『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『やさしさグルグル』 行正り香

2014-06-23 | Books(本):愛すべき活字

『やさしさグルグル』
行正り香(日:1966-)
2008年・文化出版局
2012年・文春文庫


++++

それから、いつも「応援しているから」と言ってくれる同期に巡り会えたこと。

先輩にも同期にもすごい人がいっぱいいたけど、後輩にも魅力的ですてきな人が、たくさんいたこと。

何人かの人たちはふっとこの世から消えてしまったこと。

でも、心の奥で、ずっと行き続けていること。

時々、その人たちと話をするということ。

いちばん楽しかったお給料の使い方は、どんなモノを買うことよりも、誰かと飲むお酒であったこと。

++++


誰だって、

Be nice to people

でありたいと思って暮らしてると思う。

だけど、簡単にはいかない。


加えて、

創造性溢れる豊かな仕事をこなし、

よき仲間に恵まれ、

家庭では笑いが絶えず、

子どもには既成概念を押し付けずに、その子の良いところを伸ばし・・・と夢見るけど、

なかなかそんな風にはいかない。


俺なんか比較的性格も穏やかなほうと思うけど、実際はイラチなので、やっぱり仕事とかしてると、


「ニャロメ!」

と叫ぶことも、ままあるわけで。


そんな時に、例えば、

長屋風の古民家(しかし、実際はリフォームされて清潔かつお洒落)に住んで、

おばんざいを現代風にアレンジした料理を振舞う料理研究家、兼エッセイスト、みたいな人の本を読んでも、

浮世離れしてて、素直に入ってこーへん、中身が。


でも、行正さんは元・電通のCMプロデューサーで、退職後も2児を育てながら仕事を続けている方なので。

浮世サイダーというか。

バリバリ仕事をしながらの話なので、こちらも飲み込みやすいと言うか。


本書で、行正さんは

「こういう人間でありたい」

「人とこう接したい」

という思いを、念仏を唱えるような感じで反芻している。

だから、同じようなテーマが繰り返し出てくるんだけど、それこそ、まさに俺たちの毎日そのものだと思う。


日々起こるあれやこれやのトラブルって、言うたら

いかに Be nice to people でいられるかのバリエーション違い、みたいなとこあるよね。


日常の忙しさや、イライラに飲み込まれそうになる自分を、こうありたい自分の方向へちょっとでも舵を切りなおす。


子どもの頃、

「俺は、人生のある段階で仙人みたいな領域に到達するんじゃないか」

って、思ってたんだけど。

多分、そんな日は死ぬまで来ない。


今、感じてる煩悩や苛立ちとは、きっと生涯付き合って行くんだろう。

だから、一生、ちょっとずつでも舵を切り直しながら行くんだと思う。


■おまけ

しおりを挟みたいくらい、良い話がいっぱいの本書なんですが。

行正さんが10代で得てしまった偏頭痛と難聴の話が特に良い。

曰く、

++++

でも今は、本当によいストッパーができたな、と思っています。


やろうと思ったらもっとできるかもしれない。

いい人間になろうと思ったらもっとなれるかもしれない、だけど、ある一点のポイントを過ぎると頭痛や難聴という

「はい、できません」

というセンサーが働きます。

都合よりセンサーです。(笑)

++++

とってもいい話。

そして、しんみりしがちな話にポロッと入ってくる「カッコ笑い」が可愛いのだ!

■YOUはShock(食)!!
『壇流クッキング』 壇一雄 (1975)
『土を喰う日々』 水上勉  (1978)
『よい匂いのする一夜』 池波正太郎 (1981) 
『喰いたい放題』 色川武大 (1984) 
『酒食生活』 山口瞳 (2002)
『そうざい料理帖 巻二』 池波正太郎 (2004) 
『食の王様』 開高健 (2006) 
『やさしさグルグル』 行正り香(2008) 
『ちびちびごくごくお酒のはなし』 伊藤まさこ(2009) 
『ごはんのことばかり100話とちょっと』 よしもとばなな (2009)
『小津安二郎 美食三昧 関東編』 貴田庄 (2011)
『サンドウィッチは銀座で』 平松洋子 (2011) 
『ひと皿の小説案内』ディナ・フリード (2015)  

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やさしさグルグル (文春文庫)
行正 り香
文藝春秋
やさしさグルグル
行正 り香
文化出版局

 


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