「事業仕分け」が奪った日本力~未来への扉を閉ざされた科学技術

2010年03月31日 | news
たけし、蓮舫議員に猛反対「宇宙の予算削減するな」
2010.3.31 09:25

 タレント、ビートたけし(63)がテレビ朝日系特番で、事業仕分けの削減対象となった宇宙航空研究開発機構(JAXA)を運営する茨城・筑波宇宙センターを取材し、予算削減に猛反対した。スーパーコンピューターの開発予算作業でNOを突きつけた事業仕分け人、蓮舫参院議員(42)に「タレント時代、オレと熱湯風呂入ってたのに、何言ってんだ。研究開発に金使わない国はダメになる」と物申した!

 「どうも、宇宙飛行士の野口五郎です」。宇宙服でおどけるたけしが、宇宙開発事業の予算削減反対を叫んだ。

 4月5日放送の「ビートたけしのTVタックル 直撃3時間SP」(後7・0)の企画で訪ねた場所は、JAXAの筑波宇宙センター。「おいら、明大理工学部出身だから宇宙とかロケットが大好きなんだよ。予算削減するんじゃない、あと1000億つけろ!って言ってやる」と意気込んだ。

 昨年、事業仕分けの削減対象となったJAXAの予算が本当にムダなのかを見極めるために、たけしはさまざまな施設を体験。ロシア・ソユーズの帰還カプセルの展示品や、宇宙ステーション用に日本が初めて作った有人施設「きぼう」の運用管制室などを見て歩いた。

 たけしは「やっぱり、科学の最先端だな」と再確認。昨年11月、次世代スーパーコンピューターの開発予算を検討する際、世界一を目指す日本の研究に対し、「2位ではダメなのか」と発言した蓮舫議員に、痛烈なダメ出しだ。

 女仕分け人がタレントだった1990年から2年間、バラエティー番組「スーパーJOCKEY」でたけしのアシスタントを務めた仲だけに、黙っていられなかった。

 「当時、蓮舫はオレと一緒に熱湯風呂に水着着て入ってたのに、何言ってんだ! スーツに襟立てて、スナックのママみたいな格好して」と茶目っ気たっぷりにほえた。

 続けて、真剣なまなざしで「スーパーコンピューターに限らず、なんでも1位にならなきゃ金もうけできないじゃない。2位になったら他から買わなきゃいけないぜ。研究開発に金使わない国はダメになる」と熱弁。「仕分けしてもいいけど、やっちゃいけないことはダメ。知らないことには口出すなっていうのはあるよ」と語気を強めた。

 ただ、最後はたけしらしく「鳩山首相のお母さん、1000万円でもいいから宇宙事業の予算にちょうだい」と“子ども手当”を懇願していた。

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/100331/tnr1003310935001-n2.htm







「事業仕分け」が奪った日本力
未来への扉を閉ざされた科学技術


2010年3月29日(月)

失ったのは「カネ」ではなく、「熱意」だった
一転して「予算復活」も、政府の無理解に広がる失望感
山根 一眞 

 ノーベル賞受賞者や大学がこぞって異論の声を上げた、民主党政権による科学技術の「事業仕分け」。あれから4カ月が経った。間もなく、第2回目の事業仕分けが行われようとしている。
 この間、「事業仕分け」の対象となった科学技術の現場で、何が起きているのか。科学技術の未来はどうなるのか。「メタルカラーの時代」などで20年以上にわたり先端の科学技術を取材してきたノンフィクション作家の山根一眞氏が警鐘を鳴らす。

 科学技術は世界の課題解決を実現して人類の幸福に寄与するためのものであり、目先の成果ばかりに目を向ければ道を誤る。また、企業や大学のみでは経済的な負担が大きすぎて手にできない施設や研究環境は、国が担うことで世界でのプライオリティを手にすることができ、新たな産業や富の源泉をもたらすなど活気ある未来を築くことが可能となる。

 だが、2009年11月に行われた「事業仕分け」ではカネをしぼり出すことしか頭になかったため、日本の科学技術の未来を徹底して潰してしまった。科学技術分野でも様々な制度改革が必要であることは言うまでもないが、「事業仕分け」では制度改革と予算廃止や縮減が混同され、結果として、科学技術の未来を閉ざす危機を招いてしまった。

