山中教授「iPS細胞」でノーベル医学生理学賞 ~ 日本の未来が危ない!山中教授も憂う“事業仕分け”

2012年10月10日 | news
山中教授にノーベル賞…iPS細胞を作製
ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見する山中・京大教授(8日午後8時25分、京都市の京都大学で)=川崎公太撮影

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、2012年のノーベル生理学・医学賞を、様々な種類の細胞に変化できる多能性を持つiPS細胞(新型万能細胞)を作製した山中伸弥・京都大教授(50)ら2人に贈ると発表した。成人の体の細胞が、受精卵のような発生初期の状態まで戻ることはないという生物学の常識を覆し、再生医療や難病の研究に新たな可能性を開いた点が高く評価された。山中教授は、マウスのiPS細胞作製を報告した2006年8月の最初の論文発表からわずか6年というスピード受賞となった。

 日本人のノーベル賞受賞は、10年の根岸英一・米パデュー大特別教授と鈴木章・北海道大名誉教授(化学賞)のダブル受賞以来2年ぶりで、南部陽一郎・シカゴ大名誉教授(米国籍)を含めると19人目。生理学・医学賞の受賞は1987年の利根川進博士以来、25年ぶり2人目となる。

 共同受賞者は、世界初のクローン動物をカエルで作製した英国人科学者ジョン・ガードン博士(79)。

 授賞理由は「成熟した細胞のリプログラミング(初期化)による多能性獲得の発見」。

 山中教授は2006年、マウスの皮膚の細胞に4種類の遺伝子を入れるだけの簡単な方法によって、細胞を若返らせることに成功。細胞をiPS細胞と名付け、米科学誌「セル」に発表した。翌07年には人でも作製したことを明らかにした。人の体には約200種類、約60兆個の細胞があり、これらはすべて、1個の受精卵が分裂と変化を繰り返してできる。いったん脳や皮膚、内臓などになった細胞は通常、元に戻ったり、他の細胞に変化したりしないとされていた。

 これを覆したことで、ノーベル賞を選考する委員会も授賞理由に、「教科書が書き換えられ、新しい研究分野が確立された」と最大限に評価した。

 ガードン博士は1962年、細胞核を取り除いたカエルの卵にオタマジャクシの細胞核を移植する方法で、オタマジャクシと全く同じ遺伝情報を持つクローンを作ることに成功。成熟した動物の細胞も、あらゆる細胞に変化しうる能力を秘めていることを示し、iPS細胞作製への道を開いた。

 授賞式は同賞の創設者アルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日、ストックホルムで開かれる。賞金の800万スウェーデン・クローナ(約9500万円)は受賞者2人で分ける。

 ◆iPS細胞(新型万能細胞) 皮膚などの体細胞に数種類の遺伝子を導入することで、全身のあらゆる細胞に変化できる能力(多能性)を獲得した細胞。ほぼ無制限に増やすことができる。英語の正式な表記は「induced pluripotent stem cell」。直訳すると「誘導された多能性を持つ幹細胞」で、その頭文字を取った。「i」だけ小文字なのは、携帯音楽プレーヤー「iPod」を意識したためで、多くの人に親しんでもらえるようにと山中教授が命名した。

(2012年10月9日  読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20121009-OYO1T00196.htm?from=top



山中さん会見”先人研究者のおかげ”
10月8日 21時2分

記者会見で、山中教授は「ジョン・ガードン先生が、細胞の初期化という研究を切り開いた。彼の仕事がなければ、われわれの仕事はなかった。彼だけでなく、この50年間にいくつかのキーとなる研究成果があったので、今回、一緒に受賞はしていないが、先人の研究者のおかげの受賞であることを強く思っている」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121008/k10015595141000.html



山中教授が同時受賞・ガードン氏に感謝

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、2012年のノーベル医学生理学賞を、さまざまな組織の細胞になる能力がある「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を開発した山中伸弥京都大教授(50)ら2人に授与すると発表した。同時受賞は英ケンブリッジ大ガードン研究所長のジョン・ガードン氏(79)。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金800万クローナ(約9400万円)が2人に等分して贈られる。

 同時受賞したガードン氏は1962年、カエルの卵を使った実験で「クローンカエル」を実現させるなど、iPS細胞開発への道を開いた。英BBC放送の取材に「山中氏と一緒に賞を受け取れることは大きな喜びだ」と述べた。山中教授は「美しい髪の毛をしていてうらやましい。ガードン先生の仕事がなければ、私たちの仕事はあり得ない」とユーモアを交えて感謝を表した。

http://www.sanspo.com/geino/news/20121009/sot12100905010001-n1.html



「山中氏との受賞は喜び」 英ガードン氏(10/09 09:25)
8日、ノーベル医学生理学賞の受賞決定を受け、ロンドンで記者会見するジョン・ガードン英ケンブリッジ大名誉教授(AP=共同)

 【ロンドン共同】山中伸弥京都大教授とともにノーベル医学生理学賞の受賞が決まった英ケンブリッジ大のガードン名誉教授は8日、英BBC放送に「山中氏は(私の研究成果について)現実的な治療への期待をもたらしてくれた。彼と一緒に賞を受け取れることは大きな喜びだ」と話した。

 AP通信によると、受賞決定の発表後に記者会見したガードン氏は「(自身が核移植の技術を使ってクローンカエルを実現した1962年)当時は治療に活用できるかどうか全く分からなかった。光が当たるようになったのはほぼ50年たってからだった」と話した。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/410222.html



共同受賞のガードン名誉教授「彼のおかげで…」(10/09 05:50)

