発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

それでも本を出した方がいい 多くの人に思いを伝えたいなら ただし注意深く

2021年05月26日 | 本について
順不同。
◆Facebookを見ていると、本をつくることに関する広告が多いのに驚く。
◆「ゼロ円で本ができる」という広告は本当か。
◆あなたの本を作りますという広告はどこまで信じたらいいのか。
◆版元としての原則を書く。出版とは、原稿を製品にする仕事である。
◆費用の高い安いは、全く同じ条件下での複数の業者を比較して、初めて判断できることである。
◆いろいろな広告が出ているが、安いと宣伝するところは、著者が自分でやらないといけない仕事が多い。つまりそれは特別に安いわけではない。
◆校正もリライトも必要ないきちんと編集された完璧な文字データを、ページ毎のレイアウト済みで持ち込めば、安いのは当然である。出版社の仕事のほとんどを本人がするからであるドゥーイットユアセルフ。「原稿の製品化」の部分について、お金の動きが発生しない、ということなのである。あなたの労力と時間を採算に入れなければの話だが、必要なときに必要なぶんだけ印刷製本するオンデマンド本の場合、ゼロ円となる。かかるのは一冊ごとの印刷製本代で、従来のように何百部何千部本をつくるよりは単価は高くなるが、在庫は抱えずに済む。
◆では、ゼロ円で本ができる広告主の業者は何で収益を得ているのか。オンデマンド本を印刷するときのマージンは知れている。発行部数がすごく少ないこともありうるだろう。
◆文章を読みやすく整え、目に優しいレイアウトをし、書店で手にとってレジに持って行ってもらいやすいデザインにする、ネット販売だと手に取るのは無理だが、面白さのほかに読みやすさに配慮していないとリピートは無理だろう。流通する商品たる製品のデータを作成するには技術が必要である。乱暴なたとえだが、学校技術家庭科と棚取り付け程度の日曜大工の経験者が材木と道具を与えられて、家具店で販売できるタンスを作るのに遠からずの作業となるかもしれない。
◆おそらくは、著者が、なんとか自分でやろうとしたものの、うまくデータがつくれない、美しくできないときに、業者に依頼するオプション作業に支払う金額で成り立っているのだと思う。
◆結果、従来の印刷出版業者に支払うくらいは製作費を負担することになるのではないか。
◆だから、自分でできることと、業者に頼みたいことをはっきりさせた上で、相見積もりするのが賢明である。
◆いろいろな業者のサービスの内容の表題だけ見るに、どこもそうべらぼうな経費を請求しているわけではなさそうだが、要するに、必要でないサービスは買わず、必要なサービスだけを買えばいいのである。
◆もちろん、同じ条件で比較して良心的な版元や業者とそうでない版元や業者は存在する。
◆あと得意不得意がある。よほど専門的な本を出したい場合、自分の出したい分野の本を出しているところを選ぶのが賢明である。
◆出版コンサルタントにお金を払ってその1割が商業出版にこぎつけているという広告を額面通りに読んでいいのなら、なかなかいい確率だと思う。途中で投げ出す人で儲けている商売かもしれないが、つまり、投げ出さなければいいのだ。
◆「今より収入を増やさなければならないあなたに」と出版を勧める広告!! 売れる原稿を増産できるようになるのは、投下した資本を回収できるのはいつか。とりあえず会社は辞めず、メルカリかヤフオクと並行してスタートされたし。もちろん書くべき(売るべき)何かがあればの話である。
◆まるで出版社がお金を出して刷る売れる本が簡単に書け収入になるととられかねない文面があれば、それは疑ってかかったほうがいい。
◆オンデマンド本にしてAmazonで売る。「出来栄えは遜色ありません」と書いてある。この本が書店に並んでたら、レジへ持っていこうと思うようなオンデマンド本を作ってくれる業者ならぜひお願いしたい。
◆著者の金銭的負担がまったくないのに紙の本ができる、いわゆる商業出版は、よほど中身が良い上に売れる見込みがないと実現しない。
◆どの出版社も、ベストセラー原稿を探している。それは決して多くはないから、コンクールをする。その告知広告のなかの「商業的な見地から全国出版に見合う作品を選出できない場合には本は出さない」の文言を見逃してはならない。そういうことだ。
◆本を書くのは、書きたい、伝えたいことがある人の特権である。
◆本を出すと決めて、準備にかかった人の多くは、私が会った限り、進化を始める。本にする、を実現する決意が、原稿をよりよいものにしていく。
◆自費であっても本は出したもの勝ちである。
◆小説家の販売努力を知っている。本を売って副業にする関門は狭い。
◆周囲の人が買いたいと思わない本は、売れない。身近な人は、あなたの本をお金を出して買いたいと思っているか。
◆販路(講演会、自分の授業)のあてがあれば、これはもう、本は自腹切ってでも、さっさと出した方がいい。レジュメを作る手間が減り、確実に売り上げが期待できる。
◆本を出すと、プロフィールに堂々と「絵本作家」「〇〇評論家」「小説家」「詩人」「〇〇研究家」「その他何かクリエイティブな職種の名など」+「著書に『〇〇〇〇』(〇〇出版)」などと書ける。自分の書いた本があれば「自称だよね」と揶揄されることはなくなる。
◆本は、伝えたいことがあれば、出したもの勝ちである。
◆本は読む人への真心からの長い手紙である。誰かがそれを読む。あなたの知らないところで。どこか遠くの町で。時が経っていても、端末がどんなバージョンアップをしようと、言語を解する人がいるかぎり、それを誰かが読むかもしれない。読む人は時を超えてあなたと会話する。不朽の魂を手に入れるに似たことが起きるのだ。
◆ああ長い。何て読みづらいんだ。また改訂したら、あちこちに貼ります。最後まで読んでくださりありがとうございました。
 気が向いたらまた。

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