の半分、多くの軍事基地があり、工業施設は少ない、戦争が経済に与える影響は比較すれば少ない」台湾は違う。製造業の中心で、戦争による台湾の破壊はとても大きい。台湾の本土復帰後、琉球の本土復帰を得ればいいが、どうして二つのうちで軽い害のほうを選ぶことができないのか。私は台湾同朋の命が琉球同朋の命より大切とは思わない。私はいかにすれば損害を最小にできるかに関心を持っている。)
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問題点1:「琉球人民は三分の一に減った。琉球の図書、王宮、典籍などの象徴は一度に壊された」:1945年の首里城の破壊は戦闘での米軍によるもので、日本軍が破壊のために破壊したわけではない。また、沖縄戦での犠牲者は、以前は17万人で県民の三分の一におよんだという説明がされていた。それを、この中国人は、県民が三分の一になったと勘違いしたようだ。なお、現在では、県民の直接的犠牲者は約12万(県民の四分の一)から10万と言われているようで、それにほぼ同数の本土からの日本兵の死者、朝鮮半島関係者などを加え、さらに米軍の死者を加えて、約24万となっている。
問題点2:「日本は次のようなことは思いもしない。琉球の歴史書には「琉球は中国の付属国で我々は日本人ではない」」:沖縄戦での犠牲者を敵味方の区別なくすべて記念した「平和の碑」の精神をこの中国人は全く理解できないだろう。“恨みに恨みを以つて報いず”という高い精神性を沖縄の文化も、台湾の文化も持っているが、中国大陸とまったく違うのはこの点であろう。
この人物は歴史を持ち出して「琉球」は中国の付属国だとしているが、以上から分かるように歴史や世界地理にはまったく詳しくないようで、「震源地」の論の受け売りで、情勢を分析しているようである。中国での琉球独立正当論は、「琉球独立党」などの存在を根拠にしているようだが、実は、こうした政党は以前からあり、別に日本国憲法下では禁止されてすらいない。また、沖縄独立を主張するホームページが、大陸の法輪講やウイグル族自立などのように生命の危険を伴う弾圧を受けている事実はないようだ。「蟹は自分に似せて穴を掘る」というわけで、中国国内のチベットやウイグル族への言論弾圧の事実から拡大解釈して、沖縄での「沖縄独立」を同じ立場のものと考え、“中国での独立運動が苛烈な弾圧を受けて恨み骨髄に徹しているのと同じだから沖縄独立を援助すれば中国の味方になる”という結論を出していると思われる。
 しかし、この人物は、中国語は暗号で他の国の人が読むとは思っていないのだろう。この中国人の考え方は、そのまま日本を守る武器になる。日本としては、この論を逆用して万一、中国が日本を攻撃した場合、中央アジア、蒙古、ベトナム、チベットなどで、この人が言っているのと同じことをすればいいわけである。
問題点3「台湾の本土復帰後、琉球の本土復帰を得ればいいが、どうして二つのうちで軽い害のほうを選ぶことができないのか」:「策士策に溺れる」で、この部分からは、この人物の冷酷無比さがよく分かる。沖縄を舞台にした地上戦による4ヶ月ほどの戦闘で軍、民間を問わず約24万人の直接的死者が出た。中国のでたらめな“南京虐殺事件”の数字にも近い数だが、いったい、何を根拠にしてこの中国人は、損害が少ないなどと言っているのだろうか。人口の多い島嶼での戦闘がいかに悲惨かこの事実は明らかに示しているが、この軍事専門家らしい人物は、そうした事実は無視している。
 