 共同受賞したイギリス・ケンブリッジ大学のジョン・ガードン名誉教授(79)は、山中伸弥教授の功績をたたえています。

 ジョン・ガードン名誉教授:「山中教授と一緒に受賞できてうれしい。彼の研究は人の健康向上に大きく貢献した」
 ケンブリッジ大学のガードン名誉教授は、成熟した細胞にもあらゆる細胞に変化する能力があることを1962年に発見しました。ちょうどこの年に生まれた山中教授に対し、ガードン名誉教授は「山中さんのおかげで受賞をすることができた。彼の研究成果がこの分野を世の中から注目される分野にまで高めた」と称賛しました。

http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/221009001.html



共同受賞の英博士「山中さんのおかげ」

 山中伸弥教授とノーベル医学・生理学賞を共同受賞することが決まったイギリスのジョン・ガードン博士は、受賞は「山中教授のおかげ」だと語りました。

 イギリス・ケンブリッジ大学のジョン・ガードン名誉教授は8日、ロンドンで記者会見を開き、旧知の間柄だという山中教授との共同受賞は大きな喜びだと語りました。

 「山中教授におめでとうと言いたいけど、今朝はだいぶ忙しかったからね・・・」(ケンブリッジ大学 ジョン・ガードン名誉教授)

 ガードン教授は50年前、核移植の技術を使ってオタマジャクシのクローンを作製することに成功し、山中教授の研究の基礎を作りました。しかし、当時はその技術を再生医療に活用できるとは思っていなかったといいます。

 「今回の受賞は間違いなく山中さんのおかげです。2006年の山中さんの発見によって、1950年代、60年代の私たちの研究が再び注目されるようになりました。私たちの研究の重要性は当時は理解されず、以来、ある意味で眠っていたのです」(ケンブリッジ大学 ジョン・ガードン名誉教授)

 大学進学前は成績が悪く、教師には「科学者になろうなんて馬鹿げている」と言われたというガードン氏。30歳前後であげた研究成果は山中教授らに引き継がれ、79歳となった今、大きな花を咲かせました。(09日03:10)

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5151712.html



「ヤマナカが進歩させた」=共同受賞のガードン博士-京大から日本人研究者

 山中伸弥京都大教授との共同受賞が決まった英ケンブリッジ大のジョン・ガードン博士(79)は、細胞の「初期化」研究のパイオニア。山中教授の人工多能性幹細胞(iPS細胞)について、「同じ研究分野をヤマナカが進歩させた。すごい業績だ」と話していたという。
 ガードン博士の研究室に所属する日本人研究員宮本圭さん(31)は「発表直前に受賞の電話を受けたらしいが、僕らに隠して普段通り研究の話をしていた。発表後たくさんの人が押し掛けてきて初めて知った」と明かした。
 定年後も同大で研究を続けるガードン博士。宮本さんは「とても謙虚な人で、毎日ずっと研究のことを考えている。僕らメンバーとも常に議論し、本当に尊敬すべき人だ」と評する。(2012/10/08-22:20)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012100800439





山中教授の「右腕」、京大講師・高橋氏に国際賞

 「ニューヨーク幹細胞財団」は9日、今年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授(50)のもとで研究をしている高橋和利・同研究所講師(34)に「同財団・ロバートソン賞」を贈ると発表した。日本人の受賞は初めて。

 同財団のウェブサイトと同研究所によると、高橋講師は、山中教授がiPS細胞(新型万能細胞)を作製した際、実験の中心となったことなどが評価された。

 同賞は、幹細胞研究で優れた業績を挙げた若手研究者に贈られ、今年で2回目。賞金は20万ドル(約1560万円)。高橋講師は10日夕、現地で記念講演を行う。

 同財団は「高橋さんの仕事は、幹細胞研究の全く新たな領域を切り開いた。iPS細胞作製に加え、技術の向上にも日々貢献している」とのコメントを出した。

(2012年10月10日  読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20121010-OYO1T00872.htm?from=main2





京大・山中教授「iPS細胞」でノーベル医学生理学賞

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、2012年のノーベル医学生理学賞を、山中伸弥京大教授(50)ら2氏に授与すると発表した。山中教授は様々な細胞になる能力を持つ「iPS細胞」を開発し、近年は毎年有力候補に挙げられていた。日本人のノーベル賞受賞は、10年化学賞の鈴木章、根岸英一両氏以来2年ぶり19人目で、医学生理学賞は87年の利根川進氏以来、25年ぶり2人目の受賞。21世紀の日本人受賞者は計10人で、科学系3賞受賞者数が米国に次ぐ2位となった。

 「日の丸の支援がなければ、受賞できなかった。日本という国が受賞した賞だと感じています。『感謝』という言葉しかありません。80歳を超えた母に報告できたことが本当によかった」。受賞を受け京大で開かれた会見で、山中教授は喜びとともに、感謝の気持ちを何度も、口にした。

 白いワイシャツにノーネクタイのスーツ姿で大学に到着。ほほ笑みを浮かべながら、会見場に入った。受賞連絡時の状況を問われると「受賞するとは思っていなかった。家にいて洗濯機がガタガタ音がするのを直そうとしていました。携帯電話が鳴って、出たら英語だったので、(受賞を)知りました」と答え、笑いを誘った。

 再生医療、新薬開発等への応用が期待される“夢の万能細胞”iPS細胞を開発。06年にマウスでの開発に成功し、07年にはヒトでも実現させた。功績から数十年後に受賞という例が珍しくないノーベル賞で、開発からわずか6年での受賞。そのスピードが、世界に与えたインパクトと功績の偉大さを物語る。

