全英連参加者のブログ

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平成28年度埼玉県公立高等学校入試 英語リスニングテスト分析

2016-08-06 04:00:00 | 教師の仕事 2016

 平成24年度から一本化された埼玉県公立高等学校学力検査。もう5年目である。今年も英語実音テスト問題の音源CDを借り受け、リスニングテストの分析を実施する。
 今回の分析ポイントも、前年度問題形式との比較。変更の有無、wpm*の確認である。

***** *****

 3月2日(水)14時20分、英語学力検査の開始チャイムが鳴る。その数秒後「放送を聞いて答える問題」が始まる。この問題が終わらなければ、他の問題に手をつけることは、実質的に不可能なのは、毎年同じである。
 平成28年度入試も、試験は全部で7問、求められる解答数が11である。

 問題1から問題3
 会話を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一、ヒントのイラスト、グラフがついている。
 問題4と問題5
 それぞれ「ある場面」を説明する英文を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一で、英文の答えが出ている。
 問題6
 MasaruとEmilyの会話を聞いて、日本語で掲出されている三つの質問に日本語で解答する記述問題である。
 問題7
 ALTのMr. Johnsonのスピーチを聞き、スピーチの内容に対する質問を聞き取る。質問の答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一問題で、英文の答えが出ている。

 基本的な構成は、昨年までと全く変更がない。

***** *****

 使用音源
 平成28年度 英語録音CD1枚

 計時使用機材
 WMPと一般的なCDプレーヤーを使用。
 計時はWindows 10のWMPによる。ストップウオッチも使用。
 ・・・毎年同じ作業である。

 分析手順
 ①語数とセンテンスの数をカウント。
 ②何度も聞き直し、各英文の時間を計測。
 ③問題~問題の間のポーズを計測。
 ④はじめから、「以上で問題は終わりです」までの実時間を計測。
 ⑤前年の数値と比較。

 ①から④は手作業(耳作業)である。
 ・・・ここも昨年と同じである。

+++++ +++++

 以下、音源CD構成と計時データ

 トラック1 音量調整のための放送
 試験当日朝に試聴のために用いる。
 (試験とは関係ない。)

 トラック2 無音
 トラック1をかけたままにしていると、しから(注意さ)れる。
 (間違えて、問題を誤放送させない配慮。)

 トラック構成も昨年度と同じである。

 トラック3(0:26)
 0:00- 「放送を聞いて答える問題」のアナウンス。

 トラック4(1:18) 問題1
 0:01- 問題1から問題3の解答方法の説明
 0:24 問題1放送 1回目
 0:41 問題1放送 1回目終了
 0:45-47 問題1 Question1回目
 0:51 問題1放送 2回目
 1:08 問題1放送 2回目終了
 1:11-13 問題1 Question2回目
 問題1は、AとB(YujiとNancy)の会話である。A→Bが2回。17秒で話者2、総語数44語である。
 このペースで会話が続いたとすると、17秒は1分の28.0%なので、59を0.24で割る。
 157wpmとする。(155)
 カッコ内は、H.27データである。以下同じ。

 トラック5(1:05) 問題2
 0:03 問題2放送 1回目
 0:23 問題2放送 1回目終了
 0:26-29 問題2 Question1回目
 0:34 問題2放送 2回目
 0:55 問題2放送 2回目終了
 0:57-1:01 問題2 Question2回目
 問題2も、AとB(Johnと母親)の会話である。A→Bが2回。Johnが公園にテニスに出向くことを母親に伝えると、テニスのあとで、お買いものをたのまれる。20秒で話者2、総語数57語。
 このペースで会話が続いたとすると、20秒は1分の33.3%なので、57を0.333で割る。
 171wpm(164)

 トラック6(1:01) 問題3
 0:02 問題3放送 1回目
 0:22 問題3放送 1回目終了
 0:24-27 問題3 Question1回目
 0:31 問題3放送 2回目
 0:51 問題3放送 2回目終了
 0:54-57 問題3 Question2回目
 問題3も、AとB(AkiraとJudy)の会話。A→Bの回数も同じ。AkiraとJudyが人気のある教科について会話している。18秒で話者2、総語数48語。
 このペースで会話が続いたとすると、18秒は1分の30.0%なので、48を0.3で割る。
 160wpm(150)