 以下は、この中国人の”軍師”による結論である。
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第八,光復琉球的意義,是無與倫比的。(琉球回復の意義は比べようがない)
(一) 我們要盡可能的讓琉球復國(當然美萎是絕對不會幹的!),向全世界顯示中國人的言而有信、仁者無敵的大國形象!同時也是向全世界宣告中華已經真正崛起了!
(私たちはできる限り琉球の国家回復をしなければならない(当然アメリカと日本は絶対できないから!)そして、世界に向けて中国人のことばは信用できることを示し、仁のある無敵の大国であるというイメージを示す。同時に全世界にまさに中国は立ち上がったということを宣言する。
(二)為我們收復失地提供一個模式!先定西北爾後東南,先復琉球爾後西藏!也好讓阿三心裡有點數!和平談判還能賺一點,武力光復可得喪權辱國了!
(我々が失地を回復するのに一つのモデルとなる。まず中国の西北、次に東南、琉球の次はチベットである。也好讓阿三心裡有點數(よくわからない、阿三の心象をよくさせる?)平和な交渉は安い、武力での祖国復帰は力を失い国を侮辱する)
(三)對萎國形成全方位的打擊能力!萎國全境將在我短程武器的打擊之下,中程巡航導彈就是戰略核武器,轟6就是戰略轟炸機!萎國的海上生命線就攥在我們手裡!(不想「萎中友好」都不可能了!)
日本に対して全方位の攻撃能力を形成できる。日本の全国は中国の短距離ミサイルの射程内で、中距離巡航ミサイル、戦略核兵器、轟6型戦略爆撃機もある。日本の海上生命線は中国の手中にある。
(四)戰略導彈部隊可以大規模的進駐江西、湖南!因為這寶貴的九百多公里,二炮就多了寶貴的兩千公里的縱深!我們將不怕任何NMD、TMD的訛詐!
(戦略ミサイル部隊は江西、湖南に大規模に展開できる。大切な900キロによって、ミサイル部隊は貴重な2000キロの縦深ができる。NMD,TMDを恐れることはない。)
(五)航空母艦及彈道導彈核潛艇多了一個樂園!這兒深深的大洋將和巴士海峽、巴林塘海峽一同構成我潛艇的樂園,未來的航空母艦也多了一個有著良好的實戰條件、威脅相對較小、有著廣闊海域的藍水訓練場。
(航空母艦と戦略ミサイル潜水艦に天国ができる。深い大洋とバシー海峡、海峡は、中国潜水艦の楽園になる。将来の空母にも有利な実戦条件ができる。脅威は減り、広い海域が訓練場になる。)
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 これ程大事な土地である以上、沖縄に中華人民共和国の魔手を延ばさせないよう日本には準備が必要なことがここからよく分かる。
 中華人民共和国が軍国主義路線を改めれば、以下のような、推測はしなくて済むし、“日中交流”とか“沖縄の自治県化”なども地域活性化のためにきっと大きな意味を持つにちがいないが、ナチスの前に、永世中立を宣言したオランダ・ベルギーは一溜まりもなく蹂躪され、チェッコを始め東欧の国々も惨禍を免れなかったことを思えば、今、こうした話をするのは、泥棒に門の鍵を渡すのとなんら変わりはない。
 沖縄には、多数の中華人民共和国系住民が移住していると聞いた。今後、中華人民共和国政府は、以上見てきた論と同じ目論見で、さらに大量の中華人民共和国人を沖縄に移住させ、独立を煽動、あるいは武装反乱を起こさせる可能性が想定される。
 以下のようなグループなどは、その戦闘の先頭に立ちそうで、沖縄での再度の地上戦を惹起するのは、この愚かな日本人人権論者と冷酷非情な中国人工作員たちだろう。
沖縄華僑華人総会http://www.okksk.org/
 そして、以下のような、民主党の話が本当なら、中華人民共和国関係者による「沖縄独立」への工作はすでに始まっている可能性が高い。
2005年8月3日民主党沖縄ビジョン【改訂】
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/kouan/image/BOX_KOA0022.pdf
民主党による沖縄「一国二制度」論
http://www.takemasa.org/next/okinawavision.htm

 こうして、すでに時代は動き始めているのかもしれない。 
 大嵐が過ぎたとき何人が生き残り得るか分からないが、”あの時こうしていれば”という悔いは残したくない。
 残された日々を大切に過ごしたいと切に思う。


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3 コメント

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Unknown (あきら)
2005-12-31 09:37:46
本年は貴ブログの記事にて色々と勉強させて戴きました。

又参考にもさせて頂きました。有り難う御座います。

来年も宜しく御願い致します。それでは良い御歳をお迎えください。



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情報戦略インテリジェンス (如風)
2006-03-24 12:12:12
TBありがとうございます。

中国に関しては以前から日本人のナショナリズムを煽る情報が飛び交っているのにはまいります。

台湾に関してはあり得ることだと思います。

今の中国首脳部が愚かでないことを祈るばかりです。

動けば間違いなく中国にはデメリットしか待っていないでしょうから。

今中国の国力が衰えるようなことがあれば、間違いなくアジアは草刈り場と化すでしょう。
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中国には改革が必要でしょう (蓬莱の島通信ブログ)
2006-03-25 06:43:14
教えているクラスの学生にもし社会を階級社会、競争社会、平等社会と分けたらどうなるか聞いたところ、階級社会は中国、競争社会はアメリカ、平等社会は日本と台湾という答えが帰りました。日本語教育では日本の特徴を平等社会と教えているのです。中国には何が問題か聞いたところ、不平等が問題で、革命が必要だという答えが出ました。このように台湾で政治意識のある学生は、台湾を中国とは全く思っていませんし、台湾のほうが進んでいるとよく分かっています。

中国の指導部がナショリズムという近代化による矛盾の抑圧への最悪の合理化手段を執らないで、台湾式の日本とは又違う近代化を目指してほしいと思っています。

ちなみに平等社会の問題はと聞くと、停滞、無気力という答えでした。
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