 会見では国への感謝を口にしたが、決して研究資金が潤沢だったわけではない。iPS細胞そのものが対象ではないが、09年には、科学技術関連事業の予算が「事業仕分け」され、削減や見直しが相次いだ。その際、山中教授は批判と不安の気持ちを述べている。今年3月には、研究資金の“カンパ”を訴え、アピールするため、京都マラソンに自ら出場した。

 現在も年10回ほど渡航し、資金面など環境が整っている米国で研究している。この日、会見場では野田首相から祝福の電話が入り、教授は「国を挙げて支援していただいたおかげです」と答えていたが、胸のうちには複雑な思いがあったのかもしれない。

 同時受賞は英ケンブリッジ大のジョン・ガードン名誉教授(79)。1962年にカエルのクローン誕生を実現させ、iPS細胞につながる道を切り開いた先駆者だ。山中教授は、まさにその62年に生まれた。教授は会見で「ガードン先生は、いまだに現役で研究をされている。私もがんばっていきたい」と万感の思いを口にした。

 iPS細胞は、安全性の評価など、今も実用化への研究が続けられている。「受賞はこれからの発展に対する期待の意味も大きいと信じている」と気持ちを引き締めるように語った教授。「これから何日間かは、国民の皆様に自分の言葉で(研究などを)お話ししたいが、来週には研究現場に戻って、専念したい」と決意を新たにしていた。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金800万クローナ(約9400万円)が2人に等分して贈られる。

 ◆ノーベル賞 ダイナマイトの発明で知られるアルフレド・ノーベルの遺言により1901年に始まった賞で、世界最高の栄誉。ノーベルの意向で、医学生理学賞は「前年に人類に最も貢献し」「医学・生理学の分野で最も重要な発見をした人」に贈られるが、過去の業績の場合もある。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20121008-OHT1T00277.htm




マラソンでカンパ訴えた山中教授 事業仕分けで苦しんでいた?
2012/10/ 9 20:13

 ノーベル医学・生理学賞を受けた山中伸弥京大教授(50)は会見で、「日の丸のご支援」があったと日本政府に感謝の言葉を述べた。しかし、そこには複雑な思いがあったようだ。

 受賞が決まった2012年10月8日夜、山中伸弥教授は神妙な表情をして会見に臨んだ。

仕分けで研究費150億円が3分の1になった可能性

「まさに日本という国が受賞した賞だと感じています」

 静かに受賞の喜びを語った山中教授は、何度も日本政府の支援への感謝を口にした。

 確かに、国立の奈良先端科学技術大学院大に准教授として採用されてから、山中教授は国の支援に助けられた面があるようだ。まだ無名の研究者だったが、文科省所轄の科学技術振興機構を通じ、03年10月から5年半で総額3億円もの研究資金提供を受けた。その後、山中教授は、マウスのほか人でもiPS細胞の作製に成功し、世界を驚かせた。そして、08年4月からは、さらに5年間で約20億円の特別プロジェクトを任せられている。

 ところが、民主党政権に交代した09年になると、科学技術予算は、容赦なく事業仕分けの対象になった。山中教授のプロジェクトも、その1つに挙げられたのだ。これに対し、山中教授は、ほかの研究者らとともに会見を開き、日本は海外より10~20年遅れた環境で研究しているとして、仕分けを「想像を絶する事態」だと強く批判した。

 プロジェクトの予算は、結果的に削減されなかった。しかし、自民党政権時代は2700億円あった内閣府の最先端研究開発支援プログラムは、1000億円に大幅な減額を余儀なくされた。その後、山中教授のプロジェクトは、最大枠の50億円が確保されたが、もし以前のプログラムのままなら、150億円が充てられた可能性がある。つまり、3分の1にまで減らされた恐れがあるということだ。

 それだけに、山中教授が国の支援に感謝を述べたことに、ネット上では、「痛烈な皮肉でしょうね」との見方も出ているほどだ。

海外で特許を取るためのお金など多額の費用

 世界的な研究が認められて、山中伸弥教授は、現在は各省庁から様々な支援を受けている。文科省からは、科学技術振興機構の分を含めて、2012年度は、26.5億円の支援があった。13年度は、同省が44.5億円の予算要求をしている。

 とはいえ、内閣府からの50億円支援などは、13年度末までに終了してしまうことになる。

 京大のiPS細胞研究所は、世界に先駆けて、iPS細胞の実用化を目指している。それには、多額のコストがかかるようだ。職員200人の人件費や最新の機器代、マウス飼育費などのほか、海外で特許を取るためのお金もいる。京大の広報室では、「特許は、お金もうけではなく、研究者が自由な環境で開発するために必要なんですよ。その壁があると、医療は進みませんから」と説明する。

 iPS細胞で期待される再生医療は、日本は、アメリカの10分の1の予算しか出ないとされる。また、海外の研究所は、山中教授の数倍の研究資金で回していると言われている。

 山中教授が好きなマラソンで研究資金を募るようになったのは、まだまだ足りない日本の事情があるようだ。

 12年3月の京都マラソンで、400万円のカンパを訴えたところ、出走前に集まり、目標を1000万円にして現在も募っている。財団法人「ジャスト・ギビング・ジャパン」のサイトを活用しており、ノーベル賞受賞で寄付が上積みされ、10月9日夕現在で1300万円を突破した。

