浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

フバイの名旋律「ヘイ!カティ」をモギレフスキーの提琴で聴く

2007年07月07日 | 提琴弾き
大提琴家で作曲家だったフバイの名曲「ヘイ!カティ」をアレクサンダー・モギレフスキーの日本録音のSP復刻盤で楽しんでゐる。序奏に続いて登場する民族色の強い舞曲は大変親しみ易く、一度聴くと忘れない名旋律だ。

題名の中で「ヘイ!」と呼ばれたカティといふのが誰の名前なのか、或いは人の名前ではなくて犬なのか、タクシーのことなのか、僕にはそこまでの知見は無いが、曲を聴く限りではなにやら愉しそうに呼びかけてゐるに違いない。

この曲はどこかで聴き親しんだことがあって、CDの棚を片っ端から探してゐると、モード・パウエルのCDの中にこの曲を見つけた。モギレフスキーよりパウエルの方が表現に幅を持たせて自在に弾いてゐて、テンポの変化も面白い。

しかし、戦前の我が国でこのやうな大家の演奏が生で聴けたといふことは羨ましい限りである。この日本コロムビアのSPレコヲドを録音した4年後の1942年3月9日には、日比谷公会堂で、アレキシス・アバサの洋琴伴奏でリサイタルが開かれてゐる。当夜の演目は、バッハ=サンサーンス編「サラバンド」に始まり、モーツァルト「アダヂオ」と「協奏曲」、バッハ「シャコンヌ」、ブルッフ「協奏曲第1番」、モンテクレーン「メロディ」、クライスラー「カプリス・アンティク」、ショパン=モギレフスキー編「ノクチュルヌ」、シューマン「幻想曲」、ファリャ=クライスラー編「西班牙舞曲」など。6月18日にはレオ・シロタの伴奏でR.シュトラウスの奏鳴曲作品18、フランクの奏鳴曲、ベートーヴェン奏鳴曲「クロイツェル」を取り上げてゐる。

モギレフスキーについては、以前にもクロイツァーとの「スプリング・ソナタ」を取り上げたことがあったが、戦前までの日本の音楽界は、思いのほか高いレベルにあったことが窺える。

盤は、英國Pavilion RecordsによるSP復刻CD BVA1。


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