世界期待の消防技術に“死刑宣告”


 2009年11月の「事業仕分け」の直後、北九州市立大学国際環境工学部の上江洲一也(うえず・かずや)教授は、同僚の准教授から腰が抜けそうになる知らせを受けた。

 「『事業仕分け』で、来年度から研究費がゼロになりそうです」

 11月13日、東京で行われた「事業仕分け」の第3ワーキンググループによる「仕分け番号3-23・地域科学技術振興・産学官連携」では、この研究予算を受けていた全国の大学の研究者たちの研究プロジェクトに対して一括して「税金のムダのため廃止」という“死刑宣告”が下されたのである。「寝耳に水」どころの話ではなかった。

 上江洲教授のプロジェクトの1つは「重点地域研究開発推進プログラム(育成研究)」として採択された「石けんを主成分とした林野火災用の泡消火剤の開発」だ。2009年度から3年間の事業費は約7000万円。北九州市立大学とシャボン玉石けん(福岡県北九州市、森田隼人社長)、消防自動車メーカーのモリタ(兵庫県三田市・東京都港区、中島正博社長)ホールディングスが参加団体だ。

 上江洲教授は、北九州市消防局、シャボン玉石けんとの共同研究で約7年間に700近い試作品を作り分子レベルでの検証も続け、画期的な発泡消火剤「ミラクルフォーム」(モリタの商品名)を完成させた。この消火剤を放水に混ぜることで、住宅火災では従来の放水量の約17分の1で鎮火が可能になった。集合住宅の消火では下階への“水損”が小さく、高齢化が進む消防士の負担も軽減。鎮火時間も短くでき、消防車のコンパクト化も実現できる画期的な開発成功だった。また、米国製の発泡消火剤は土壌や水場の微生物を殺すなど生態系へのダメージが大きいが、「ミラクルフォーム」は影響を小さくすろこともクリアできた。

 モリタは、この発泡消火剤混合装置を搭載した新型消防車を発売、全国の自治体消防からの注文が殺到している。

 1995年の阪神・淡路大震災の大火災のような悲劇を繰り返さないためにと産官学の連携で産み出したこの発泡消火剤の販売ロイヤルティーは、北九州市にも北九州市立大学にももたらされている。“学官産”プロジェクトの鑑と評価される成果なのである。

 この成功を受けた北九州市立大学は、2008年4月、一般大学では初の「環境・消防技術開発センター」を発足させ、センター長には上江洲教授が就任した。そして、同大学の横断的な組織である同センターが次の課題として目を向けたのが、林野火災用の発泡消火剤の開発だった。

国への納税額を増やし潤すはずだが・・・


 地球温暖化の進展で世界では林野火災が急増、南欧州では年間800件も発生している。それに対処するため世界では航空消防力への期待、需要が大きくなっている。その世界の潮流を受け、北九州市の産官学チームに、世界最高性能の救難飛行艇「US-2」を製造する新明和工業(兵庫県、金木忠社長)も加わった。US-2は消防飛行艇に改造可能なため、林野火災用発泡消火剤を搭載した日の丸消防飛行艇を世界へ普及させようという壮大な夢のプロジェクトが動き出す。高度の航空技術を持つJAXA(宇宙航空研究開発機構)も共同研究に参加している。

 US-2は1機約100億円で航空自衛隊にのみ納入してきたが、世界を市場とする量産効果が得られれば価格は大幅に下がる。それによって防衛費は減り、航空機の世界での販売増は国への納税額を増やし潤すことにもなる。そのキーとなるのが、まだ世界にはない安全で効率的な林野火災用の発泡消火剤なのである。そこで上江洲教授は、工学から生態学、環境マネジメントなど専門家のチームを組織し専任の研究者や事務職を外部からも雇用し研究を続けてきたのである。

 だが2010年度予算が廃止となれば残り2年を残してチームは解散し、産官学プロジェクトも消滅。国はやがてもたらされる富を失うことにもなる。

 上江洲教授はもう1件、「知的クラスター創成事業」(第2期、2007~2011年度)に採択された「バイオセンサー」(生物の構造・機能を活用したバイオコンポジットセンシング)の技術研究開発にも取り組んでおり、年間研究費3900万円を得ていた。