 サイトのコメント欄には、山中教授への応援メッセージがあふれている。「我が子も神経線維腫症という難病です。まだまだこれからだと思っておりますが、いつの日か!という希望が持てました」「僕も神経の再生を待ち望んでる身体障害者の一人です。応援してます!」といった書き込みがあり、研究への期待は大きい。

http://www.j-cast.com/2012/10/09149474.html?p=all


日本の未来が危ない!山中教授も憂う“事業仕分け”

 「スゴイ技術」が生まれつつあります。レディー・ガガが「量産」できる日が、もうそこにきているかもしれないんです。

 一昔前に「クローン技術」というのが話題になって、同じ遺伝情報を持った動物を生み出せるようになったのは広く知られています。ところがこの方法は受精卵を使うために、一つの命を生み出すために他の命を犠牲にしていいのか?という生命倫理的な観点からの問題が付きまとっていたんですね。

 ところが、「スゴイ技術」では、受精卵を使わずに、例えばガガの皮膚の細胞を増殖させてガガを作れるっていうんです。今のところ、完全な形の生命体を作るのはまだ研究を続けなくちゃいけない段階だそうですが、網膜のような簡単な臓器を作ることは既にできるんです。

 網膜に異常が起きる高齢者は相当に多いんですが、本人の細胞から本人の網膜を作り出し、それを移植して治療することが、来年くらいから実験的に始まるっていうんですから、スゴイ話です。

 この「iPS細胞」の技術を開発したのが、いま日本で最もノーベル賞に近い男といわれる京大の山中伸弥教授です。先週の読売テレビ系「ウエークアップ!ぷらす」に出演してもらったんですが、研究者の前にお医者さんもやっていたとあって、CMの間中、教授に質問が集中しました。

 「先生、タバコと酒とどっちが体に悪いですか?」「僕、高血圧なんですが医者に行った方がいいでしょうか?」って、ノーベル賞を取ろうかという学者に健康相談してどうするんですか。

 それにしても、先生がボヤくんです。とにかく日本では、すぐに金にならない「基礎研究」に携わる人々は冷遇されていて、規模の面でも研究費の面でもとても欧米に太刀打ちできないっていうんですね。

 だから、せっかく先進的な研究のヒントをつかんでもあっと言う間に欧米に追い抜かれたり、研究者そのものが外国に流出したりするんです。その一方で、先がないことが分かり切っている止まったままの高速増殖炉に、民主党政権は年間200億円もの維持費をつぎ込む無駄を平気で行っています。

 先生に「事業仕分けについて、どう思いますか?」と聞くと、科学者らしい穏やかな表情で、「苦しい思いで見ておりました」と答えてくれました。

 このままでは、日本の未来が危ないと思います。((株)大阪綜合研究所代表)

筆者略歴  辛坊 治郎(しんぼう・じろう)
1956年4月11日、鳥取県・米子市生まれ。56歳。早大法学部卒。80年、読売テレビにアナウンサーとして入社。ニューヨーク駐在員、報道局解説委員長などを歴任し、2010年9月末で退社。現在はフリーキャスター、芦屋大学客員教授、自身が設立したシンクタンク「大阪綜合研究所」代表。家族は妻と2男1女。

(2012年6月6日08時58分  スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/osaka/column/shinbou/news/20120605-OHO1T00109.htm?from=related


日本の『科学』が傷だらけに・・・科学技術立国 存亡の危機 ー 民主党による予算削減で
「取り返しつかない」ノーベル賞受賞者が仕分け批判/山中教授 事業仕分けを批判
「事業仕分け」が奪った日本力~未来への扉を閉ざされた科学技術
【民主党による事業仕分け】はやぶさ、後継機の予算3000万に縮小…着手できず
「2位じゃだめか、は愚問」ノーベル賞・鈴木さん、蓮舫氏発言をバッサリ
民主党は「日本の理系」を殺す気か このままじゃ、日本は2番どころか20番になる

山中教授 事業仕分けを批判【2009年】
http://www.youtube.com/watch?v=zCfpxf8qFEs





教授の「下手な」イラスト、研究進める決め手に
山中教授が自作したイラスト。ES細胞が直面している課題を「涙を流す胚」(上)、「腫瘍ができて涙を流すマウス」(下)で表現した(山中教授提供)

 ノーベル生理学・医学賞の受賞決定から一夜明けた9日朝、山中伸弥・京都大教授(50)はいつも通り研究室に顔を出した後、夫妻で記者会見に臨んだ。

 研究者として最高の栄誉に浴する喜びを語りつつ、世界の期待に応える重責への決意もにじませた。授賞理由となったiPS細胞(新型万能細胞)の研究を飛躍させた原動力は、研究の重要性を粘り強くアピールする山中教授自身の「プレゼンテーションの力」。自分で作成した個性的なイラストが、約3億円(5年分)という巨額の研究費を獲得するきっかけとなった。

 山中教授は2003年8月、iPS細胞の基礎研究に手応えを感じ、国の大型研究費を申請した。しかし、当時は本人の強い自負とは裏腹に、iPS細胞研究はまだ模索の段階だった。そこで、研究費配分の審査では、世界的に研究が先行していたES細胞(胚性幹細胞)の問題点をイラストにまとめ、「ES細胞に代わる新たな細胞を作る必要がある」と訴えた。

 イラストの図柄は、人の胚(受精卵が成長したもの)や腫瘍のできたマウスが涙を流す様子を描いていた。ES細胞の研究では、人間への応用を考えた場合、母胎で赤ちゃんに育つ胚を壊し、作らなければならないという倫理的な難問が立ちはだかっていた。移植した時に腫瘍ができやすい弱点もあり、それらが分かりやすく伝わった。

