浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

クラウス・プリングスハイム アジアな夜

2006年06月10日 | 忘れられた作品作曲家
父は著名な数学者でありバイロイト建設時に資金提供をしたワグナー支持者、双子の妹の夫は、フルトヴェングラーとも親交のあった文豪トーマス・マン、そしてご本人はマーラーの弟子であるところの、作曲家兼指揮者兼ピアノ弾きといふ偉大な芸術家が居た。彼の名はプリングスハイム。僕が子どものときに東京で亡くなった。

そんなプリングスハイムの名は、指揮者として知ってはいたが、僕の記憶には、次世代のローゼンストックの白黒テレビ画像しか録画されていない。親からはプリングスハイムの話を聞かされていた。なにか凄い人なのだ、というくらいの認識しか持っていなかったのは、実際に聴いていなかったからであらう。

記憶に残るはじめての出会いは、それから遅れること10年、しかも指揮者としてではなかった。戦前に滞在したタイ国の記憶をもとに作曲した「タイの旋律による小品『月』」であった。ヴァイオリンを弾いているのはウィリー・フライ。伴奏は作者自身である。

先月、僕は友人Uに呼ばれて高知市にある骨董家具屋に飲みに行った。若いお姉さま記者が取材に来ていた。友達がくれた田舎の情報誌「ほっとこうち」30頁にはカメラ目線の僕が写っているではないか。

このお店は、うまい芋焼酎を飲ませてくれる怪しいアジアなお店だ。骨董家具屋さんなのに酒を飲ますという、店名も「うりきりや」とますます怪しい。大将は客にものを言うときに、決まって片手を脇の下に当てて「はい!せんせい」と挙手をする。いよいよ怪しい。

そして、今宵のレコヲドは、このお店のためにあるやうなものである(と僕は何時ものごとく決め付けている)。曲は、「タイのメロディーによる小品「月」。しかも、蓄音機が似合う。

いかにも骨董のようで、現代的でもある、そういったファジーなお気に入りの空間には、お気に入りの音楽を加えなくちゃいけない。

盤は、コロムビア SP盤。


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