 トラック7(1:23) 問題4
 0:01 問題4と問題5の解答方法の説明
 0:22 説明終了
 0:26 問題4放送 1回目
 0:43 問題4放送 1回目終了
 0:46-49 問題4 Question1回目
 0:54 問題4放送 2回目
 1:11 問題4放送 2回目終了
 1:15-18 問題1 Question2回目
 この問題は「ある場面」についての説明文を聞き、それについて解答を求めるものである。17秒で話者1、総語数50語、センテンス数4。
 このペースで発話が続いたとすると、17秒は1分の28.3%なので、50を0.283で割る。
 176wpm(156)

 トラック8(0:48) 問題5
 0:02 問題5放送 1回目
 0:14 問題5放送 1回目終了
 0:17-20 問題5 Question1回目
 0:25 問題5放送 2回目
 0:37 問題5放送 2回目終了
 0:40-43 問題2 Question2回目
 問題5も問題4と同じパターン。12秒で話者1、総語数32語、センテンス数4。
 このペースで発話が続いたとすると、12秒は1分の20%なので、32を0.2で割る。
 160wpm(160)

 トラック9(2:47) 問題6
 0:01 問題6の解答方法の説明
 0:15 説明終了
 0:18 問題6放送 1回目
 1:22 問題6放送 1回目終了
 1:30 問題6放送 2回目
 2:34 問題6放送 2回目終了
 問題6は、最初の方にも書いたとおり、MasaruとEmilyの会話である。64秒。総語数158語、センテンス数30。会話のやりとりが16回である。Masaru→Emilyが8回である。
 このペースで会話が続いたとすると、 秒は1分の106%なので、158を1.06で割る。
 148wpm(158)

 なお、トラックの長さは2:47だが、録音は2:34で終わっている。最後の問題までの間10秒ちょっと空白になる。

 トラック10(4:40) 問題7
 0:01 問題7の解答方法の説明
 0:21 説明終了
 0:24 問題7放送 1回目
 1:44 問題7放送 1回目終了
 1:46-52 Question 1
 2:01-07 Question 2
 2:15-20 Question 3
 2:28 問題7放送 2回目
 3:48 問題7放送 2回目終了
 3:50-56 Question 1
 4:05-11 Question 2
 4:19-24 Question 3
 問題7は、ALTのMr. Johnsonが言葉を学ぶことについてスピーチをしている。そのスピーチを聞き、内容について答える問題である。80秒で話者1、総語数195語、センテンス数18。
 このペースでスピーチが続いたとすると、80秒は1分の133%なので、195を1.33で割る。
 146wpm(145)

 なお、問題7(トラック10)の4:23のところで、「放送を聞いて答える問題」の終了が告げられる。午後2時20分の英語試験開始のチャイムから、ここまでが13分半。残り試験時間が37分程度。
 リスニングテストの配点は100点満点中28点である。

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 WPM比較

Questions   H27 H28  
1 words   59 44  
seconds   23 17  
wpm 164 153 155
2 words   41 57  
seconds   15 20  
wpm 145 164 171 Δ
3 words   50 48  
seconds   20 18  
wpm 136 150 160 Δ
4 words   26 50  
seconds   10 17  
wpm 161 156 176 Δ
5 words   32 32  
seconds   12 12  
wpm 151 160 160 ±0
6 words   158 158  
sentences   26 30  
seconds   60 64  
wpm 155 158 148
7 words   175 195  
sentences   19 18  
seconds   72 80  
wpm 153 145 146

 words:語数
 sentences:文の数
 seconds:英語の流れた時間(単位:秒)
 wpm:1分間でどのくらいの語数を聞き取ることになるか。

     は、平成24年度~平成26年度3年間の平均値である。
     は、平成27年度との比較。△は数値が増加したもの、▼はその逆である。

 平成27年度との比較は以下の通り。

 問題1:難化
 問題2: 〃
 問題3: 〃
 問題4: 〃
 問題5:変化なし。
 問題6:易化
 問題7:難化

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 Can-Doリストとの関連を考える。
 リスニングに限ってだが、20秒前後のモノローグ、もしくは2ターン前後の会話であれば、1分間換算で150語から170語程度を聞き取れること。1分から1分30秒前後の会話文、スピーチならば1分間換算で150語前後が聞き取れることが出来てほしい。これが埼玉県の考える、中学生のCan-Doと判断するべきだろう。それを「通過」している生徒が、僕たちの目の前に何パーセントいるのだろうか。そのことを考えた上で、授業中のTeacher Talkの工夫が出来る。