 山中教授は「今考えたら、よくこんな下手なイラストをお見せしたものだと冷や汗が出ます」と苦笑するが、審査担当だった岸本忠三・元大阪大学長は「イラストを使った説明には(説得する)迫力があった。(iPS細胞は)できるわけがないとは思ったが、『百に一つも当たればいい。こういう人から何か出てくるかもしれん。よし、応援したれ』という気になった」と高く評価した。

(2012年10月9日14時42分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20121009-OYT1T00771.htm



【ノーベル賞】世界見据えた知財戦略 山中氏のもう1つの“功績”
2012.10.8 23:12
 創薬や医療など幅広い分野にわたり、応用が見込まれる人工多能性幹細胞(iPS細胞)。ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大の山中伸弥教授のもうひとつの“功績”は、日本発の先端技術としてiPS細胞の国際特許を確立したことだ。世界を見据えた知財戦略は、iPS細胞研究の普及を促すとともに、『iPS=山中教授』との認識を世界に広め、異例のスピード受賞にもつながった。

 山中教授が所長を務める京大iPS細胞研究所(サイラ)には、特許出願や管理を担う「知財契約管理室」がある。

 「京大に来てもらえないでしょうか」

 製薬会社の知財部門に在籍していた高須直子氏に、山中教授が頭を下げて室長就任を請うたのは4年前のことだ。企業が特許を取得すると特許料が高騰する可能性があり、係争に発展すれば研究にも影響する。

 サイラでは高須室長ら、知財の“プロ”4人が週に1回、研究者たちが開く進行状況報告会に参加し、必要と判断すればすぐに特許申請を行う。「国内では作製法の7、8割、米国で5割が特許でカバーできる」(山中教授)のも、こうした戦略のたまものだ。

 サイラは学術研究には無償で使用を許諾し、商業目的の研究開発にも安い特許料で使用を認めている。山中教授は8日の会見で「研究開発と同じスピードで倫理や知財に対応しなければ、本当の意味での実用化はなされない」と知財の重要性を改めて強調した。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/121008/wec12100823130006-n1.htm





【特許ウォーズIV~チーム山中の奮闘(1)】
焦りといらだち 米国で足踏みしたiPS細胞
2012.9.2 18:00

 グローバル化が進み、大学や企業は今、世界中で特許を取得する必要に迫られている。ただ、思わぬ難題に突き当たるケースも少なくない。京都大学iPS細胞研究所を舞台に、海外での知財戦略の課題を探ってみた。

 「なぜ、米国では特許審査にこれほど時間がかかるのか。遅すぎる」

 山中伸弥教授(49)が所長を務める「京都大学iPS細胞研究所」(京都市左京区)には、焦りといらだちが交錯していた。平成22年から23年初夏にかけてのことだ。

 山中教授が発明したヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製技術は、平成20年9月に日本で最初の特許が成立。その後、1~2年で南アフリカやロシアなどでも同様の特許が相次ぎ成立していった。

 しかし、他国と同じ時期に出願したものの、特許が成立しない国があった。医療先進国の米国だ。米国の医薬品市場は約27兆3千億円(2010年実績)と日本の3倍で、山中教授らのライバルとなる企業は無数に存在する。

 もしiPS細胞の特許で先を越されたら、同技術を利用した医療技術に多額の特許使用料が発生し、医療費の高騰を招く。「多くの難病患者を救う」という山中教授の理念の障害にもなるため、京大では危機感が募っていた。

 世界には日米欧など20カ国以上が加盟する「特許審査ハイウェー制度」と呼ばれる仕組みがあり、自国で特許が成立すれば他国でも1年前後で特許が認められる。それにもかかわらず米国でiPS細胞の特許が成立したのは23年8月と、日本での特許取得から3年が経過していた。

 米国で審査が長引いたことについて、京大側は「どうして3年もかかったのかわからない」と首をかしげる。山中教授は「特許の世界は中立だとは思うが」と話しつつも、海外での特許取得は「アウェイの戦いを強いられる」という。その象徴が米国だ。

 世界の特許制度は、2種類に大別される。

 最初に出願した者に権利を与える「先願主義」と最初の発明者に認める「先発明(せんはつめい)主義」。日本を含む先進国の大半は先願主義だが、米国だけは唯一、発明者を保護するという観点から先発明主義を採用してきた。

 iPS細胞の実用化にむけては今後も特許の取得が必要となり、日本で成立した特許でも米研究者より先に発明したことが立証されなければ、米国では取得できない。このため、京大iPS細胞研では全研究者がノートに日々の実験内容や成果を克明に記録。知財契約管理室の職員が記述内容を確認し、日付を書き込み署名していく。「米国での特許出願には発明日の立証が必要で、この作業は欠かせない」と高須直子知財契約管理室長(50)は話す。

 最難関の米国だが、実は来年3月に先発明主義から先願主義に移行する。知的財産法制に詳しい北浜法律事務所のジェリー・メステッキー弁護士(42)は、約60年ぶりの制度変更を「先願主義が事実上の標準となる中、自国と海外の制度が異なり、米国の企業や研究機関に弊害が出ていた」と説明する。

 山中教授らにとっては朗報だが、手放しでは喜べない。米国の先願主義は来年3月以降に出願されたものが対象で、それ以外はすべて先発明主義のまま。このため、高須室長は「ノートへの記録と署名は今後も続ける」と話す。