 北九州市立大学が6人、海外共同研究者3人、企業4社も参加したプロジェクトだ。上江洲教授は、米ボストンでのシンポジウムに参加し、開発したバイオセンサーが世界でも優位性のある革新的なものとの確信を得たばかりだった。これは、大きなビジネスを産み出す、と。だが「事業仕分け」によって数多くのプロジェクトが進んでいた「知的クラスター創成事業」も一括「廃止」。

 「両プロジェクトのために雇用した5人の研究者たちをクビにしなければならないことが何よりも辛かった。5人には、『4月からの予算が入らなかったら解雇ですので、新たな就職先があれば移って下さい』と話しました」(上江洲教授)。

 その申し出を受けた女性研究者の1人は大学を去っている。

 私は数年にわたり北九州市の産官学プロジェクトを取材してきた。2009年12月半ばに久しぶりに北九州市で上江洲教授に会っているが、「事業仕分け」から1カ月、いつものエネルギッシュさがなく気力が失せた別人のような姿で多くを語ろうとしなかったことが忘れられない。

鳩山政権にとって「事業仕分け」とは?


 あの「13日の金曜日」に一方的に息の根を止められた研究プロジェクトは数百に上るとされ、多くの研究者が激しい怒りと不安、絶望の淵に追いやられた。

 ところが一転、2009年末から2010年2月にかけて「予算復活」の知らせを受けたケースが多いのである。上江洲教授も「林野火災用発泡消火剤は2010年度は現状維持」、「バイオセンサー」も10%削減の総額3500万円が出ることになった。後者は、人件費は削減できないため実質的な研究費は25%減の1200万円に縮減だが。

 上江洲教授の2つの研究プロジェクトは「事業仕分け」第3日目の11月13日金曜日、第3ワーキンググループの仕分け対象に含まれていた。その一部を紹介する。

仕分け人 これだけの地域の数があがってますが、わたし自身が、ここ、これらの地域で、すべて産官学連携でもって、町がどれだけ活性したのかというのは、かなり疑問に思っているんですが、具体的な成果として、地域にどれくらいの金・人・物なんですが、落ちてきたか。(略)

仕分け人 知的クラスタだとか、都市エリアうんぬんかんぬん、言葉はいいですし、わたしもこれはまったく賛成なんですが、これほどの巨額な投資をして、本当にその体質が変わるのかというのは、これは大学が変わらないとしょうがないと。(略)

議事進行者 はい、えー、えー、お待たせいたしました、地域科学技術振興、産学官連携事業なんですが、予算の縮減が2人。2分の1、あるいはその他という結果です。で、来年度予算を見送り、そして自治体の判断に任せるべきだが3人。廃止が5人。で、見送りと答えた方も、全体的に整理をしてそのうえで統合して予算を考えるというご意見が付されております。大多数のご意見で、これは国としてやる必要性があまりないのではないかという結果になりました。(略)ごめんなさい。あの、ということで、廃止ということでまとめさせていただきます。

 「税金の無駄の削減」に果敢に取り組んだ民主党の決断は評価に値する。だが、わずか50分間のこのレベルの論議しか行っていなかった。50分は小学校の授業並みの短時間だ。こうして数多くの研究プロジェクトに一律に“死刑宣告”を下しながら、一転、予算を復活させた鳩山由紀夫政権にとって「事業仕分け」とは何だったのか。

 「1年間のクビはつながりましたが、来年、また同じことが起こるではという思いが強いです」

 上江洲教授のケースは科学技術に携わる研究者たちが「事業仕分け」によって受けた危機のごくごく一部にすぎない。研究現場の崩壊には至らぬまでも真摯な研究者の解雇など、民主党政権によって日本の科学技術の未来への期待が奪われたという失望感の広がりは、計りしれず大きい。

次世代の芽も摘みかねない


 「地域科学技術振興・産学官連携」と同じく9月13日に俎上に載せられた「競争的資金(若手研究者育成)」(事業番号3-21)も「予算要求の縮減」と下された。これに対して、2009年12月18日、東京大学理学部物理学科4年生有志が、「予算要求の縮減」をどう受け止めたかについて2133人(総有効回答数)の学生へのアンケートを実施し、調査結果を発表している。なかでも「公的機関での研究職を志望する学生(有効回答数946人)」の回答を見て慄然(りつぜん)とした。
東京大学理学部物理学科4年生有志「公的機関の研究職を志望する学生に対するアンケート結果」の一部(出典:「若手研究者育成資金縮減の影響調査及び反対署名」)

