浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ラファエル・クーベリックの洋琴伴奏

2008年07月11日 | もう一つの顔
1935年3月31日のカーネギーホールには、ヤン・クーベリックの独奏を聴く為に多くの人々が集まった。パガニーニ、サラサーテの次世代の大提琴家と言へば、ヤン・クーベリックが一番人気だったといふ。その提琴界の「皇帝」の姿を一目見ようと聴衆は熱狂してゐたに違ひない。以前から聴きたかったこの演奏を今日は何度も繰り返し聴いてゐる。

曲は、パガニーニのカンパネッラをヤン・クーベリックが更に超絶技巧を要する難曲にアレンジしたもので、洋琴伴奏も聴き応えがある。一世を風靡したヤン・クーベリックの晩年の演奏ではあるが、ライブ録音といふのが魅力である。しかも、その伴奏を20歳のラファエル・クーベリックが弾いてゐる。

録音の状態は良くないとは聞いてゐたが、僕にとってはそれほど悪い音質ではなかった。イメージを膨らませる力さへ持っておれば、此の程度の音質なら平ちゃらである。音とびは少々辛いが、この演奏會の雰囲気が味わえるだけでも大変な喜びなのだ。

父ヤンの技巧は冴えわたり全く衰えを感じさせないものだったが、伝説によればこれでも衰えてゐたといふことなので、1900年頃の実演はさぞ異様なものだったのだらう。息子ラファエルの洋琴も実に堂々としてゐて、感情移入と軽やかな指さばきで前時代的な豪快な演奏をしてゐる。ヤンほどの偉大な音楽家と日々演奏をしてゐれば、その魂も乗り移っていくのだらう。

温厚な指揮者、ラファエル・クーベリックを愛する人も、20歳のラファエルの姿を知る人は少ないだらう。何千といふ聴衆を前に、大喝采を浴びる父とともにステージに居た洋琴伴奏者ラファエルも、大指揮者クーベリックと同一の音楽家だといふ事実を突きつけられた感がある。

盤は、チェコのヤン・クーベリック協会プライヴェート盤CD 番号なし。


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