 欧米、中国、韓国勢との先端技術の開発競争で、近年は劣勢に立つ日本にとって「iPS細胞は宝」(関係者)。ただ、iPS細胞の実用化は10~20年後といわれ、今後も安全性の確認など、さまざまな過程で特許の取得が重要となるだけに、山中教授らにはこれまで以上の緻密(ちみつ)な特許戦略が必要となる。

(松村信仁)

     ◇

 【用語解説】iPS細胞

 正式名は人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)。皮膚などの細胞を別のさまざまな細胞に進化できる状態に「初期化」したもので、万能細胞と呼ばれる。再生医療や創薬への応用が期待されている。患者自身の細胞を元に臓器などを作れるため、拒絶反応がなく、倫理上の問題もない。難病の患者からiPS細胞を作って、その状態の変化を研究すれば発症原因の解明にもつながる。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/120902/wec12090218000004-n1.htm



【特許ウォーズIV~チーム山中の奮闘(2)】
英で先を越されたiPS細胞特許 係争を避ける手段は
2012.9.3 07:00
iPS細胞の作製に関する主な研究成果

 平成23年1月。大雪となった京都市内で、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授(49)らは4人の米国人と顔を合わせていた。

 相手は米バイオ企業、アイピエリアンの幹部と弁護士。一般にはなじみのない企業だが、一部の研究者の間では知られていた。というのも、米ア社は人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製技術の一部について英国で京大よりも先に特許を取得。京大は特許をめぐり係争になるかもしれないという壁にぶつかっていた。

 米ア社側の来日にあわせ京大は山中教授のほか、法律の専門家などからなる交渉団を編成。両者の交渉は3日間に及んだ。

 実は交渉の1カ月前、山中教授の元に米ア社の社長から『係争回避のため当社の特許を譲渡します』という内容の電子メールが届いていた。このため、交渉では米ア社が京大に特許を譲渡し、そして京大の特許を使用できるという契約について「(契約書の)骨子を詰めることが主な内容だった」(京大関係者)。

 それでも契約書の文言をめぐっては、日本語と英語という微妙なニュアンスの違いがトラブルのもととなりかねない。しかも、交渉は通訳なしで英語で行われただけに、どこに“落とし穴”があるかわからず、製薬会社の知財部門に在籍した経験を持つ京大iPS細胞研究所知財契約管理室の高須直子室長(50)ですら「交渉の前夜は不安で眠れなかった」と振り返る。交渉が不調に終わり、係争に発展すれば、京大は弁護士費用など1億円以上の出費と解決までに約2年の歳月を費やすおそれもあった。

 係争を回避できたのは相手が先に折れるという運に恵まれただけなのか?

 「それは違う。『iPS=山中教授』というイメージが浸透し、これが係争回避の武器となった」。特許庁の担当者はこう解説した上で「もうひとつは米国のベンチャー企業は研究成果の早期実用化が求められている。係争になるとそれが難しくなるため、避けたのでしょう」と推測する。

 日本中がロンドン五輪に熱狂していた8月1日、京大iPS細胞研究所は、筑波大学などとある研究成果を発表した。

 神経細胞に障害が起きて筋肉を動かすことが困難となり、やせていく筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者のiPS細胞から治療薬の候補物質を見つけ出すことに成功したのだ。難病のALSは発症メカニズムが未解明で、有効な治療薬もない。それだけにALSの治療薬開発に道筋をつける世界初の発見に医療関係者が驚愕(きょうがく)した。

 米ア社との特許係争を回避し、iPS細胞の実用化にむけ前進するが、京大の事例のように係争で円満に解決できた例は少ない。日米間での特許訴訟の多くは米企業に裁判を起こされ、日本企業は敗れてきた。

 住友電気工業は1980年代半ば、光ファイバーに関する特許をめぐり米コーニングと争って敗訴。33億円の和解金を支払い、米国から一時撤退した。

 当時は日米の貿易摩擦が激しく、米国は知的財産の保護と活用を重視する「プロパテント政策」を掲げていた。住友電工の佐野裕昭知的財産部長(52)は「米国の産業政策の変化を見抜けず、戦略面で不十分だった」と今も悔しがる。

 「世界中の難病患者を救う」。山中教授はこの言葉を目標を掲げ、米欧やロシアなどで特許を取得、中国や韓国でも出願済みだ。特許庁も「将来の青写真を描き、まず市場が見込めるところで特許を取得するのが有効」(沢井智毅・国際課長)と指摘する。

 とはいえ、iPS細胞の技術開発はまだ途上で、山中教授以外にも米ウィスコンシン大学のジェームズ・トムソン教授が別の研究成果を発表するなど、世界中が開発にしのぎを削る。こうした中で、交渉下手といわれる日本人が特許係争を回避するひとつの有効手段は「圧倒的な技術力を持つことだ」(関係者)。

 京大iPS細胞研の特許戦略は、資金力の乏しい大学や研究機関が競争を勝ち抜くための貴重な前例となるかもしれない。

(松村信仁)
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/120903/wec12090307000000-n1.htm



【特許ウォーズIV~チーム山中の奮闘(3)】
韓国に惨敗 日本の家電各社が怠った知財管理
2012.9.4 07:00
iPS細胞実用化までの道のり

内閣官房「日本企業は知財マネジメント不十分」

 研究者の話はとかく退屈で、面白くない。これは世の常である。

 しかし、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授(49)は違う。大阪出身だからというわけではないが、講演で必ず一度は笑いを取るなど研究者ということを思わず忘れてしまうほど親しみやすい。難解な研究内容を分かりやすい言葉で語りかけ、聴衆を説得し、共感させる。