+++++ +++++

 抽出分析だが、正答率は以下の通りである。

 問題1 85.8
 問題2 77.9
 問題3 68.3
 問題4 27.8
 問題5 64.5

 問題4が、正答率が極端に低い。
 問題4では、Tomは市役所にいる。彼は病院に行きたいが、行き方がわからず、警察署でお巡りさんに一番いい行き方を質問する。英文は以下の通り。
 Tom is at the city hall, he wants to go to the hospital.
 The hospital is far from the city hall.
 There is a police station next to the city hall.
 He wants to know the best way to get to the hospital, so he asks a police officer.
 Question: What does the police officer say to Tom?
 ここまでテストには印刷されていない

 解答の選択肢は以下の通り。
 ア.You should take the bus to the hospital.
 イ.The hospital is in front of the police station.
 ウ.Can I ask the way to the hospital?
 エ.The hospital is near the city hall.
 正解はア.である。
 この問題、県教委の出した、『各教科の正答率、誤答例及び所見』には、誤答としてどれが一番多いか分析は出ていないものの、「会話中の複数の情報をよく整理して聞き取る力が求められた」とあるので、それができないことになる。英文の最後(赤字)を見ると、Tomが警察官に道を尋ねていることがわかるので、ウ.はないだろう。そして、警察官は「質問されて」「答える」のだから、素直に考えれば、ア.のはずである。
 建物の位置関係が〔警察署〕〔市役所〕と並んでいることが、next toがわかればイメージできたと思う。もう一つfar fromがわかれば、イ.エ.もないことがわかる。これらの情報整理が出来たかどうかで、正解になる。これが10人中7人が出来なかったことになる。

 問題6(1) 91.4 
 問題6(2) 91.2
 問題6(3) 60.8
 記述問題だが正答率が高い。カッコ3はやや低い。
 (1)Masaruが父に買ってもらったものはなんですか。
  -自転車
 (2)MasaruとEmilyが来週の何曜日にサイクリングに行く予定ですか。
  -火曜日
 (3)Emilyはミナミ湖に行って何をすることを提案しましたか。
  -夏祭りを見ること。
 カッコ1と2は名詞で答えられるが、3は(「誰か」が)「何か」を「すること」を求めている。それだけ難しいのだろう。

 問題7(1) 37.2
 問題7(2) 66.6
 問題7(3) 78.1
 カッコ1の正答率が低い。
 この問題の設問は、What does Mr. Johnson want to do in the firure?である。解答は以下の四つから選ぶ。
 ア.To go to university and study.
 イ.To teach English in Japan.
 ウ.To come to Saitama again.
 エ.To teach Japanese in his country.
 正解はエ.である。誤答で最も多いものはイ.である。Mr. Johnsonが現在していることではなく、スピーチの最後の方で、I want to teach Japanese in the future when I go back to my country.述べていること(帰国後にしたいこと)を聞き取れれば、答えは選べたと思うが、かなり厳しいかも知れない。

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 なお、問題、正答、データ分析は、埼玉県総合教育センターウェブサイトで公開されている。
 http://www.center.spec.ed.jp/ (新しいウインドで開きます。)
 (メニューの「入試情報・説明会案内」から)
 ・平成26年度~平成28年度の問題を公開中である。

 今年も分析をするために、東京新聞ウェブサイトの『首都圏公立高校入試特集ページ』を参考にした。問題を見るのならば、このサイトを利用するといい。関東地方の公立高校入試問題を、PDFでアップロードしている非常によくできたサイトである。毎年使わせてもらっている。特記する。
 アドレスはこちら。(新しいウインドで開きます。)
 http://www.tokyo-np.co.jp/k-shiken/index.html

 昨年のエントリはこちらです。
 2015-04-02
 「平成27年度埼玉県公立高等学校入試 英語リスニングテスト分析

 *このエントリにおけるwpmの出し方(考え方)については、以下を参照されたい。
 2010-03-11
 「wpm

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