 将来の日本を担う可能性を秘めた多くの若手研究者たちが、「事業仕分け」を受けて日本を捨てて出ていこうとしている。「事業仕分け」の廃止や縮減で捻出して得た防衛費を上回る「子ども手当」というカネをばらまいても、その子どもたちに待っている未来は日本を捨てる道しかないということになる。

 「競争的資金(若手研究者育成)」の論議では、大学院の博士課程の若手研究者の制度上の問題に対する以下のような意見が多数を占めていた。“理科”とは無縁の仕分け人たちの「評決」の判断材料にされたように思う。

仕分け人 社会的に需要ないのに供給過多にしてしまって、それは個人の戦略が間違っていたというわけでもありましてですね。たとえば普通に大学でて、なかなか就職みつからない人間に生活保護を与えるのかというのと同じ話でドクターをとった人間だけなぜこうやって生活を守ってあげないといけないのか、基本的にあんまり僕は理解できないですね。

 私は、博士課程の研究者たちの乏しい研究費や生活の困窮を多く見てきた。絶滅に瀕した野生動物の生態調査研究を行っている若手研究者のチームが、真冬でも暖房のない隙間だらけの小屋に寝泊まりし、食費もままならず町のホテルの宴会の残飯をくすねてきて「ごちそうだ!」と食べていると聞いたことがある。

 このチームには韓国の研究者も加わっていたが、「日本は先進国と思っていたがどうなっているんですか」と言われたという。このチームに私は米などの越冬食糧を送ったが、こういうケースは決して珍しくない。そもそも絶滅に瀕している野生動物の生態調査研究全体に対する予算も、悲惨なほど少ないのである。

 大学院研究者に対する制度は問題が山積みで大改革が必要なことは異論がない。だが、「制度改革が必要なので予算を縮減する」という判断は、「通学時の子どもの交通事故が多いので民主党はすべての子どもの通学をやめさせることにした」というに等しい。

 「事業仕分け」は国の活力を取り戻すために行われたはずだが、科学技術分野では熱意を持った研究者たちのエネルギーを徹底して奪い去って終わった。

 こういう結果となった原因は、「巨額の予算のムダ」である「子ども手当」の財源を絞り出したかったことに加え、行政刷新会議が当初から日本が生きていく道は科学技術立国としての力をより高めていくことへの認識欠如、科学技術への知的な興味や理解、期待もなかったからではないか。行政刷新会議牽引役の枝野幸男議員(現・行政刷新担当大臣)や歴史に残る質問で名を上げた蓮舫議員に日本の科学技術の知的な未来ビジョンを期待すること自体、無理とは思うが。

 次回以降で、さらに検証を続ける。

 「事業仕分け」は、密室での議論ではなくすべてを公開することで国民の理解を得ながら「税金のムダの削除」を目指した。情報公開が大前提だったはずだ。だが、その議論を知るには会場に足を運び傍聴するか記録性のないインターネット中継を視聴し続けるしかなく、平日の昼間に仕事を放り出してネット接続できるパソコンにかじりついていることができた人は限られた。

早急な議事録の公開を


 そこで「事業仕分け」を検証するには、国会議事録同様、一言一句を記した議事録が出るものと待っていたが、4カ月過ぎた今も公開されていない。「事業仕分け」はお笑いの聞き流しテレビ番組ではない。政府が行う国の根幹を変えようという重大な議論だ。その議事録を公開しないのは、議論の中身が薄っぺらだったことを隠蔽するためと受け止められても仕方ない。早急な議事録の公開を求める。

 もっともそのインターネット中継は、有志によって主に音声のみが記録され動画投稿サイトの「ニコニコ動画」でのみ聴取可能だ。さらに、その動画、音声記録を基に有志によるテキスト化が行われてネット上で公開されている。

 本来国が担うべき大変な作業を無償で担って下さった方々には頭が下がる。本文中に記した論議内容はその記録の引用させていただいたが、仕分け人や議事進行者、説明者の氏名や所属は確認できていない。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20100317/213423/

#shiwake3 wiki - FrontPage
http://mercury.dbcls.jp/w/index.php?FrontPage

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