 ただ、次の言葉を口にするときだけは研究所のトップの表情に戻る。

 「知的財産に精通した人材が足りない」

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)について、京大は国内外で90件以上の特許を出願中。今後は製薬会社などと連携を図る上で、これらの特許を生かすための知財戦略が重要となる。

 日本のお家芸だった家電製品は、今や韓国勢が席巻している。米ディスプレイサーチによると、2011年の世界の薄型テレビの売り上げシェアはシャープ、ソニー、パナソニックの3社が束になっても、韓国のサムスン電子とLG電子を合わせた数字より約13%も下回る。

 韓国製品は大量生産によるコストダウンと、ウォン安による輸出増加でシェアを拡大してきたが、日本勢が負けたのはそれだけが理由ではない。

 「日本企業は知財マネジメントが十分にできていなかった」。内閣官房知的財産戦略推進事務局の安田太参事官(47)はこう指摘する。どういうことなのか?

 家電製品の特許と一口に言っても、基礎技術から応用技術、製造技術と広範囲にわたる。日本企業が海外メーカーと特許契約を結ぶ場合、「これから守っていくべき技術と、ノウハウを隠しつつも権利として外部に供給する技術をうまく区別できず、結果的に基幹技術が流出してしまうケースもあった」(特許庁)と説明。将来ビジョンを描いた上で、そのビジネスモデルを知財で守れる人材が少なかったことが、韓国勢に圧倒された原因のひとつというわけだ。

 産業界の要請もあり、知財に強い人材を育てようという試みが今、大学で始まっている。

 大阪工業大学(大阪市旭区)は平成15(2003)年、国内の大学で初となる知財を専門とする「知的財産学部」を設け、特許庁や産業界から知財の専門家を教授として迎え入れた。

 特許関係では弁理士という資格もあるが、「弁理士は特許出願などの代理業務が主体。知財戦略を練るには技術を理解していないと何もならない」と田浪和生学部長(66)は指摘する。

 大阪工業大以外にも、今では一橋大学や東京工業大学などに知的財産に関する専攻があり、知財のプロを養成しようとする機運は確実に広がっている。

 国も動き出した。今年1月、政府は発明した技術を活用できる専門家の育成を目指し、「知財人財育成プラン」を策定。来年3月までに国内外企業の知財戦略を収集・分析し、調査報告書をまとめるという。

 「京大に来てもらえないでしょうか」

 京大iPS細胞研究所知財契約管理室の高須直子室長(50)は、山中教授からこう告げられた4年前のことを、今も鮮明に覚えている。山中教授は、製薬会社の知財部門に在籍していた高須さんを京大に招きたい理由として、次の2点をあげた。

 「自分はiPS細胞の研究に専念したい」

 「知財係争に耐えられる組織をつくりたい」

 高須さんは話す。「研究成果を『点』とすれば、知財に詳しい人がいると、それを権利化して『面』にすることができる」

 注目度の高い先端研究では、特許業務に相当な時間を割かれる。しかし、それらをおろそかにすると、研究成果をライバルにかすめとられてしまう。

 研究者のそばに知財のプロがいるかどうか。それが画期的な研究成果を、世の中に広めていけるかどうかのカギを握っている。

(松村信仁)

http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/120904/wec12090407010000-n1.htm



【特許ウォーズIV~チーム山中の奮闘(4完)】
「アウェーの戦いをしている」山中教授、海外特許戦略を激白
2012.9.5 07:00

 世界中で今、IT(情報技術)やバイオなど最先端技術の特許をめぐる争いが起こっている。そのひとつが「万能細胞」と呼ばれる人工多能性幹細胞(iPS細胞)だろう。iPS細胞の生みの親、京都大学の山中伸弥教授に海外での特許取得の現状や特許戦略における日本の課題などについて話を聞いた。

(板東和正)

 --米国での特許取得の難しさは

 「米国は、特許において最初の発明者に権利を与える『先発明主義』を採用している数少ない国。私たちが最初に米特許庁に出願しても、他の研究グループが『アイデアを生み出したのは、こちらが先』と申し出れば難しい局面に陥る」

 --米国では、日本の特許戦略が不利ということなのか

 「特許の世界は完全に中立だとは思うが、やはりホーム&アウェイを感じざるえない。スポーツでも実力が同じなら、ホーム側が有利で、アウェイ側が厳しくなる。私たちはアウェイの戦いをしている」

 --iPS細胞の今後の特許戦略のポイントは

 「特許は山ほど取っていかなければならない。iPS細胞には、色んなステップで複数の特許が絡んでくる。すべての特許を取得するのは不可能だが、重要な特許を数多く取ることが必要不可欠だ」

 --大学における特許戦略の課題について

 「特許戦略では知財の専門家が豊富に必要だが、日本の大学ではこうした人材をきちんとした条件で雇用できていない。優秀な知財専門家が安定した民間企業などに流れてしまい、人材が不足している。研究者が良い論文を書いても、知財の保護を支援できる専門家がいなければ、世界では同等に戦えない」

 --特許戦略では競合する研究機関の動向を得ることも必要になっている 

 「情報収集のため海外でのネットワーク重要だ。海外などで興味をひく講演をすれば、ネットワークをうまく作ることができる。日本の研究者には、自分の研究を分かりやすく説明する能力も求められる」

     ◇

 【プロフィル】山中伸弥(やまなか・しんや) 大阪市立大学大学院医学研究科博士課程修了。奈良先端科学技術大学院大遺伝子教育研究センター教授や京都大再生医科学研究所再生誘導研究分野教授などを経て、平成22(2010)年から京都大iPS細胞研究所所長。23年にノーベル賞の行方を占う賞の一つといわれるウルフ賞(医学部門)を受賞した。49歳。大阪府出身。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/120905/wec12090507000000-n1.htm





京大、iPS細胞特許で国内4件目成立
2012/9/18 20:08

 京都大学は18日、山中伸弥教授が世界に先駆けて開発したiPS細胞の作製法に関する特許が国内で1件成立したと発表した。3~4種類の遺伝子に限定した作製法はすでに特許になっているが、これらと分子構造が似た遺伝子も対象になり、権利が及ぶ範囲が広がった。高額な特許料収入を狙うベンチャー企業を排除でき、iPS細胞を使った新薬の研究開発をしやすい環境がより整ったといえる。

 様々な組織に育つiPS細胞は皮膚などの細胞に3~4種類の遺伝子を導入して作る。

 国内で新たに認められたのは、4種類の仲間の遺伝子を使う作製法など。同様の特許は米国と欧州では成立している。京大のiPS細胞に関する特許が成立したのは国内では4件目となる。

 京大はiPS細胞関連の特許を世界で約90件出願済み。これまでに日米欧など26カ国と1地域で成立している。

 会見した山中教授は「国内では控えめにみても、iPS作製法の5割は特許として抑えたのではないか」と語った。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG18053_Y2A910C1000000/



iPS細胞:日米で新たに特許成立
毎日新聞 2012年09月18日 

 京都大は18日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作成技術に関する特許が日本で1件、米国で3件成立したと発表した。従来のものだけではなく、類似の遺伝子を使ったiPS細胞の作成技術の特許が認められ、より包括的な特許権が確立したという。日本での特許は4件目、米国での特許は6件目。

 京大iPS細胞研究所によると、iPS細胞は、体細胞に特定の遺伝子を導入して作成するが、分子構造が似た「遺伝子ファミリー」を使っても作成が可能だ。今回、遺伝子ファミリーを用いた作成手法と、この手法で作成されたiPS細胞を創薬などに使うことの特許が認められた。日本で作成されるiPS細胞の8割程度をカバーできるという。

 米国での3件は、米バイオベンチャー企業「アイピエリアン」から昨年、譲り受けた技術などに特許が認められた。米国での研究や創薬などをめぐり、京大の権利が及ぶ範囲が広がるという。

 記者会見した山中伸弥所長は「しっかりした特許が得られた。今後は、あまり争いに関わらず、再生医療や創薬などの応用研究に力を尽くしたい」と話した。【五十嵐和大】

http://mainichi.jp/select/news/20120919k0000m040091000c.html



山中教授「ノーサイド」 米“特許ウォーズ”に終止符
2012.9.19 08:20

 「まさにノーサイド」-。京都大(京都市左京区)で18日に行われた記者会見で、山中伸弥教授は今回成立した米国の特許により、米国企業との“特許ウォーズ”に終止符を打てたとの考えを示し、安堵の笑顔を浮かべた。

 山中教授がヒトのiPS細胞を作製してから今年で5年。研究の傍らで「知的財産の確保」という目標を掲げてきた理由は、研究成果を1日も早く、再生医療に応用するためだ。

 この日、記者会見に同席した京大の松本紘総長も「目的は金もうけではない。特定企業に法外な料金を要求され、治療を受けにくくなることを防ぎたかった」と強調した。

 今回、成立した米国の特許には、米ベンチャー企業の「アイピエリアン」から昨年1月に譲渡されたものも含まれている。山中教授は「創薬研究が盛んな米国では、特許の成立が必須。京大の権利が認められたことに安堵しており、関係者に感謝申し上げる」と繰り返した。

 さらに「『争いに関わりたくない』という思いの半面、『譲れない』という複雑な気持ちもあった」と心情を吐露。「(米国での特許争奪の)ゲームは終わった。これからは、どうすれば前に進めるかを考えたい。まさにノーサイドだ」と述べた。

 また、日本で新たに認められた特許は「今まで、特許の逃げ道がいっぱいあったが、iPS細胞を作る部分に限ると、7~8割くらいはカバーできたと思う」と達成感をにじませた。

 知的財産の確保のほかにも、山中教授は再生医療の臨床試験や新薬の開発などを目標に掲げている。「いずれも5年前には想像すらできなかったことが、着実に進んでいる。闘病されている方は、ぜひ希望を捨てないでほしい」と訴えた。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/120919/wlf12091908220002-n2.htm





「山中技術」国際標準へ 日米で新特許成立の京大iPS細胞
2012.9.18 23:03

 今回、新たな特許が日米で成立したことで、京都大の山中伸弥教授が発明したiPS細胞の作製技術の権利が、世界の医療を牽(けん)引(いん)する日米欧で、広くほぼ同等レベルの範囲にまで認められることとなった。

 日本では、注入する遺伝子の選択肢が欧米以上に広く認められたが、これにより、創薬や再生医療に向けたiPS細胞の実用化研究が国内でも一層進むだろう。iPS細胞作製の基本技術は、山中教授が発見した4つの遺伝子を細胞に注入する方法だ。この方法や、ここから派生したさまざまな方法が、日米欧でばらばらに特許を得てきた。

 だが今回、米国で係争の懸念があった特許が認められ、日本も遺伝子の「ファミリー」にまで権利が及んだ。日米欧で京大特許の範囲が均等化されつつあることで「山中技術」は今後、国際標準となるだろう。(秋山紀浩、中井なつみ)

http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/120918/wlf12091823060019-n1.htm




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